9話 白い空間の黒い場所
今日は、ちゃんといる。ほっぺ膨らませてる。
白い空間なのに、なぜかピンクの空気。
「感想千文字」
僕とエルは顔を見合わせる。千文字なんて、浮かんでいない。という事で
「雲みたいでした」
「買うから許してください」
これでどうにか許しをこう。
「許す。わたし、用事あるから帰るね」
帰るって、ここが今の君の居場所でしょ?
えっ⁉︎ どこいくの?
「待って」
とにかくついていく。
迷わずに一直線に歩いている。歩く速さが遅いから、簡単についていける。
白い空間なのに、ピンク。その理由は、簡単だった。
「おかえり」
「ただいまー。あっちのエレはまだゼロと遊んでるの? 」
「うん。ごめん。色々と迷惑かけて」
「迷惑じゃないよ。それに、わたしも、フォルに心配させちゃったみたいだから。覚えてないけど」
覚えてない。その言葉に反応する。
色々と気になる事はある。フォルがいるのは、前回もそうだった。けど、ベッドはなに?
「忘れたままでいいんじゃない? 」
「そうかな」
エレとフォルがらぶしてる。ピンクの空気はエレから漏れ出てる。
花器の方は、見当たらない。かなり遠くで遊んでいるのかな。
「……フォル、本当に大丈夫なの? 今からでも、わたしが他のみんなに頼むよ? 」
「大丈夫だよ。元々、覚悟の上なんだ。怪我だって、そんなに酷いわけじゃないから。むりに術を使った反動が来ただけだよ」
術の反動。意識をこっちに移動させている。そうは言っても、身体の状態を一部引き継がれている。
術の使いすぎか、制御がままならない状態でむりに使ったか。それで、現実でも動けない状態か。
「……エレ、少しだけ、シェフィと話させて」
「……うん。じゃあ、わたしもゼロと遊んでくる」
彼女に話をしようと思ってたけど、覚えてないならいいか。
むしろ、変に思い出させない方がいいかも。
彼女が奥の方へいく。
「……」
「この前ぶり。ごめん、エレを両方独占しちゃって」
あれは、知らないんだよね。エレも、見てないんだよね。
「大丈夫? 」
「うん。平気。ちょっと、ギュリエンの後の事、知っただけだから……居場所をなくして、隠れて暮らさないといけなくなって……その恨みを、外に向けていた。あの子から聞いた? いくつかの場所で起きている襲撃と行方不明者の件」
あれか。彼女が言っていた。
フォル達の方で、対処してくれていたんだ。
「……あれで、調査のために攫われ役かって出たらさ、あの組織に、居場所を奪われた子達だった。中には、ギュリエンの住民もいた」
「……そう、なんだ」
「元々、エルグにぃ様が支援するって話知ってたんだ。だから、隠れなくていいようにってその話出したけど、信じてもらえなくて……殴られた時、これは、当然の報いだって思ったよ」
今にも泣きそうな顔で笑う。当然じゃない。あれは、君のせいじゃないでしょ。
知っているから、そう言えるんだ。知らなければ、何も言えない。
「術の反動は、完全に自業自得。アディ達が来たのに、魔物に襲われかけたみんなを、むりに助けようとしたから。あの後、みんなから怒られたよ」
「当たり前だよ。僕だって、その場にいたら怒ってた」
それに、ぎゅぅって抱きしめてた。
ぽかぽか。熱があるのかな。熱い。
「……シェフィ、フォル……エレが泣いてる」
前を向く。エレが泣きながら走ってくる。花器のエレも。
ゼロが何かした。なんて事はないと思う。
二人のエレが、僕に抱きついた。
「ふぇぇぇぇん」
「ふぇぇぇぇん」
泣いていて何も話してくれそうにない。
どっちかでも話をしてくれるようになればいいんだけど。
「エレ、こっち見て」
エルが愛魔法を使った。ピンクの光が、ハートの形になる。ハートが花になった。花びらがふわふわと舞っている。
エレ達が、エルの魔法に釘付けになっている。涙が止まってる。
「エレ、何があったのか話してくれる? 」
なんでエルの方が、エレの扱い慣れてるんだろう。
「……あのね、あのね……エレ」
「……あのね、あのね……急に、急に、真っ黒くなって……ゼロが、ゼロが、どっかに行っちゃったの」
また泣き出す。どういう事? エレの話だけだとわからない。エルを見る。エルが首を横に振る。
フォルは考えモード。
えっと、泣いているエレの話。ゼロと遊んでいた。本来白い空間なのに、急に黒くなった。それでどうして、ゼロがいなくなった?
この空間から、出ただけ? そうだとすれば、黒い現象が説明つかない。
「穢れ? この場所でそんな事あるの? 」
「ないと思う……この空間は記録場。記録が何かに侵されている? だとすれば、エレをこの場所においておかない方がいいんじゃ」
僕も、フォルと同意見。だけど、今起こすわけにはいかない。かけらが全て集まっていても。
あの子は、危険だから。制御できていればいい。自ら望まなければいい。でも、もし望めば、あの子は、世界を思いのままにだってできると思う。
あの子を起こすのは、それを利用される可能性を最小限にしないと。今は、それができない。
それに、最後にかけらは、自分がかけらである。その事を最近自覚したばかりなんだ。もう少し、このままにさせてあげたい。できれば、自分から戻ろうとして欲しい。
「シェフィ? 」
「……フォル、ごめん。色々と押し付けて。ゼロの事は、こっちでどうにかする」
「……正直、今の状態だと足手纏いになるだけ。わかってる。でも、僕にも協力させて。お願い」
そうしたい。そう決めたフォルは、ほんとに頑固なんだ。それに、僕はこの真っ直ぐなフォルがすきなんだ。
あとはエル次第。エルは、何も言ってこない。肯定も否定もしない。僕のすきにしろという事かな。
「わかった。それで、君らはどうする? 怖いなら、残っていいよ。結界魔法で守ってあげるから」
二人のエレ。二人は、顔を見合わせている。見せるのは、意志の強い、凛とした瞳。
「わたし達も連れてって。何もできないかもしれないよ。でも」
「ゼロを助けたいの。エレ達にも、ゼロを助けさせて」
エレは、ほんとにつよい子だ。見てきたんだ。泣いてたんだ。なのに、迷わず自分から逃げ道を封じに行く。その、意思だけで。
「わかった。でも、その前に色々と準備させて」
「うん。僕も、もう少し休んでおきたい。それに、情報収集したい」
「わかった。じゃあ、エレだけ置いてってね」
「うん。エレも、エレと一緒がいい」
エレと花器のエレだけを置いておくには、不安はある。でも、二人っきりで話したい事もあるのかもしれない。
念の為結界魔法をかけておけばいいかな。その結界内からは離れないようにしてもらえば。
「エレ、結界魔法の外には出ないでよ」
「うん。出ない。出ないの」
「出ないよ。エル、今度は、ちゃんとお話してね。教えてくれるまで、諦めないから。どんな方法使っても、ここからださないから」
エレは、聞いていたんだ。あれだけ普通にしてたから、何も聞いていないと思ってた。だとすれば、初めから、僕らがフォルに話すために離れてただけ。
僕の戦い方については、記憶ないみたいだけど。
「うん。話すよ。君にも」
「そうしろなの。ゼロならきっと大丈夫だから、ゆっくり準備してね。フォルも、いっぱい休んで。二日後、またきて……シェフィ、エル、二日後だから。現実時間二日後だから」
僕らがいる空間の事、理解してる。さすがは設計者。
「うん。わかってるよ。一度あそこから出るから」
「うん。ティアにも、説明しておかないと。またエレと会ってる。ずるいとか言われそうだけど」
ああ、ティアはエレ狂いだから。とりあえず、ここから出るのってどうすればいいのかな。
自分から出る事なかったから。
「……エレ、ここからみんなを出してあげよ」
「うん。エレとエレを残して、一旦お別れ」
僕らの身体が光る。この空間から出る時の光。
エレ達のおかげで、僕らは外に出る。




