エピローグ 愛の神聖兄妹の日記
【今日からエレと一緒に日記をつける事にしたんだ。どれだけ他愛のない日常でも、僕らにとってはかけがえのないもの。それに、僕らには血の繋がりなんてない。ゼロやゼム。フォルやフィルと違って。それでも、兄妹なんだと思える何かが欲しい。その願いをこの日記に込める。
でも、日記って何書けばいいんだろう。初めてだからわかんないや。報告書と何が違うんだろう。
今日はエレと一緒に生命の星へ行った。生命の星は他の星と比べて自然が多い。都市部は二十一星の中で一番栄えている。自然と都市がバランスよく成り立っている。
きた目的は加護の調整。実際に見た方が早いから。それと、エレにいろんな景色を見せてあげたかったから。
おんなじ日、おんなじ場所で生まれた僕とエレ。でも、エレはほとんど外には出られず、僕は沢山外へ出られた。いろんな景色を見れた。僕が神聖に正式になって、ようやく外へ連れ出せるんだ。後悔ないようにしたい。
エレに、兄らしい事を。外を夢見るお姫様に、僕の見た景色の一部を分けてあげたい。
「わぁ、とってもきれい。ねぇ、他にもきれいな場所あるの? 行ってみたい」
そう言って、はしゃぐ姿は子供のようだった。姫であるという事を忘れているみたい。目を輝かせて。
それにしても、ただの公園でここまではしゃぐなんて。
こんな姿を見ていると、姫でなく普通の女の子として生きてほしいって思うよ。それが叶わない事だというのはわかっているんだけど、願うくらいはタダだよね。
僕はエレのかわいらしい姿を見て楽しんでいたんだよ。君は気づいていないんじゃないかな。目に映るもの全てが新鮮だからか、表情がすぐに変わっている事に。
加護の方は問題なかったよ。ちょうどいい。
「ねぇねぇ、あっちの方気になる」
なんて、危機感なく言うんだから。はしゃいでくれるのはいいけど、忘れるのはいいけど、姫なんだから危機感だけは持って欲しいものだよ。ここは愛の星と違って平和な場所というわけではないんだから。
しかも、言ってる場所森の方なんだよ。理解してた? 森の方は魔物の出現率が高い。だからあんまり連れて行きたくなかったんだ。でも、今日は特別。僕が常にそばにいて守るから。ほんと、特別に連れてってあげただけなんだよ。
青緑色の草がなんというか、僕らのだいすきなあの子を思い浮かべるよね。エレはこの場所について知らないんだろうけど。ここは源夢の森。この星が最初に創った場所なんて言われてる。伝説の類だね。
でも、あながち間違いではないのかもしれない。そう感じられるような不思議な力を感じるんだ。
「……だぁれ? 」
エレ、君は誰もいない場所をじっと見つめてそう言ったんだ。愛の星に戻ってから誰かいたのかって僕が聞いても「わからない」って答えていた。というか、君はこの時の事をほとんど覚えていないというか、夢を見ているようだったなんて後から言ってたんだ。
僕は誰かいるように見えなかったけど、神聖力が他の場所と比べて桁違いに多い場所っていうのはわかったかな。
「……わたし? わたしは、エレシェフィール。百三代目神聖姫。全然姫っぽくないかもしれないけど……うん。よろしくね。フォレセルス様」
会話の内容は別にどうだっていいんだ。エレが誰とどんな会話をしていたなんて一々気にする事じゃないから。でも、気になった事はあるよ。
君が言っていた名前。
フォレセルスってあの子の魔剣の名前とおんなじ。僕らが与えられた魔剣は、星の意思と同じ名を持つ。君もそれは習ったよね?
魔剣と星の意思は別と考えればいいのか。おんなじと考えればいいのか。君はどっちだと思う?
とりあえず、今日はこの辺で。君もちゃんと描いてよ。一緒に書くって約束なんだから。
——
読んだ。わたしは今日、ゼロにむりやり連れ回された。疲れた。おやすみ。
——
読んでくれたのは嬉しいけど、真面目に書く気あるのかな。まぁ、ゼロと遊んで疲れて書けなかっただけだよね。明日はちゃんと書いてくれる事期待♡
今日はね、フォルと一緒だったんだ。お部屋デート♡
なんて、冗談だよ。実際は、フォルにこの前君が見たものについて聞きたくて。
フォルに抱きついていたのは否定しないけど。
「んっと、源夢の森だよね。あるよ。行った事。一度だけなんだけど……導かれていたのかな。あの儀式の時、ゼロは星の意思に会えて、自分の本来の役割を知ったでしょ? でも、僕は何もなかった。ただ、神聖としての力を与えられただけ」
「僕らの見させられた歴史とあの苦痛だけ与えられて、双子として生まれた意味は教えられなかったんだっけ? 」
君には詳しく言えない事なんだ。でも、儀式を受けるくらい知ってるでしょ? 本来であれば二十一神聖。一つの星に一人の神聖。なのに僕らの代は違う。僕らは姫と神聖という例外だけど。ゼロとゼム。氷の星の双子。フォルとフィル。生命の星の双子。
ゼロは儀式の時に会った星の意思から、本来の役割と能力を教えてもらっている。だから、自分の存在意義に悩まなかったんだろうね。
「僕はなんなんだろうって、悩んでいた時に偶然源夢の森についたんだ。黄金の蝶が、森の奥に案内してくれた……見た事ないような花が咲いている場所だった。知らないはずなのに知っている花。それを見ていると、僕がここにいる意味があるんじゃないかって思ったんだ」
星に関する会話はそのくらいかな。その意味はきっとわかっていない。今はその意味を探そうとしていると思う。そういえば、フォルの部屋って居心地いいよね。どうしてなんだろ。来るたびに違う花が咲いているのは。
どうでもいいけど神聖ってさ、部屋個性的だよね。フォルと話した後、ゼロにも話を聞きに行ったんだけど、寒くて寒くて。あんな部屋でエレを置いてたら風邪引くどころか凍って帰ってくるよ。
ゼロも源夢の森のような不思議な場所に行った事あるらしいんだ。氷の星のだから、また別の場所だけどね。でも、美しいって言ってたよ。源夢の森もそうだった。
きっと、ああいう場所は美しい場所なんだ。
ゼロから話を聞いた後、部屋に戻ったんだ。僕らのらぶらぶ部屋に。
そうしたらエレとフォルが寝てた。一緒に仲良さげに。僕は一人でずっと調べ物してたのに。なんか見てたら寂しくなってきた。しかも
「……すゃ……すき」
「……すき……すゃ」
なんか二人ともいい夢見てそう。二人が起きないように魔法を駆使しながら間に入ったんだ。起きたらびっくりするだろうなぁって思いながら。
なのに朝起きたら君らどうしたか覚えてる? 寝ぼけて覚えてない?
朝起きたらびっくりするどころか君ら一緒に僕に抱きついてきたんだよ。そこにいるのが当然みたいに。こっちがびっくりだよ。
うれしかったと聞かれればうれしかったんだけどさ。
ごめん、色々忙しくて書くの朝になっちゃって。エレ、今日は真面目に書いてよ?
それと、この話を聞いていて一つ考えた事があるんだ。
僕は星の歴史を見せられてきた。他の必要知識も全て、教えられてきた。でも、それって誰がどうして必要と判断したの? それに隠されている事って何かあるんじゃないかな。
真実を知って何かしたいとかは考えてない。でも、知っておいて損はないんだと思う。知識はあればある分だけ、非常時における選択が広がる。フォルもそう言ってたから。
それに、フォルのためにも知りたいんだ。僕にはあの子が必要だから。あの子がちゃんと、自分が必要なんだと思えるような理由が欲しい。だから、応援してくれる? 僕のお姫様】




