番外 愛情は何処に
神殿の書庫で調べ物。したんだけどさ、何も情報を得られなかった。ユグベーズ写本を見ようと思ったけど、なぜか全部消えてた。
エルが頼んでくれたのは、邪魔変魔法の影響の収縮。できる限り被害を減らして、公にならないようにしてくれてるらしい。
僕らは一度家に戻った。
かけらを通して状況の確認。エレが困ってる。
「……ここまでは想定内。エル、あの魔法具エレにあげていいかな? 」
「うん」
右腕につけてる連絡魔法具を外す。エレに連絡。新しい連絡先は、あの人から聞いてる。
エレは、多分でてくれる。信じて通話する。
『えっと……』
あの子の愛らしい声。でてくれた。無駄な足掻きなのかな。そうは思うんだけど、音声変換魔法具を使う。ついでにエレが僕を見れないようにしておく。
「僕……お、おれは神聖の姫を影から守る者。け、眷属が姫に悩み事があると教えてくれた。今から、望みのものを与える。ぼ……おれにはもう必要ないから、それをヒントにしろ」
慣れないけど、口調も変える。できるだけ僕である。その事を隠す。機械音声で口調も変えてれば、バレないとかないかな。そんな都合のいい事、あるわけなかった。
『ありがと。エクリシェのエレのお部屋……最下層の。送ってくれる? 』
「りょ……わかった。魔法具は時期にそちらへつくだろう」
エルから箱型の魔法具をもらう。転送魔法でエレの元へ送る。
『うん』
エレが何も疑ってなさそう。
『どれだけ離れていても、つながっているって信じてる。信じたいの』
わかってないと言わない言葉。多分、第一声でエレは気付いてた。こういう時ばっか鋭いから。
気付いてるなら、このくらいはいいかな。僕は音声変換魔法具を切った。
「……うん。僕も、信じてるよ。信じているからこそ任せるんだ」
顔を見せはしない。でも、僕の声で、伝える。エレと、その隣にいるフォルに。
フォル、伝わったよね。君が考えている事をして大丈夫。僕を信じて。
僕は通話を切った。連絡魔法具を右腕に装着する。
「……強くなったね。エレシェフィール。今の状態なら……あの子が側で支えてくれさえすれば、もしかしたら、受け入れる事ができるのかもしれないね」
ずっと見てきた。エレに記憶がなくても。少しずつ成長していたけど、ずっと自分を複製品だと言ってた。どこか、壁を感じてたんだ。
それが今のエレには感じられない。
僕は、ロケットペンダントを開いた。中に入ってるのは、幼いエレの写真。
「……本当に、するんだね」
「うん。あの子はきっと壊れない。フォルも一緒にいてくれるから。って、信じるんだ。僕はエレのおにぃちゃんだから」
ティアが視線を落としている。僕は笑顔を見せた。神聖でもなんでもない。ただただ、エレのおにぃちゃんとして。
ロケットペンダントを閉じる。
「僕らのだいすきなお姫様のために、影ながらのサポートに行こっか」
「うん。私の愛しのエレのために」
愛しいのはティアもおんなじらしい。僕が転移魔法を使う。今度の場所は、呪いの聖女のいる世界。
誰もいない。すでに滅んだ世界。広大な緑色の絨毯。草の絨毯って、寝転ぶと気持ちよさそう。
この美しい世界を穢そうとする連中がやってくる。
黒装束に身を包む、いかにも怪しい連中。
その連中を呪いの聖女のいる洞窟に近づけさせない。僕らはそのために、連中の前に立ち塞がる。
「エル、ティア。できる限り穏便にだよ。誰も怪我なく犠牲なく、最終的にはみんなで笑う、でしょ? 」
連中からしてみれば、なんの状況も理解してない。きっと、そんなふうに映るんだろうね。僕のこの笑顔が。
「僕らは僕らのすべき事を。あの子らへ、わずかな希望の光を与えてあげよう」
「希望の光……うん。そうだね。それに同じ聖女として、なにもいいところも見せられないなんて、エレに自慢できなくなっちゃう」
「我が妹ながら、本当に呆れるほどのエレ好き。ぼくも、エレに尊敬の眼差しをむけて欲しいけど」
あれ? おかしいな。誰も止める事考えてない。というか、エレの事しか頭にない気がする。
今日からエレだいすきらぶ狂、とでも名乗った方がいいかな。この状況で目の前の事を何も考えないなんて。
黒装束の連中が襲いかかる。ティアが魔法で霧を生み出す。周囲の霧が、魔法の光を消してくれる。そこに攻撃を避けながら、エルの愛魔法。これは、愛に飢えさせる魔法。たとえ愛がなくとも、連中は何も変わらない。
「これでいい? 」
「いいって、結局僕任せ⁉︎ 」
「ああいう連中には、それが一番早いから。それに、願い通り、できる限りは穏便」
エルが事実言ってくる。それはそうだけど。なんなんだろう。この兄妹、合図も何もせずに初めっから僕に任せようとしてたよ。
しかもティアは「お願い〜。」って苦笑い。
霧で魔法の光が見えないからいいけどさ。本来見えるピンクの光が見えない。なのに突然バタバタと倒れだす黒装束達。
意識はあっても、動く事はできない。
「ごめんね。でも、この先へ行かれると面倒なんだ。だから、すこぉしだけ、眠っててね」
右手の人差し指を唇に当てる。目を細めて黒装束達を見る。笑顔の中にあるのは愛情だけ。
睡眠魔法を使って眠らせる。
「……」
「……シェフィ、聖女とか興味ない? 私が推薦してあげようか? 」
「しなくていいし、僕男だから。ていうか、どうしたの二人とも」
二人の様子が変。深刻な状況みたいな感じじゃないけど。エルとティアが顔を見合わせてる。
「ねぇ」
「あれは聖女にしか見えない。敵対する相手に愛情を見せるなんて」
エルが、急な聖女発言の理由を言ってくれた。でも、それって
「……それ、僕らの魔法の性質だよね? 愛魔法は愛情がないと使えないんだから。って、そんな事言っている暇ないんだった。あれは僕がいないとできないから、行かないと」
エレ達がやろうとしている事。一人魔法具製作に残る。エレの設計図を作れるのはフォルくらいだから、必然的に残るのはフォルになる。
フォルなら、自分がいなくていい場所を選んでくれる。なら、あとは僕がいればどうにかなる。
ってわかってても、場所がわからないんだよなぁ。かけらのつながりから、エレのいる場所を探る。
「二人とも、時間稼ぎは任せていい? 」
「いいよ。このまま誰も、洞窟へいれなければいいんでしょ? 」
ティアは、ほんと素直に頼みを聞いてくれる。
「うん。エレ達がくるまでは、洞窟に結界張っておくのもいいかもしれないね。ティアならできるでしょ。エレの居場所もわかったから行ってくる。あの子に、星の記憶を与えに」
僕はティア達に後の事を頼んで、転移魔法を使った。
紫色の広大な花畑。エレ達が浄化系の魔法陣を描いている。
――……あれって、シェフィとフォルが、自分達以外にはわからないように書いていたよね?
「うん。あの子も、とんでもない賭けに出るよ。どこまでが、あの子の想定なんだか」
――案外、シェフィ以上だったりして。未来視並みの感覚を持っている、わたしとシェフィとは違って、ただの思考だけで、ここまで考えちゃうんだもん。本当にかっこいい。
かけらとはいえ、変わらない。にしても、僕を通して、外の景色を見れてるのかな。
彼女の感情が伝わってくる。フォルがすきすぎますって。
「そうだね。その愛しのフォルのためにも、僕らも協力してあげよっか」
暗い空。薄らと広がる光。この空は、僕の想いを届けてくれるんだろうか。届いて欲しい。そう願うよ。
「たまには踊ってあげるよ。フォル。前を向こうとする、君のために」
逃げる事をやめて、今を見ようとする。そんな君の願いのために、絶望の空間で踊ってあげる。希望の踊りを




