11話 リミェラの今後
リミェラねぇの過去を視た。黒い魔力の中にいた子。それがエレの、かけら。俯いてばかりいても、何も変わらない。わかってるよ。前を向かないとって事も。
フォルが小声で「救おうとしただけだよ。」って、教えてくれた。それで、少しだけ、前を向けたの。
「……あの子の方は、魔星の影響で説明つく。あれは、神聖の力の継承の時に、少しだけ聞こえた声にそっくりなんだけど」
「そんなの聞こえたか? 」
「うん。ゼロやみんなは聞こえなかった? 希望と絶望、全てが呑み込まれる救済が訪れるって」
フォルの言葉に反応してたゼロは当然。アディとイヴィも、首を横に振ってる。エレは、記憶があってもお役に立てない。だって、エレは神聖の儀式なんて受けてないから。
でも、どうしてだろう。その言葉が、頭から離れない。
「だとして、リミェラ嬢がなんで狙われて、声を聞かせたんだ? 神聖でも星の住人でもねぇってのに」
「アディの意見に同意ですね。わざわざ声をかける理由が存在致しません。憐れな娘と言っておりましたが、それが関係あるんでしょうか? 」
星の記憶戻ってもさ、お話理解できるとは限らないの。エレは今、それを知らされています。
きょとんと首を傾げているエレは、みんな置き去りにしてくる。
いつもエレがわからないっていうと、いっぱい教えてくれるフォル。フォルを見つめる。返ってきたのは、笑顔だけ。
「……リミェラねぇ様は偶然で、エレが関係してるんじゃない? 魔星の状態で、なんで干渉してくるのかわかんないけど……あの言葉に、エレに関わる何かがあるとか? 」
「エレは知らないの。希望と絶望を捨てないと呑み込まれる……希望と絶望が呑み込まれる救済。そんな言葉に覚えなんてないの」
フォルに聞かれても、わかんないのはわかんないの。
「考えても仕方ないか。リミェラねぇ様、あの人格の本来の姿に触れた事ってある? 僕らが視られた記憶だとなかったけど、色々と飛んでいたから」
あれは、フォルにとって、本来のエレの姿じゃないの? 確かに、エレが言いそうにはないけど。呪ってあげるなんて。
「……一度だけ。本来のエレだって思えば、あれがそうだったのかもしれない。優しさに満ちた世界を創ってあげたい。シェフィとずっと一緒にいたい。どちらかしか選べない。だから、早く消しにきて。そんな感じの言葉を言っていた気がする。随分と昔に使われなくなった言葉で、正しいかはわからないけど、多分あってる」
リミェラねぇは、家柄的にとっても物知り。
それは、エレな気がする。ゼロの夢。それを叶えたい。シェフィと一緒がいい。どっちも、世界で触れ合って、エレも思った事。記憶がある今、それは、星にいた頃もそうだった。そう言えるの。
両方は取れない。だから、星を優先しようとした。ずっと、ずっと、悲しくて。早く、この想いから解放されたい。姫から、解放されたい。それも、星のエレ。
その時は、自分でも、おかしい。そう感じていたけど。
「……エレは……エレは星のために、消えないといけないのかな……いつかエレも……他のかけらと同じように」
そう言って俯くエレは、いけないのかな? 姫として。
でも、消えるのも、暴走も、いやだよ。他のかけらも、そう、思ってたのかな。
「大丈夫だよ。あのかけらを守ろうとしている以上、方法は見つかってるんだ。君の場合、眠っている状態からどう暴走しろというんだって話だけど」
そっか。フォルのおかげで、エレは魔星の暴走がないんだ。
「眠ってる? 何言ってんだ? エレは花器じゃ」
本当に、ゼロすら知らないんだ。ずっとエレと一緒にいたのに。
「……それであんな事できるわけないでしょ。今のエレは、器に眠っている状態のかけらが入っている。神域結界も、そうじゃなかったら張る事すらできない」
そうなの。今のエレなら、それがわかるの。エレは頷く。
「……エレ、疲れちゃったから帰らない? 帰ってゆっくりお話しようよ。エルグにぃ達の成果も見たいから」
過去視は、お手伝いがあっても疲れるの。それに、フォルだって、いっぱい術を使ってるから、きっとお疲れ。
「そうだね。普段を考えると、ほとんど休ませずにエレを連れ回してるんだ。しかも、過去視まで使わせて。そろそろ休ませてあげたい。僕のエレが倒れでもしたら、全ての書類仕事イヴィに押し付けてやるから」
それは、ちょっとイヴィが可哀想。というか、ちゃっかりできそうな相手、選んでいる。フォルらしいの。
ここで笑ったら、イヴィに悪いから、両手でお口塞いで我慢。
「えっと、洞窟は歩いて戻るの? 」
歩いてきたから、歩いて戻る。それはもうや。歩くのも疲れた。
「その必要ないよ。それとこれ」
フォルが魔法具の中に、かけらじゃなくて、魔星を入れてくれる。それをエレに見せてくれた。静かに魔星の光が漂ってる。
この中で、どうやって暮らすのかな。
魔法具は、フォルに返しておく。
「ねぇ、必要ないなら、どうして洞窟まで歩いたの? エレを疲れさせたかったの? 」
ちょっぴりご機嫌斜め。
「違うよ。あの子の力が及ばなくなったから。エレだって、転移魔法の無効化ができるような結界を張れるでしょ」
「それはそうなの。じゃあ、転移魔法なの」
フォルに言われて納得。もう大丈夫だから、エレが転移魔法を使うの。
「えっ⁉︎ ちょ⁉︎ エレ、待っ」
「は? えっ⁉︎ やめろエレ! 」
「姫様、それは⁉︎ 」
「姫さん、止まれ⁉︎ 」
「エレ⁉︎ それは! 」
はじめに聞こえたのは、フォルの声。そのすぐ後、ゼロ、イヴィ、アディ、リミェラねぇって順番で、声が聞こえた。
転移先はエクリシェでした。なんて、ご都合展開にならないの。何も考えてなかった。エレは、転移魔法使っちゃだめって言われてたの、忘れてた。
「ふきゃぁぁぁぁ⁉︎ 」
エレの悲鳴が、青い空に響く。
「だからやめろ言っただろ! 」
そう言うけど、ゼロがもっと早く止めてくれれば
「ほんとだよ! イヴィ、頼んだ! 」
「ええ! 」
フォルがイヴィに何か頼んだの。イヴィが風魔法を使ってくれた。風の絨毯なの。風の絨毯の上に、エレ達はいるの。
「姫さんに転移魔法使わせっといい事一度もねぇな」
アディがいじわる。
「久々に焦ったよ。ありがとう、えっと……イヴィ」
「これで焦るだけとは。さすがは本家の方ですね。リミェラ嬢」
なんで、リミェラねぇとイヴィは、安全地帯にいるかのようにお話してるの? ここお空の上だよ?
「ふぇ……誰か転移魔法」
「……わかってるよ」
エレの涙に応えてくれるのは、フォルだけ。フォルが転移魔法を使ってくれた。それが、後で後悔に繋がるなんて、今は考えられなかったの。
無事、エクリシェについた。
大人びた雰囲気。細長い机に丸い椅子が並んでいる。
「……ふにゃぁ。怖かったの。エレは、どこにいるんだろう」
知らない場所。エクリシェ内、全て知ってるってわけじゃないから。
「バー風の部屋だよ。エレには縁のない部屋だ。僕もバーとして入る事はないけど。ここって仕事捗るんだ。雰囲気がそうさせてるのかな」
「……いつでもどこでもお仕事。それよりリミェラねぇって今後どうするの? 呪いの聖女であった事を背負って生きるって言っても、今の状態だと」
フォルはいつもお仕事。でも、エレの事も、考えてくれる。
「それに関しては、主様がどうにかしてくれるでしょ。ね? 主様」
フォルが、先に来て寛いでる、エルグにぃに視線を向けてる。ルーにぃもいるの。エルグにぃの隣に。
「それはどうにかする。それと、リミェラ姉上に会いたいという人がいる。信用できる相手だから、会ってくれないか? 」
「いいよ。どこに行けばいい? 今の地理に詳しくないから、できれば連絡魔法具に地図を送ってほしいかな」
えっ⁉︎
「ねぇ、地図あったら、地理知らなくてどこでも行けるの? それ本当に地理知らない? 地理知らない嘘じゃないの? エレは行けないよ? もしかして、地図のばつ印をポチしたら転送できるとか? 地図は転送装着だったの? 」
エレは、隣にいるゼロに小声で聞いた。ゼロが、右手で口を押さえてる。ぶるぶると肩が震えてる。
ゼロが答えないから、反対にいるフォルに、同じ事聞いた。
「……そうなればいいね。今はゲートがあるから、少しだけそれに近づいている、のかな? 」
「普通知らない場所は地図見ながら行くだろ」
フォルが答えると、ゼロも答えてくれた。普通の声量で。
「……エルグ、悪いんだけど、エレにいくつか、地図与えてくれないかな? そうしたらちゃんと理解できると思うから」
リミェラねぇが頼むと、エルグにぃが地図を出してる。みんなにバレた。
「ヴァリジェーシル本家は教育しか知らないの。エレ逃げるから、じゃあね! 」
逃げるが勝ち。
「わりぃな姫さん」
「申し訳ありません。ですが、こればかりは」
「ふぇ? ルーにぃ」
アディとイヴィが逃げ道を塞いだの。最後の砦として、ルーにぃを頼る。
「エレ、わかるまで教えよう。だから、地図くらいは覚えるんだ」
味方はいなかった。
結局、お勉強。でも、その甲斐あって、地図の不審な点に気づいたの。




