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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
2章 エレ編 御巫と聖女
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1話 御巫の記述の謎


 ルーにぃとフォルに頼んで貸してもらった、ユグベーズ手記の写本。原本はアスティディア王国への献上品らしいの。写本でも、記述者ユグベーズの紋章が押されている。これも献上品なのかな。


 ベッドの上で座りながら全部読めた。がんばったから、エレの隣にいるフォルに抱きつく。ついでに慰めも必要なの。


「わかんないよ。どうして姿が変わったの? それに元の世界って? ……わかんないよー」


 読み終わったら何かわかるかもって思っていたのに、何もわからなかったの。わかんない事が増えるだけだった。フォルが、エレが右手で持っていた写本を回収している。


 エレが泣きついているのに、フォルの反応が薄い。お話聞いているのかすら怪しいくらい。


 フォルは左手でエレの頭を撫でて、右手に持ってる書類見てる。エレじゃなくて、書類に夢中なの。


「……エレ、悪いんだけど仕事付き合って。呪いの……とりあえず、話聞き行くよ」


「ふぇ⁉︎ う、うん」


 フォルが急に言うから、エレは急いでお洋服着替えるの。フィルイメージのフォルのお部屋のクローゼットを開けてお洋服出してる。ちらっとフォルを見ると、さっきエレから回収した手記を読んでる。


 お着替え終わって、ゼロがいないから、書き置きを書いておくの。ゼロはね、今エルグにぃとルーにぃと一緒に買い物に行っているの。三日くらい前から。


 ゼロがいつ帰ってきてもいいように、ちゃんとお外行ってくるって書く。ゼロならきっとぎりぎり読む事ができるの。


「……赤髪だけじゃわからないか」


「何が? 」


 赤髪って手記にも出てきたけど、フォルは何を気にしてるんだろう。


「なんでもない。それより支度できたんなら行くよ。急がないと、取り返しのつかない事になる」


 教えてくれなかった。転移魔法の白い光に包まれるエレ達。どこに行こうとしているんだろう。



 その答えは十秒も経たずにわかったの。円柱の高い建物がいっぱい。とっても栄えている国。手記にも出てきた、アスティディアなの。


「フォル、ちゃんと説明して欲しいんだけど」


 エレは何も説明されてないから説明求める。


「ごめん。先に用事を済ましたくて。さっきも言ったけど、急がないと取り返しがつかない事になりかねないんだ」


 フォルに断られた。悲しみって言いたいけど、本当に焦ってるみたい。お顔に出していないから分かりづらいけど。


 エレはフォルが迷子にならないように、フォルの右手を握る。


 景色を見ながらついていくの。フォルがどこに向かっているのか、わかってきた。あのね、アスティディアの中心には巨大な建物があるの。そこに向かってると思う。そこがこの国の王様がいる王宮。


「……噴水って場所どこにあるんだろ」

 

 手記に書かれていた枯れた噴水。そこが気になるの。でも、全然見つからない。


「王宮の敷地内にあると思ったよ。今はあの記述のように枯れているわけじゃないけど。水系の魔法具を取り付けて水で満たしているみたいだよ」


 フォルが答えてくれる。ほとんど行った事ないはずなのに詳しい。それに、それに


「さすがはあの世界管理システム製作者なの。尊敬。とっても尊敬。凄まじく尊敬。とっても素敵なの。エレもノーヴェイズ製も魔法具欲しい。出回ってないから買えないけど……あれ? そういえば、あの不思議な女の子って誰なんだろう? 」


 一魔法具設計師として、魔法具技師ノーヴェイズ様はとっても尊敬しているの。当然尊敬しているの。それをフォルに教えようとしたんだけど、手記にあった不思議な女の子について気になっちゃった。

 それをフォルに聞いたら、なぜか不機嫌になってる。エレがわからない事を聞いても機嫌損ねないのに。


「……さぁね。そのうち答えが出るんじゃない。それより早く行くよ」


 ほら、返答もそっけないの。しかも、速くなった。歩くの。エレは小走りでフォルについていく。


 急に影に覆われる。上に巨大な建物があるの。そう、フォルが向かってた王宮。

 地面にある円形の魔法機械の上にエレ達は乗ったの。これもきっと、ノーヴェイズ製の——

 はっ⁉︎ また語りそうになってた。


「あれ? ここって誰でも入れるわけじゃないよね? 」


 語りそうになって思い出したの。隣にいるフォルを見る。


「うん。僕は仕事関係もあって、ルーから暗号を聞いてるから大丈夫だよ。ほんとおもしろいよね。身分を示すものじゃなくて、暗証番号で行き来するなんて。忘れたらどうするんだろう」


 画面が出るとフォルが暗証番号を入力した。この魔法機械は、正しい暗証番号を入力しないと動かないの。

 フォルが入力した暗証番号が正しかったから、魔法機械が上昇した。


 地上から離れた場所。気品もある白い石を使っているみたい。天井にシンプルな形状の明かり用魔法具がある。リブインのような、宝石きらきらはないの。

 あるのは記録保存の魔法具。至るところに置いてある。それに壁に歴史が記されてる。


「いつも思うけど不思議だよね。歴史の記録の残し方。紙に残すんじゃなくて、魔法具や石板とかを使って残しているんなんて」


 この国は世界管理システムの内部だけじゃなく、王宮全体、城下街の中にも残りやすい素材で歴史を綴っているの。


「いつか、あの村の人達が元に戻った時に混乱しないように。何があったのか詳しく書いておきたいみたい……あれだと、望み薄な気がするけど」


 手記にあった魔物の姿に変わった村の人達。フォルは何か知ってるのかな。

 

「ふぇ? 」


 エレは知らないの。


「……エレ、もしあの村の人達のような魔物見ても、絶対に浄化魔法は使っちゃだめだよ」


 浄化魔法はだめなの? あれ? でも、手記で浄化魔法使ってた。浄化魔法は不浄を浄くする。魔物の姿が戻らないなら、浄化されて消えたのは人の方。

 いやな想像、考えないようにする。


「……一応、頭に入れといて。元に戻ったとして、こんな栄えた国を見たら、びっくりしちゃうんじゃないかなって」


 フォルが誤魔化した。のかな。何も知らない方がいいのかも。きっと、村の人達は助かるって思う事にする。


「……国王になっても、大切な人を助けても、ずっと村の事を思っているんだよね? びっくりはしちゃうかもだけど、その想いが通じればいいって思いうの……なんだか、他人事とは思えないから」


 どうしてだろう。エレもどこか想ってるのかな。ギュリエンは大切だよ。ギュゼルのみんなと過ごした双子宮とか。で、違う気がする。もっと別の場所。別の——世界ですらない? どうしてそんな事思うんだろう。


「あっ⁉︎ ごめん、会議が長引いて」


 この国の王様が、奥の扉を開いて来たの。


「久しぶり、ノヴェ。仕事で少し聞きたい事があるんだ。あの村で起きた事を君から詳しく教え……いくつか聞きたい事があるから教えて」


 あの手記で和泉って書かれてた人。それがノヴェにぃ。天才魔法具技師ノーヴェイズ様——抑えないとすぐに語りたい欲求出ちゃう。


 というか時間がないからかな。フォルが言葉変えたの。


「いいよ」


 ノヴェにぃが頷く。


「ありがと。なら赤髪の女性と女の子の特徴を教えて」


「腰上くらいまでの赤髪で、左目は髪で隠れて見えなかった。身長は……ヒャク……ロクジュウナナからナナジュウくらい。あと……瞳の色が琥珀色に見えたけど、夕焼けでそう見えたのかもしれない。女の子の方は」


 フォルの質問に答えるノヴェにぃ。身長言われても、ゼロやフォルより高いくらいしかわかんない。


 急にノヴェにぃがエレを見つめるの。


「……エレに似ていた。外見も雰囲気も」


 あり得ないの。その時はエレは別の場所にいた。それに、ゼロが基本一人にしてくれなかった。

 なのに、どうして否定できないの? どうしてドキドキするの?


「……間違いない、か……ノヴェ、噴水見せてくれない? 魔法具つけといていいから」


「うん」


 フォルに左手を引っ張られる。エレはフォルにどこかへ連れてかれる。ついでにノヴェにぃとは一旦お別れ。



 エレが気になってた噴水。お水入ってる。エレはお花を見て落ち着こうとしてる。


「……水の中かな。エレ、おもしろいもん見せてあげるよ」


 フォルが噴水に魔力を注いでいる。水色の光が魔法陣の形になる。


「エレ、何かわかる? 」


 フォルがエレを見る。でも残念。エレはそんな複雑な魔法陣を見た事ありません。


「邪魔変魔法……これで確定か」


 じゃまへんまほう? 聞いた事ないの。フォルがわかっても、エレはわかんない。


「……みゅ? 」


「……あの組織から命じられたのは、呪いの聖女の抹殺。エルグにぃ様からは呪いの聖女の救済。これで確定でいいだろう。呪いの聖女。その正体はリミェラだ」


 いろんな事がありすぎて、もう頭が回らないの。そんな中でその正体を聞いて、救えなかった二人を思い出した。

 潤んだ瞳でフォルを見るの。


「……言っとくけど、君がどうしようと変わらなかったよ。ゼロならどうにかできた可能性はあったけど、むりって決めつけすぎ。あの段階ならむりやり破壊すればいいのに」


 変わらなかった。それは、言い訳でしかないの。エレ達があの二人を見捨てたのが、きっと——

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