4話 異空間
おはよ。十分ではないの。でも、ある程度眠れた。目を開けると、知らない場所にいる。
とりあえず何かないか探すけど、何もない。人もいない。見渡す限りの緑と緑と緑。草。草しかないの。
こういう緑の絨毯でねむねむは心地いいの。絶対にそう。
「起きた……可愛い……」
うん、かわいい。緑はかわいい。
「フォル、本音漏れてますよ」
「エレは気にしない」
イヴィとフォルは、何を言ってるんだろう。草のお話じゃないの?
「……どこ? 」
エレだけ知らないのは不公平なの。じゃなくて、エレも知る権利があると思う。
「ゼロがいるはずの場所。だけど全然見つからない……あの二人の位置はここであってるんだけど。エレ、もう少し探して見つからなかったら結界魔法使ってくれる? 」
フォルが何をしようとしてるのかわからないけど、エレはフォルを信じるの。
「いいよ。あとでなでなで要求するから。ゼロにも要求してやるの……りゅりゅ」
それとご褒美は別だけど。エレが名前を呼ぶと出てきてくれる、三十センチから五十センチくらいの碧色の小型龍りゅりゅ。
エレはりゅりゅを定位置という名の頭の上に乗せる。
りゅりゅはエレの術の補助をしてくれる。エレは胸の前で手を組んで、瞼を閉じる。
「聖なる星を守りし愛の壁、星の音の呼び声答えて広がれ」
目を開けると、周囲がほんのりとピンク色に染まっている。愛の術での結界はお得意なの。
「ありがと。神域結界使うと思ってたよ」
「神域結界の方が時間かかるから。でも、耐久性は大丈夫だと思うよ」
フォルは待ってくれるんだろうけど、エレは早くゼロに会いたいの。お世話されたい。そのためにフォルの少しを聞かなかったんだから。
神域結界だと、人一人分の範囲で五分はかかるの。でも、これだと三分くらい。
フォルが収納魔法から剣を取り出した。瞳が黄金に変わっている。何かを探しているみたい。エレには何を探しているのかわからないの。
「……この辺か。失敗すれば神聖力の無駄遣いだからな……」
フォルが剣を振る。何かにぶつかったように止まった。黄金の光が溢れ出す。とっても眩しくて目を瞑ったの。
見てなくても光がわかる。光が消えると目を開ける。剣が止まった場所だよね? そこに空間の歪みらしき紫色の穴がある。
フォルの瞳が翠色に戻ってるの。
「……エレ、アディと一緒にゼロ探してくれる? イヴィは結界の維持。万が一閉じた時のために休ませて」
フォル、大丈夫なのかな。少しでも休めるように
「うん。りゅりゅ、フォルのそばいてあげて。エレはアディが一緒にいるから大丈夫なの」
りゅりゅを預けるの。りゅりゅはエレのある能力をわずかにだけど使えるから。
「はいでしゅ」
りゅりゅがフォルの頭の上に乗るの。頭の上がすきなのかも。
「……エレ、帰ってきたらぎゅぅしてあげる」
「ふぇ⁉︎ わかったの! 」
フォルがご褒美ぎゅぅをしてくれるなんて。それだけで、エレの足取りはとっても軽くなるの。
エレはアディと一緒に、軽い足で空間の歪みの中に入る。
闇なの。闇としか言えない。闇色の空間、影のようなものがある。形的に家具。机とか椅子とか。誰かが暮らしてたのかな。歩きながら色々見ておく。
ベッド⁉︎ ベッドがあるの⁉︎ エレはベッドらしき影へ直行。
座ってみる。こ、これは⁉︎ とってもふかふか低反発。高級ベッドですと言われても信じる。
「……姫さん、警戒心つぅもんをなぁ」
アディがなんだか呆れている気がする。気のせいって事にしておく。
「気になったから。でも、どうしてこんな場所に……誰か生活してたみたいな……みゅ? ……エレの事姫いらないの」
「……悪りぃけどそれは変えらんねぇ。これは俺達にとって忘れられざる記憶の証だ。もし、姫をなくすんなら……エレと呼ぶんなら、その罪を精算できた時だ」
アディの表情が曇る。エレには理解できないの。その罪がなんなのか。それはエレが偽物だから、なのかな。
「悪りぃな。これは姫さんの問題じゃねぇんだ。俺もイヴィも、フォル達以外はあの時を悔やんでんだ。もう、エレと呼ぶ権利なんてねぇってなるほどに。もし、やり直せる機会を……姫さんが選んでくれんなら……何もできなかった俺達を許してくれんなら。そん時は考える」
強く握られている拳がアディのその後悔がどれほどのものか感じさせられる。何があったらそこまで後悔するんだろう。
「まずはゼロさがさねぇよな。俺様の探知だとこの変とまでしかわかんねぇから頼むぜ、姫さん」
気にするなって言っているかのように、いつも通りになってる。でも、気にするななんてむりなの。
「エレ〜、俺のエレ〜! ……次返事来なかったら泣こ」
ゼロの声
「……だからそれで見つかれば苦労しないと」
これはルーにぃかな
「俺のエレはどこにだっているんだ! 俺の目の前どこにでもエレは出没するんだ! 」
ゼロとルーにぃがお話しているみたい。
声は聞こえるのにどこにもいないの。幻聴なのかなって思うのは簡単だけど、幻聴ならおかしい。エレの中のゼロは、こんな事言わない。
どこにでもいるとか、意味わかんないもん。
「ゼロー」
とりあえず呼んでみる。
「エレ⁉︎ エレ〜! 」
反応あった。早すぎ。一秒も待たずに反応きた気がする。
でもやっぱり見えない。
「ゼロ誰と一緒? 一応。それに見えてる? 」
わかっているけど、一応確認。
「エルグにぃとルーにぃ〜、見えてない〜。エレ〜、俺のエレ〜」
ゼロが答えてくれる。もしかしたら、姿が見えないだけですぐ近くにいるのかもしれない。こんな闇の中だからありえる。
そう思って手探りで探してみる。でも、空気しかないの。
こうなったらエレの悲しみのにゃん、じゃなくて愛魔法。
「姫さんストップ」
アディが止めてきた。でも
「やだ。エレが泣きながら愛魔法使えば、きっと成功するもん」
「ここらいったい破壊する気か。んなもんしなくていいからゼロの居場所把握。正確にな」
それ以外に方法あるの? アディを信じてみる。
エレとゼロは感覚や場所の共有で、互いにどこにいるのかわかるようにするのは可能なの。それしても何も意味ないって思ってしてなかったけど。
それを頼りに、エレはゼロと両手を重ねる。見えてないけど多分重ねている。
「ここ」
「了解。姫さんは離れとけ。ゼロ、そこで氷魔法使え」
「ああ」
エレはおとなしく離れておくの。何するかわかんないけど。
アディの背中に隠れておくの。
「「せーの! 」」
二人の声が重なって聞こえる。アディの炎魔法とゼロの氷魔法が同じ場所に放たれる。
二つの異なる魔法がぶつかった衝撃か何かなのかな。わずかに空間の裂け目ができた。
三人ともいる。裂け目から確認できたの。
「エルグにぃとルーにぃ、解呪魔法を使って」
エルグにぃとルーにぃが解呪魔法を使ってくれる。あとはエレががんばるの。
「エレ、これ使え! 」
空間の裂け目から投げられてくるペン型の魔法具。エルグにぃからの贈り物。ちょうど欲しかったものなの。
エレは渡された魔法具を使って、解呪魔法のおかげで浮かび上がった魔法陣を描き換える。解呪できなくても、魔法系だと魔法陣が浮かび上がる事があるの。
空間の裂け目が消えた。ゼロ達とちゃんとした再会。
エレはゼロに抱きついてあげる。
「ゼロ、エレ不足で幻覚見えていたみたいだから。あのね、ゼロがいない間にいっぱいいろんな事あったの。でもゼロのお話も聞きたいから同時に話すの」
「それやるとお前が理解できなくなるだろ。俺は理解できるが。だから俺が話した後にエレなんだ」
エレは不服申し立ての意を込めて、頬を膨らませる。ゼロに頭撫でられて和解。おてて繋ぐの。
「フォルにもお話があるの。あの魔法陣どっかで見た事あるって。ゼロ知らない? 」
「知らない。エレ知らない? 」
「知らない。フォルに聞くのがいいのー」
見た事あった気がするけど、ゼロが知らないなら仕方がないの。フォルの方が物知りだから、フォルに聞けば何かわかるかもしれない。
エレ達は入ってきた場所に戻る。空間の歪みはまだ健在。でもちょっと小さくなってた。




