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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
2章 エレ編 御巫と聖女
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5話 星の住民と世界の住民


 空間の歪みから出たエレ達。ゼロがエレに抱きつきながら、みんなに何があったのか説明。


 ゼロの説明によるとね、お買い物中に、呪いの聖女と会ったんだって。だから、呪いの聖女の正体も知っているみたい。フォルの推測で間違いないって。

 わずかに見せたリミェラねぇの姿に動揺している隙に、邪魔変魔法によって魔物化したって。魔物化は、自力で解く事ができたんだけど、あの空間の中に閉じ込められたらしいの。


「その空間の事でエレからもお話。あのね、エレがゼロと会えなくて泣こうとしてたら、不思議な魔法陣があったの。えっと……こんな感じ」


 エレは、エルグにぃに借りているペン型魔法具で、さっき見た魔法陣を、フォルに見せるために描いたの。それ描き終わってから、エルグにぃにペン型魔法具返した。


「……ごめん、僕も知らな……って今更そんな事言っても仕方ないか。魔星を閉じ込めるための魔法陣だ。この世界のどこかの空間を一部切り取って創ってるんじゃないかな。もう一つ効果があるみたいだけど、気づいてないならいいよ。今回関係もないから」


「……また……エレってそんなに、何も話したくないの? 」


 フォルだけじゃないの。神聖達はみんな、エレに必要以上の事を教えようとなんてしない。エレに問題がある。そのくらい理解しているよ。でも、理解していても、納得できるわけじゃない。


「エレ……何も話したくなんてないよ。でも、それは君が悪いわけじゃない。むしろ、君は何も悪くないよ。何も言わずにいなくなった彼も、きっとおんなじ」


「……」


 教えてくれないフォルの方が、なんだか悲しそうなお顔しているの。教えてほしいのに、何も教えてくれない。エレの方が悲しいのに。


「ほんと、卑怯だよ。このままじゃだめなんだと知っていながら、このままでいようとする。君に何も知ってほしくないって思ってしまう。本来なら君に答えを委ねるべきなのに君の答えを聞くのが怖くて、それすらしない」


 怖い——怖いのを変えるのは、むずかしいって知ってる。だから、


「……卑怯じゃないよ。エレの事を想ってるからそう言うんだから。きっとそうなの」


 エレはフォルを抱きしめたの。フォルの性格知ってるから。全部わからなくてもね、わかる部分あるんだ。エレはきっと、フォルが聞きたくない答えを、言わない気がする。でも、怖いなら聞かなくていいの。


「ところで、どうして魔星を閉じ込めようとしていたの? 魔星閉じ込めて何かあるの? 」


「……本気で言ってる? 」


 エレは本当にわからないから聞いたのに。返ってきたのは呆れ声。わかんないのって意を込めて、エレは頷いた。


「君も管理システムでの情報見たでしょ? 」


 それは見たの。だからなんなのって感じ。


「……連中は魔星を制御したいんだ。なら、その大量の魔星はどっから拾ってくる? 用意したって、すぐどっかいく。だから閉じ込めておく。あの魔法陣を使ってね。つまり、あの空間魔法の中で魔星を大量に閉じ込め、使いたい時に使おうとしてた。理解できた? 」


「うん。でも、どっか行っちゃってもその辺にうろうろといるじゃん。魔星は魔力だよ? それをわざわざ閉じ込める必要性を感じないよ? 」


 説明についての理解はちゃんとしたよ。でもね、それだと常識的に、必要性を感じないの。魔力が世界中どこでもあるなんて当たり前。魔星も同じ。


 魔星はエレ達が今いるここにもいっぱい、いるんだよ。目に見えないかもしれないけど、それは確かな事なの。どの子がいるのかはわかんないけど。もしかしたら、まだ属性を持ってない子がいるかも。


 エレの常識なの。エレは、本来ゼロに教わる必要なかった。神聖と魔聖の基礎知識は知ったの。術を使ってると、それに気づけた。


「そこまでの知識があるなら、誰もこんな事しないよ。面倒なだけなんだから。でも、知識がないならそうするしかない。世界の住民は、そんな知識は持ってないんだ。星での常識は、世界には通じないんだよ……君は、それを実感する事があったんじゃない? 普通にしているだけでも、君は世界の住民との違いを理解してるんじゃない? 」


 世界と星の違い。それは——神聖力。神聖力なんて、フォル達が使ってるところしか見た事ない。それに、エレも。エレも、使える。


 それが普通。そう思ってた。


 それだけじゃないの。エレは、多くの世界の中でも、比べられないくらい豊かな場所。栄えた場所。知っているの。それは、誰にも教わっていない。


 エレの中の常識として、エレは知ってた。


 エレは、どうして世界以外の事を、初めから知ってたの? エレは、いったい——


「エレは世界の住民だよ! フォル達と一緒にいるってだけで、星の住民じゃないよ! 」


 エレの始まりの記憶は、間違いなく世界。星じゃない。そう、なんだよ。そう、じゃなきゃだめなの。


「……うん。そうだね。今の君は間違いなく世界の住民だ。二番目の世界で初めて生まれた存在。君の認識は間違ってないよ。今はそれでいいんだ。君は知らないはずの知識を記憶にない誰かに教わった。そんなふうに思っておけばいい……その方が気が楽でしょ」


 今更、そんなふうに思えない。

 エレはフォルから離れようとする。なのに、フォルが両手を、エレの背中に回して、離してくれない。


 エレは世界の住民じゃなきゃいけない。そうじゃなかったら、エレの中の言い訳は、全部、全部意味をなくすの。


 エレが世界の住民だから、みんなは星に関する知識を教えない。星についての必要知識すら。それは仕方がないの。世界の住民のエレは、世界の必要知識は学ぶ必要がある。だから、世界の必要知識は教えてもらえた。でも、星は、本当に最低限。本来星に暮らしていれば必要な知識すら教えてくれない。


 ゼロ以外は。


 それは星の住人じゃないエレに、必要ない事だから。


 そうやって、ずっと言い訳していたのに。それだったら、エレが星の住人だったらどうして、何も教えようとしなかったの。


「……言っとくけど、星に関しては教えようとしたよ? でも、君が世界の事すら理解しないから」


「フォル、俺のエレは興味ある事しか覚えねぇんだ。世界に興味なくても星に興味あるかもだろ」


「それもそっか。ごめん、ひとつづつ優先順位をつけて教えようとしたのが間違ってた。それでここまで不安にさせるなんて考えてなかったんだ」


 優先順位。じゃあ、教えようとしなかったんじゃなくて、ただ、エレが覚えないから。というか、ゼロのエレじゃないから。言ってる事はその通りなのに。


「ところで君らは調べもの終わったの? 呪いの聖女について調べてくれてるんでしょ? 」


 なんか、アディとルーにぃが、エルグにぃの持ってる魔法機械触ってる。


「それが聞いてくれよフォル、俺様とルーで削除された情報修復してんだけど、全然できねぇんだよぉ。エルグはイヴィほどじゃねぇが魔法具音痴だしよぉ」


 いつの間にか仲良くなってるの。


「エレと離れたくないから自分達で……ルー、エルグにぃ様、僕の知り合いに時空魔法師いるから頼ってみなよ。もしかしたら修復できるかもしれない。連絡しとくから」


 そんなにエレと一緒にいたいなんて。でも、ちょっとだけ離れるの。今度は離してくれた。


 エルグにぃの魔法機械にみにゃ——ピンク色の子猫のシールを貼っておくの。


「このシール見せればエレの頼みってわかるの」


「……これはまさかみ」


「みゃぁぁぁぁ‼︎ 恥ずかしいからそれ以上はだめなの! とにかくこれ見せればいいから! 」


 エルグにぃが、言っちゃいけない事言おうとしてきた。

 用が済んだエレは、フォルのところへ帰るの。フサァァァ——風の音。ふと地面を見ると、木の実が落ちてる。何かの模様を描いているみたいに。


「……どっかで見た事ある気がする」


「僕も。今度はほんとにわかんない。見た事ある気はするんだけど」


 フォルがわからないなら、後で調べるようにしておく。連絡魔法具の画像保存機能を使って。


「ありがと。今度時間があったら調べてみるよ。とりあえず、今はエクリシェに戻ろっか」


「うん。エルグにぃとルーにぃは探し行くんだよね? えっと……んっと……そっと……多分エクランダ帝国周辺にいると思うよ。間違ってるかもしれないけど。二人なら会えばすぐにわかると思うの。気をつけてね」


 フォルがこっそり教えてくれた。

 二人とも、エレ達といて普通にしている。でも、異質さは気づいているはずなの。それがわかるなら、きっと大丈夫。

 エレ達は、エルグにぃとルーにぃを信じて見送った。

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