8話 知る事 知られる事
エルは、初めから、全部知っていた? なら、どうして、今まで教えて、くれるわけないか。今こうなっている時点で。
少しだけ、まともな考えができるようになってきた。
状況を、確認しないと。雑兵は、全滅している。ボス四が出ている。
「シェフィ、八つ当たりしてきたら? 」
「……うん。そうだね。ありがと、エル」
今度は、完全に人型。さて、どうやって倒そうか。
——……
えっ? はい? 僕何もしてない。急に爆発した。ドカァーーンって。
これって、もしかしなくても——
とりあえずエルに抱きつく。避けられなかった。
「やばい……エレに、見られたかも」
いつから? いつから見られてた? 初めから、はない。
なら、二度目のボスの後? 三度目?
「……エレなら記憶消去があるから大丈夫」
「そうだけど……そうだけど、またあの子にトラウマ植え付けたと思うと……というかあれ見られてたら」
以前、僕の戦い方を見たエレは『記憶消去中……記憶消去中。』って、自分から記憶消してたんだ。
信じたくないみたいで。
エレは多分、僕が魔法や神聖術。武器は、剣か魔法杖。愛の神聖術を主に使いながら、剣を振るう。なんて思っている。
実際は、全然違うんだけど。
黙っているだけ。怖すぎるんだけど。泣いてないよね? また記憶消去中とか言ってないよね。
ゼロ、どうにかしにきて。
頭に手が乗っかる。僕って、そんなにエレみたいに頭撫でられるのすき。なんて思われてるのかな?
雑兵はまだ出てきてない。
僕はほっぺですりすりする。
「あの爆発絶対エレだよ。何も言ってこないのとか、ほんと怖いんだけど。あの子絶対泣いてるよ」
「なら慰めれば? 一緒にいるから招いて。ちゃんと、ぼくの持っている情報もあげるから」
「ほんと? 絶対だよ。フォルを助けるためにも。絶対に教えてよ」
わずかな希望があるかも知れない。でも、それとは別に、彼女の事を思うと泣きそう。
「……かわいい」
「……かわいいはきらい? 」
何言ってんだろう。別にエルにきらわれたって、よく、ないのかな。
自分の事なのに、わからない。どうしてなんだろう。愛や、弱さ、寂しさ、自分の中のそれが、わからなくなる時があるんだ。
一人でも平気。寂しくない。そう思う僕がいる。でも、一人はいや。誰かと一緒がいい。きらわれたくない。そう思う僕もいる。
どっちがほんとで、どっちが嘘なんだろう。
「なわけないから。それに、それ言うならぼくも変わらない。ぼくも、性別なんてないから」
そういえば、そうだったね。エルの手が、背中に当たる。
「……なんでおれ達には何も言わないのに」
「嫉妬か? 」
「……違う……フォルと一緒だと、甘えるから避けているみたいだけど……これ、フォルと一緒と何が違う? むしろ……フォルを相手にする以上に、甘えてるんだけど」
フィルとオルがなんか言ってる。でも、離れたくないんだよなぁ。エルの腕にひっついて、フィルとオルを見た。フィル、若干、不機嫌そう?
あっ、情報出てきた。
【神聖の姫——偽り。それは誠か。神聖の姫と魔聖の姫。それは何を示す。我ら星の意思ですら知らぬ話。遠い星の世に真実眠る。彼らの中にのみ、真実眠る。記録を彼らに授ける事ができるか。我らの正体知らぬ。記録は真実であるのか。何も知る事許されず】
偽り? 神聖の姫が? エレは、本物じゃない?
神聖と魔聖の姫。それが示すもの?
何の事?
エルは、知っているのかな。知らなそう。
「これで、ここでできる事は終了だ。奥へ進む。休憩所がある。そこで仮眠を取ればいい」
仮眠取れるのは、好都合。なんだけど、これ、どこまで歩かないといけないんだろう。
体力はあるからいいけど。という事で、移動開始。
「……言い忘れていた。ここは、時間の進みがない。外では、十日くらい経ってる」
それ一番最初に言う事でしょ。なんで今言うんだろう。
オルの中の優先順位がわからない。
それにしても、十日か。あっちはどうしてるんだろう。
「……出ない……また、怒ってるかも」
こっちもこっちで大変だな。十日間も連絡していない。ほとんど何も言わずにきている。エルがティアに連絡しようとしてる。
忙しいのか、怒って出ないのか。稀に後者だけど、基本前者。今回は、無断できているから後者の可能性がわずかにある。
「……あっ……仕事忙しいだけだった。またあとで連絡してだって」
「そっか。連れてじゃなくて正解だったね」
ティアは仕事か。仕事、なんで僕は連絡来ないんだろう。呪いの聖女の件で事後処理ないのかな。エルは、ティアがやってくれているんだろうけど。
「……ねぇ、オル。僕の方の仕事ってどうなってるのか知ってる? 」
「事前に来ると連絡くれたんだ。シェフィに与えられる仕事は全て、セイとギューに行くよう手筈済みだ」
ああ、本家の次男と三男。次男の方は書類仕事向いてそうだけど、三男は苦手じゃなかったかな。
僕にくる仕事は両方だから、手分けしてやってるのかな。
それはそうと、戦闘中じゃなくて、移動中の景色どうにかしてよ。戦闘中は意識しないけど、移動中は見るから。飽きるから。
紅葉。きれいだけど、ずっと変わらないと、そろそろ別の景色見たくなるんだ。
「シェフィ、歩きにくくない? 」
「うん」
「そう」
あれ? 離れろって言わなかった。普段ならいいそうなのに。ずっと腕にひっついて離れてないのに。
流石に、エルに悪いから離れようかな。
「……歩きにくくないんでしょ」
「うん」
「ならそのままでいいじゃん」
そのままでいいはいいけど。いやじゃなかったのかな。
「いいの? 」
「その状態で離れさせるよりいい。暴走、しかけてたでしょ? 落ち着くなら、いくらでもこうしてて」
「う、うん」
エルがこんな事言うなんて。手がつけられなくなるよりはいい。そういう事なんだろうけど。
エルが優しい。
「……」
「ヤキモチか? 」
「……別にそんなんじゃない。エレが見てるの考えてないのかなって思っただけ」
いつもの事って思われているだけだと思うよ。あと、フィルとオルは、さっきも似たようなやりとりしてなかった?
歩いて一時間くらいかな。やっとついた。
休憩所。ここが、休憩所なんだ。まるで雲があるみたい。形が、白くてもこもこで、ほんとに雲みたいなんだ。ベッドが。
エレならきっと、ここで寝たいのー。とか言うんだろうなぁ。
——……ずるい! なんでエレには寝さてくれないの!
ほら、言ってる。言ってる?
——しゃぁーーーー! エレにも、そのベッドで寝させろなのー!
ごめん。寝させてあげられなくて。そうとしか言えない。
あっ、買えばいいのか。買えないなら、作ればいいのか。エレのためなら億でもかけられるよ。
「……ここで寝ていいの? 」
「休息にベッドは重要だろう」
——うんうん。エルグにぃと違って、わかってらっしゃるのです。
へぇ、エルグはベッドにこだわらないのか。かけら同士で会って、色々と教えてもらえたのかな。彼女の方は、エルグと会った事ないから。
——……シェフィ、早く寝ろ。早く寝ろとエレは言います。そして、千文字以上の感想文を求めます。エルにも、そう言っておいてください。
「エル、そこで寝て、千文字以上の感想文だって」
「千文字……多すぎない? 」
僕もそう思うけど、彼女の頼みだから。
「フィル、俺達も休息を取ろう」
「……ベッドで寝るのは勘弁」
ベッドで寝るのじゃなくて、感想千文字は勘弁じゃないのかな。
ふわふわ雲のベッドに乗る。ふわっ、だよ。雲が包み込んでくれる。硬さがない。
「おやすみー」
これならすぐに寝れそう。今回は、エルと一緒にあの空間にいく。だからって、必要ないのに、隣同士で眠る。
エルが慣れてないだろうから、彼女に、招いてもらう。




