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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 星実月 希蝶
1章 シェフィ編 かけら探し
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4話 星の運命


 前も後ろも、地面も真っ白。空を見上げると、滅んだ世界がいくつも浮かんでいる。半分くらいかな。僕らが破壊した世界は。全部暴走によるものなんだけど。


 ここは、夢の中というのが近いんだろう。実際、僕の身体は今、寝ているからね。


「……」


 長い髪を揺らす少女が僕の隣にくる。僕のだいすきな人。彼女にとっては夢の中じゃなくて、居場所なのかな。僕を器として、ここで全てのかけらが揃うのを待っていたんだろう。


 彼女の右手が僕の左手に触れる。ここではちゃんと温もりを感じる。


「珍しいよね。僕ら二人だけを呼び出すなんて。何かあったのかな? 啓示出るまでわかんないか。それまで少し歩かない? 」


 僕ら神聖と魔聖は、ある存在から呼ばれれば、寝ている間に強制的にここへ連れて来られる。自分から行く事もできるんだけど。

 ある存在が何か? そんなの僕も知らないよ。星の意思なのか、全く別の存在なのか。


 その存在の言葉がまだ来ないから、暇な時間。久しぶりに彼女と散歩する。


 上空にある悲しくも美しい世界達を見ながら。


「……はぁ……はぁ」


「大丈夫? 少し休もうか? 」


 彼女が息を切らしている。少し遅めに歩いていたんだけど、速かったのかな。以前はこのくらいの速さなら大丈夫だったんだけど。

 僕は立ち止まって、彼女の様子を見る。


 彼女は僕に心配されないようにと、笑顔を作っている。でも、以前僕が二百時間くらいぶっ通しで走り続けていた時くらいに、疲れている顔をしている。


「大丈夫。ありがと。体力ないの知っているのに歩かせてくれて。心配してくれて」


 うん。生まれつき体力ないって知ってるから心配するのは当然でしょ。妹の事なんだし。


 この子は昔から体温を溜めやすいから、下げてあげた方がいいかな。

 僕は左手に氷魔法を帯びる。空色の光を纏った左手で、彼女の頬に触れる。


「ごめん。前ならこのくらいは平気だったから」


 彼女がここまで疲れたのは、完全に僕のせいだ。なのに彼女は笑っている。


「うん。平気だったんだよね。なんでだろ。かけら二つ分だからなのかな。なんだか前よりも疲れやすくて」


 だからと言って、僕がもっと配慮すればよかっただけなんだよ。

 急に彼女が僕の左手を両手で掴んだ。その手は彼女の頭の上に乗せられる。

 無言でじっと見つめる、僕のだいすきな人。その理由はわかってる。


 僕は左手を動かす。彼女の頭を撫でる。


「甘えっ子は変わってないか。それでこそ僕のかわいい妹なんだけどね」


 ついでに、他人の感情に疎いくせに、こういう事ばっかり鋭いとこも。この子は僕が自分を責めていると思って、頭を撫でさせてくれたんだ。僕とフォルの教育の成果かな。この子は自分の頭を撫でさせる事が、慰め的なものと思い込んでる。


 お礼のつもりで、彼女のほっぺに口付けをする。


「ふぇ⁉︎ えっ⁉︎ 急にどうしたの? 」


 顔を赤くして慌ててる。正直に理由言うと、気恥ずかしいから適当に理由つける。


「最近全然できてないから。おはようのキス、行ってきますのキス、おかえりのキス、おやすみのキス、がんばったねのキス、かわいいのキス、だいすきのキス、お勉強お疲れのキス。何もできてない」


「……そう言葉にされるとなんというか……多すぎる気がするの。今度から減らそうかな」


 それは絶対いや! 僕は大袈裟にびっくりしたというポーズを取る。ついでに悲しげな顔を見せる。そうしたら彼女は、両手で口を隠してクスクスと笑い始めた。


「そんな事したら、シェフィよりも先にわたしが寂しくなるよ。だから、ここへきた時は必ずちゅてするの」


 なんて単純なんだろう。自分でもそう思うよ。その言葉だけで、ここまで心が豊かになるなんて。


「うん! そうだよね! 二人とも寂しくなるのはいやだよね! なら、僕がお仕事がんばったキスも追加していいよね」


 ついでに現実で起きた時のために、言質をとっておく。


「うん……いいよ。それで寂しくなくなるなら。ずっと一緒にいられるなら……わたし、シェフィ達と一緒にいたいよ。星の姫としての役割は大事だよ。でも……でもね、それ以上に、みんなと一緒がいいよ。おかしいよね。星のために生きる姫が自分の感情を優先するなんて」


 初めて聞けた。あの日の本音。そして今の彼女の感情。

 俯く彼女を僕は抱きしめた。


 彼女がどう言おうと、僕はその感情を否定しない。誰にも否定させない。


「おかしいわけないよ。僕らには僕らの意志があるんだ。心があるんだ。それを誰にも否定させはしない。星が大事かもしれない。でもね、星のためだけに生きる必要もないんだよ」


 僕らだってそうだ。星の役割は大事だけど、自分達の心も大事。だから、世界で交友関係を築いている。


「……」


「自分の願いは優先してはいけないと思ってるなら、そんな役割なんて果たさなくていいから、僕のために生きて。僕のためにフォルと結婚して、みんなと一緒に笑っていて。その最後の役割を捨てた先で起きた事は全て、僕の責任にしていいから」


 彼女の最後の願いだったもの。それは魔星となった自分を消して欲しい。そして最後の役割は、暴走する魔星を止める事。それができない結果、何が起ころうと僕が止める。僕が責任を負う。


 そこまでしてでも僕は、彼女と一緒にいたいんだ。彼女に生きていて欲しいんだ。たとえ星の住人が彼女が消える事を望んでいようと。


「……責任は負うよ。わたしが決めた事でもあるんだから。だから、ずっと離さないでね。わたしの騎士様」


 それなら一緒に背負うよ。そう言葉にはしなかった。代わりに


「うん。離さないよ。何があっても。だからもう、一人でこんな事しちゃだめだよ。最後まで、一緒にいるのを諦めないで。僕も、諦めないから」


「うん……うん」


 僕はこの子のおにぃちゃんだから。僕の思う兄としての勤めを果たす。優しくだめって教える。

 服が濡れてる。そっか、この子は姫として声を出して泣くなとか教育されてるのか。そんなもの気にしなくていいのに。


「いいんだよ。大泣きしたって。星の姫だからなんて気にしなくていいんだ。泣きたい時はおもいっきり泣いて、泣き疲れたら寝て、最後に笑顔を見せてくれればそれでいいよ」


 僕がそう言えば、その悲しみをちゃんと表に出すのかなって思ったんだけど、何故か逆の事が起こる。


「……そんなに子供じゃないもん。泣かないから、抱っこして。啓示が出るまでわがまま付き合って。本当は星の姫なんてやなのに、みんながいるからやってあげてるんだから」

 

 別に子供扱いしてたわけじゃないんだけど。泣き止んだんだ。というかさ、後半のその言葉は子供っぽい、と思わなかったのかな。


 僕は彼女のお望み通り、抱っこしてあげる。


「あっ、啓示出てる……愛魔法って意外と便利……星の……これって」


「……これは予言ですらないんだよ。ただの忠告と変わらない。今すぐに動けばそうならない未来だってあるよ。どうやって情報を得て、対策を考えるかが問題かな」


 神聖語が目の前に浮かんでいる。与えられた啓示はいいものじゃない。僕らが知らない、愛の神聖術の使い方。それに、フォルに関わるある事実。何も知らなければ起こる崩壊の未来。


 阻止するにしても何もわからない。星の誕生時期くらいの歴史書は見た事ない。


「……とりあえず、わたしは自分からここから離れられないからここで探すよ。シェフィは……もっと昔の星の歴史とか見られる場所ってあるのかな? わかんないけど、とりあえずどこかで探せばいいと思う」


 僕に関して適当すぎる。信頼がとかそういうのじゃない。彼女は時々、勝手にがんばれスタイルになるから。笑顔が戻ったのはうれしいけど。


「シェフィ、寂しくなったらいつでもきてね。寂しくなくてもいつでもきてね。何もなくてもきてね。わたしはずっとここでシェフィと一緒にいるから」


「うん。一緒だよ。だから、君の方こそ寂しくなったらいつでも言ってね。必ず来るから」


 そうだ。あれを渡しておこう。僕は光に包まれていく中、創造魔法を使う。創ったのはピンクのブレスレット。僕は彼女の左手首に、ブレスレットをつけてあげる。


「これなら繋がりが強くなって、ある程度の意思疎通はできるようになるよ」


 意思疎通できないと不便だから。彼女はブレスレットを見てぴょんぴょん跳んでる。


「ほんとぉ、うれしい。これならシェフィの魔法のお手伝いもできるね」


 それが夢が覚める前に僕が見た、彼女の自然で身体を使ってまで表現される喜びの笑顔。

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