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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 碧猫
2章 エレ編 御巫と聖女
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11話 リミェラの今後


 リミェラの過去を見終えたエレシェフィール達。

 その人格が誰かなんて、すぐに答えが出た。エレシェフィールは俯いている。


「……あれは魔星の取り込まれたせいでいいとして、あれは神聖の力の継承の時に少しだけ聞こえた声そっくりなんだけど」


「そんなの聞こえたか? 」


「うん。ゼロやみんなは聞こえなかった? 希望と絶望、全てが呑み込まれる救済が訪れるって」


 ゼーシェリオン達は首を横に振っている。聞こえたのはフォルだけなのだろう。エレシェフィールはそもそも星の記憶があっても神聖の儀式を受けてすらいない。論外だ。


「だとしてリミェラ嬢がなんで狙われて、声を聞かせたんだ? 神聖でも星の住人でもねぇってのに」


「アディの意見に同意ですね。わざわざ声をかける理由が存在致しません。憐れな娘と言っておりましたが、それが関係あるんでしょうか? 」


 記憶が戻った今では同じ星の住人だというのにエレシェフィールだけが置き去りにされている。きょとんと首を傾げるエレシェフィールを誰も気にかけない。


 エレシェフィールはわずかな期待を胸にフォルを見つめる。フォルは笑顔を返すだけで説明しようとしない。


「……リミェラねぇは偶然でエレが関係してるんじゃない? 魔星の状態でなんで干渉してくるのかわかんないけど……あの言葉にエレに関わる何かがあるとか? 」


「エレは知らないの。希望と絶望を捨てないと呑み込まれる……希望と絶望が呑み込まれる救済。そんな言葉に覚えなんてないの」


 エレシェフィールにその言葉への心当たりはない。星の記憶があっても一度も聞いた事のない言葉だ。


「考えても仕方ないか。リミェラねぇ、あの人格の本来の姿に触れた事ってある? 僕らが視られた記憶だとなかったけど、色々と飛んでいたから」


「……一度だけ。エレだって思えば、あれがそうだったのかもしれない。優しさに満ちた世界を創ってあげたい。シェフィとずっと一緒にいたい。どちらかしか選べない。だから、早く消しにきて。そんな感じの言葉を言っていた気がする。随分と昔に使われなくなった言葉で、正しいかはわからないけど、多分あってる」


 リミェラは家柄的にかなりの教育をされている。使われていない言葉であっても理解できるというのは常識くらいの場所で育っているはずだ。


 エレシェフィールはリミェラの言った言葉になら覚えがある。魔星になればいずれは意思を失う。それを阻止するだけの力を持ってはいない。

 だから、そうなった時のためにエレシェフィールは神聖達に頼んだ。


 そうなった時にかけらうん全て消滅させるようにと。


「……エレは……エレは星のために消えないといけないのかな……いつかエレも……他のかけらと同じように」


 エレシェフィールはそう言って俯いた。消える消えない以上に、周りを悲しませたくないという方が強く出ている。


「大丈夫だよ。あのかけらを守ろうとしている以上、方法は見つかってるんだ。君の場合眠っている状態からどう暴走しろというんだって話だけど」


「眠ってる? 何言ってんだ? エレは花器じゃ」


「……それであんな事できるわけないでしょ。今のエレは器に眠っている状態のかけらが入っている。神域結界もそうじゃなかったら張る事すらできない」


 エレシェフィールはこくりと頷いた。今ならばそれを理解できる。


「……エレ、疲れちゃったから帰らない? 帰ってゆっくりお話しようよ。エルグにぃ達の成果も見たいから」


「そうだね。普段を考えるとほとんど休ませずにエレを連れ回してるんだ。しかも過去視まで使わせて。そろそろ休ませてあげたい。僕のエレが倒れでもしたら、全ての書類仕事イヴィに押し付けてやるから」


 ちゃっかりとできそうな相手に押し付けようとしている。エレシェフィールは笑いそうになる口を両手で塞いだ。


「えっと、洞窟は歩いて戻るの? 」


「その必要ないよ。それとこれ」


 エレシェフィールは箱型の魔法具を取り出した。フォルから渡されたかけらを中に入れる。中を除くが、いるという事以外は見られない。

 中でどんなふうに過ごすのかは箱の中の少女だけが知る事。


「ねぇ、必要ないならどうして洞窟まで歩いたの? エレを疲れさせたかったの? 」


「違うよ。あの子の力が及ばなくなったから。エレだって転移魔法の無効化ができるような結界を張れるでしょ」


「それはそうなの。じゃあ、転移魔法なの」


 エレシェフィールは意気揚々に転移魔法を使う準備をする。転移魔法仕様にかかるのは短い。


「えっ⁉︎ ちょ⁉︎ エレ、待っ」


「は? えっ⁉︎ やめろエレ! 」


「姫様、それは⁉︎ 」


「姫さん、止まれ⁉︎ 」


「エレ⁉︎ それは! 」


 全員が止めようとするが、もう遅い。止めるならエレシェフィールが転移魔法を使おうとする前に止めなければ間に合うわけもなく、転移魔法が使われる。



 転移先は目的地であるエクリシェでした。などという奇跡的展開あるはずもなく、転移先は空中でした。


「ふきゃぁぁぁぁ⁉︎ 」


「だからやめろ言っただろ! 」


「ほんとだよ! イヴィ、頼んだ! 」


「ええ! 」


 イヴィが風魔法を使う。エレシェフィール達は風の絨毯に乗った。


「姫さんに転移魔法使わせっといい事一度もねぇな」


「久々に焦ったよ。ありがとう、えっと……イヴィ」


「これで焦るだけとは。さすがは本家の方ですね。リミェラ嬢」


 まるで安全地帯にいるかのように会話をしている。エレシェフィール以外はいたって冷静だ。


「ふぇ……誰か転移魔法」


「……わかってるよ」


 フォルが涙目のエレシェフィールの願いを聞き転移魔法を使った。



 無事にエクリシェにつく。

 薄暗く大人びた雰囲気にいくつも並ぶ机。エレシェフィールはほとんど入った事のない部屋だ。


「……ふにゃぁ。怖かったの。エレはどこにいるんだろう」


「バー風の部屋だよ。エレには縁のない部屋だ。僕もバーとして入る事はないけど。ここって仕事捗るんだ。雰囲気がそうさせてるのかな」


「……いつでもどこでもお仕事。それよりリミェラねぇって今後どうするの? 呪いの聖女であった事を背負って生きるって言っても、今の状態だと」


 エレシェフィールは椅子に座る。


「それに関してこそ主様がどうにかしてくれる。でしょ。ね? 主様」


 先に来てゆっくりとくつろいでいるルーツエングとイールグ。フォルはルーツエングに視線を向けた。


「それはどうにかする。それとリミェラ姉上に会いたいという人がいる。信用できる相手だから会ってくれないか? 」


「いいよ。どこに行けばいい? 今の地理に詳しくないから、できれば連絡魔法具に地図を送ってほしいかな」


 エレシェフィールは隣にいるゼーシェリオンの耳元で


「ねぇ、地図あったら地理知らなくてどこでも行けるの? それ本当に地理知らない? 地理知らない嘘じゃないの? エレは行けないよ? もしかして地図のばつ印をポチしたら転送できるとか? 地図は転送装着だったの? 」


 などとずっと小声で言っている。ゼーシェリオンが右手で口を押さえてぶるぶると肩を震わせている。


 エレシェフィールの更なる標的として、反対側にいるフォルが選ばれた。エレシェフィールはゼーシェリオンに言ったのと同じような事を小声でフォルの耳元で言う。


「……そうなればいいね。今はゲートがあるから、少しだけそれに近づいている。とすればいいね」


「普通知らない場所は地図見ながら行くだろ」


「……エルグ、悪いんだけど、エレにいくつか地図与えてくれないかな? そうしたらちゃんと理解できると思うから」


 ゼーシェリオンとフォルが普通に返したため、全員になんの話かバレたようだ。リミェラの頼みにルーツエングがすぐに応じている。収納魔法から地図をいくつも取り出している。


「ヴァリジェーシル本家は教育しか知らないの。エレ逃げるからじゃあね! 」


 一目散に逃げようとするエレシェフィール。だが、


「わりぃな姫さん」


「申し訳ありません。ですが、こればかりは」


「ふぇ? ルーにぃ」


 エレシェフィールは最後の砦としてイールグを見る。


「エレ、わかるまで教えよう。だから、地図くらいは覚えるんだ」


 誰も味方はいない。そう気づき、諦めるエレシェフィールだった。


 だが、その甲斐もあり地図にある不審な点を気づく事ができた。

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