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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 碧猫
1章 シェフィ編 かけら探し
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番外 その頃のエル


 シェフィムが少女のかけらの状態を安定させていると突然煙が上がった。煙が消えるとシェフィムがいなくなっている。どこかへ転移させられた。

 残された神官エルは左腕につけている連絡魔法具を外す。シェフィムに連絡しようとするが繋がらない。


 神官エルは右手の薬指にある指輪に魔力を注ぐ。契約者であるシェフィムの居場所を示す光の柱が神官エルの視界へ映り込む。

 指輪の示した場所は近くはないが遠いわけでもない。走れば十分から十五分程度で着くだろう。


 神官エルは指輪の示す場所へ走る。


 プルルルー


 突然鳴る連絡魔法具に足を止めずに対応する。


「ティア、何の用? 」


 連絡魔法具越しに映るクルッと癖毛が目立つ金髪の少女。白い柱の後ろに花畑。連絡してきたのは神官エルの妹。神殿に勤める聖女だ。神殿から連絡しているのだろう。


『やっと仕事終わったよ。しばらくは神殿にいなくても大丈夫みたい。今どこにいる? 』


「なら地図送るからそこにきて。ボクもそこへ向かってるから」

 

 本来であれば神官エルは妹と一緒にシェフィムと会う予定だった。だが、妹の予定が合わず神官エルだけの合流となった。

 神官エルは妹に地図を送る。場所は指輪が示した場所。


『わかった。星の神魔の導きを』


「星の神魔の導きを」


 神官エルは魔力により光る右手薬指の指輪を連絡魔法具越しに妹に見せる。妹も同じように指輪を見せている。


 互いの指輪の光を確認すると神官エルは通話を切った。


 常に周囲の地形は確認している。街外れは雪と岩ばかりだ。実験施設を建てるのであればちょうどいい場所だろう。


 転移魔法を使う方が早いのだろう。だが、何が起こるかわからない状態で無駄な魔力は使おうとは思えない。

 この間にも神官エルはシェフィムに連絡を試みるが通じない。この辺りは魔力の遮断地域ではない。何かに巻き込まれて連絡ができない状況にいるんだろう。


「……魔物」


 二メートルはあるだろう。真っ黒く犬に似た姿をした魔物が数十匹いる。この急いでいる時に魔物の群れと遭遇した。

 神官エルは収納魔法から魔法杖を取り出した。魔法杖を右手で握る。


「悪いけど、今は急いでいるんだ」


 神官エルはわずかに愛魔法を混ぜて浄化魔法を使う。澱んだ想いが浄化され、魔物が白い光となる。

 神官エルは浄化される魔物に祈りを捧げた。


 魔物を浄化した神官エルは再び走る。走っていると巨大な建造物を見つけた。灰色の建造物は高度な結界魔法具により守られている。魔法具だけならどうにでもなるが、鎧を着て警備をしている様子の人物がちらほらと見掛けられる。


 これでは侵入は難しいだろう。普通なら。


 神官エルは堂々と正面玄関へ向かう。


「何者だ! 」


 鎧を着た男に呼び止められる。神官エルは堂々としている。


「フォーエフィード神殿所属、神和の聖女ミティアーネルの補佐を務める神官エル。聖女に変わり浄化の光を捧げにきた。通していただけるか? 」


 神官エルは神殿で発行された身分証を見せる。フォーエフィード神殿所属、大神官エルと書かれている。偽物ではない証拠に特殊なインクが使われている。光で文字の色が黒から青に変わる。


「ご苦労。浄化石の場所まで案内しよう」


 神官であるからこそできる手を使い浸入する。

 普段から色々と調べていた甲斐があったというものだろう。この施設は度々神殿から派遣された神官が浄化に訪れている。その記録を以前見た事を覚えていた。その際にこの建造物は浄化魔法の研究施設と書かれていた。実際にそんな研究をしているようには見えないが。


 神官エルは鎧を着た男に案内されて建物の内部へ入る。


「ところでいつもの神官とは違うな。聖女補佐というのは本当なのか? 」


「……」


「まあいい。こんな大物を送ってこられるとは。だが、これも研究のためだ! 」


 鎧を着た男が武器を手に持つ。鎧を着た男が神官エルに斬りかかる。神官エルは右に避けた。


 キィィン!


 甲高い音が鳴る。床にヒビが入っている。


「研究……そんなふうには見えないけど。後で調べればいいか。少し眠っていて」


 睡眠魔法を使い鎧の男を眠らせる。天井を見ると監視魔法具が設置されている。


「エル! 」


 澄んだ美声が響く。癖毛が目立つ金髪の少女が駆け寄ってくる。ここへ来る前に連絡していた神官エルの妹だ。


「シェフィは? 」


「まだ見つかってない。監視魔法具があるからどこかに映像を見る部屋があるはず。わかる? 」


 妹が頷いた。収納魔法から魔法杖を取り出す。両手で魔法杖を握る。妹を囲うように桃色の光が溢れ出す。神官エルは妹の邪魔にならないよう黙って見ている。


 五分ほどで光は収まった。妹が魔法杖を収納魔法にしまった。


「見つけた。こっちだよ」


 妹が左手で神官エルの右手を掴んだ。妹が魔法で知った監視室へ案内してくれる。神官エルは妹についていった。



 薄緑色の扉。神官エルは扉を開ける。監視魔法具から流れる映像がモニターに映っている。そこにはシェフィムの姿もある。それに、彼女の姿も。


 シェフィム達が愛して、現在はシェフィムの中で眠っているはずの少女。シェフィムがそばにいるおかげだろう。不安がる様子はほとんど見られない。


「な、なんだ貴様⁉︎ 」


 シェフィム達を監視していた白衣を着た男が神官エルに気がついたようだ。妹が右手を前に突き出して束縛魔法を使う。

 白衣を着た男を妹に任せ、神官エルはシェフィム達を解放する方法を探る。


 神聖にいる魔法具の天才二人ほどではないが神官エルも魔法具や魔法機械の扱いは最低限学んでいる。

 どこかにある扉開閉装置を探す。


「何をする⁉︎ やめろ! それに触るんじゃない! 」


 神官エルがレバーに近づくと、白衣を着た男が叫び出した。それが答えだ。神官エルがレバーに触れる。

 モニターを見るとシェフィム達のいる場所の扉が開いている。


 木の模様がある棒を持って白衣を着た男が神官エルに背後から殴りかかる。神官エルは右手で棒を握り睡眠魔法を使った。白衣を着た男がぐっすりと眠る。

 周囲を見渡すと妹がいなくなっている。兄の事よりも彼女の事の方が大事だったんだろう。


 白衣を着た男のポケットから折り畳まれた紙が落ちた。その紙を手に取る。


【聖星族の特殊能力研究報告書。聖星の特殊能力には星の声を聞くというものが存在する。星に好かれ星を好いている。それが聖星というものである。聖星は最古の種族。最も尊ぶべき存在。ヴィンジェグァとは比にならない歴史を有している。我々が真に従うべき相手のはずだ。それらの情報の裏付けとなる能力が存在するはずだ。しかし、その能力はまだ発見できていない。聖星が信仰している神聖という者達を調べれば何かわかるかもしれない】


 なぜそんな情報を知っているのか。疑問は残るが、それは後回しにする。


 だが、まだ何かあるかもしれないと部屋の中を探す。しかし何も見つからない。神官エルは連絡魔法具を左腕から取った。神官エルの所属する神殿の神官長にメッセージを送る。内容はこの施設を調査してほしいというもの。


 すぐにメッセージが返ってくる。調査は後日してくれるようだ。

 神官エルは連絡魔法具を左腕につけた。


 モニターの方に目を向けるともう彼女はいない。妹が彼女目当てだとわかるような態度をとっている。だが、彼女が無事と知る事ができて安心してもいるようだ。


「……無事だよ。二人とも。キミは自分の役割を果たして。あの人にも連絡よろしく。これ以上被害が酷くなる前にボク達も動くよ」


 神官エルは右手でピアスに触れてそう言った。


『了解。全ては星の命のために』


「うん。星の命を助けるために」


 神官エルはピアスから手を離すと監視室から出た。

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