3話 リブイン王国の姫
エルから箱もらったのはいいんだけどさ、これ近くにいないと反応しないじゃん。って事で、現在は情報待ち中。あまり好き勝手動いていると、いい事ないから。今は、変に目立ちたくない。
情報が来ないから暇。だいすきな人を愛でながら、提出期限ギリギリの報告書を書いている。
「エル、仕事ないってさ、暇なんだね。僕普段から仕事かエレの世話かだったから」
「最近は神殿の仕事忙しかったから、休みもらえたと思ってる」
「休みか……急に休みってなるとする事なくない? 」
普段休み貰えない僕とエルの休日会話。というか、エルはそんな事言いながら、暇そうに座って報告書書いてるんだけど。僕とおんなじ。エルは神殿に報告する用だけど。休みもらえたなんて言うなら、その手の報告書しまえばいいのに。
「あーるーじーさーまーしーごーとーちょーうーだーいー」
そんな念を込めながら、僕は右腕につけている連絡魔法具を外した。僕が気づいてないだけで、仕事の話きていないかなって見ている。
ぷにゅみにゃん
何かきた。確認。相手はあの人から。内容は
「仕事きた。しかもかけらの可能性がある」
仕事の依頼だ。僕はエルに意気揚々と画面を見せる。
【旧リブイン王国にて謎の現象発生。旧リブイン王国の貴族達が突然病にふせる。原因不明。感染経路不明。調査不可。
関連性不明事項。別途資料参照。旧リブイン王国婚約発表】
添付資料は報告書みたい。見覚えのある、丁寧で読みやすい字が連なっている。
【旧リブイン王国に関する報告
養子の姫の部屋にて、管理者管轄の書庫保管指定書物発見。全て回収依頼。件の書物もついでに。件の書物に関しては、以前エクランダで問題を起こした家の令嬢が所持確認済み。
令嬢含め貴族達は全員会場内に在中。後始末依頼。
ちなみに全く反省しておりません。反省するつもりもございません】
時期的に関係性があるかもと判断されたのかな。作成者の名前が伏せられている。でも、流石にわかるよ。これを書いたのはフォル。まぁた、何かやらかしたのかな。僕も人の事言えないんだけど。
堂々としてる文章を読んでて笑いがこぼれる。
「相変わらずだね。あの人もよくこれを何も修正せずに送ってくるよ。相手が僕だからかもしれないけど」
「シェフィじゃなかったらフォルの報告書送られてこない。神殿で合同の仕事だと、必ず書き直されてた」
「後始末しないのと、本家に向けた反省する気ないアピールさえなければ……詳細書こうとしない時点で……ところでリブインってどこ? 」
どうして書き直す必要があるのか、考えてると大問題に気がついた。
リブインが僕の持ってる地図に載ってない。三十年以上前のだけど、そんなしょっちゅう変わるかな?
「リブスがあった場所にできた国」
「リブス……あそこか。じゃあ転移魔法使うよ。あの子はちゃんと結界で守ってあるから」
エルが教えてくれた。リブスなら知ってる。エルの準備とか大丈夫、なんて聞かずに僕は転移魔法を使った。
金持ちが暮らす場所、みたいな街。でも、破れた地面がそのまま。
「……何があったの? 」
ここに関しては、何も知らないからエルに聞く。
「あの子にむりやり古代書の複製をさせた金で、国が潤ってた」
エルが淡々と答えてくれる。あの子ってエレの事だと思う。
「あの子ってそんな事までできたんだ」
憤りよりも、エレが写本なんてできたんだと感動が勝つ。あの子はほんとにむずかしい事ばかりこなすよ。基本的な勉強は苦手なのに。
エルもコクコクと頷いている。ここまでできるなんて、やっぱ知らなかったか。
エルの方が僕よりあの子に会っていたはず、なんだけど。
「もうついたんだ。ここであの子が……とりあえず解決するのが先かな」
感動していたら、何故か王宮の前についている。リブスの時とは比べ物にならないくらい豪華。というか、きらきらしすぎてあの子の目に悪そう。騎士達はいない。侵入し放題。
とりあえず、中に入って原因調査。魔法具の明かりが消えた夜、何かあって部屋から出た時に、星明かりで照らされた宝石で目がやられそう。そう思うくらいぎらぎらな廊下。
勘を頼りに進んでいく。辿り着いたのは隠し部屋のような場所。扉を開いた先にあったのは、王宮の中ではない景色。
狭い部屋、足場がないほど積まれた本。ベッドはない。休む事には適さない部屋。ここであの子はずっと、利用され続けていたんだ。
「……」
僕は本を踏まないようにしながら、机の方へ向かった。机の上に置かれているペンには、血が滲んでいる。薬が入った瓶がいくつも置かれているけど、一つを除いて、あの子の症状を悪化させるものばかり。一時的に良くなっても、長期的に見れば魔力疾患を悪化させると報告を受けている薬。
有名だから知らないはずない。どうでもよかったんだろう。
魔力疾患は、魔力を体内に溜める器である魔力器官の異常で、何かしらの症状を出す病。一般的には。僕らは魔力異常体質とか、特殊体質って呼んでる。病という枠組みじゃない。神聖力を溜める器もそうなんだけど、腹部のあたりにある目に見えない器官と言われている。
本をどかすと、青い封筒が置かれていた。送り主はリブスの国王。僕は封筒の中身を見る。
【純粋なる姫君へ
あなた様の無事を祈ります】
あの子を想う手紙。自分の情報は出していない。あの子が読めなくても、想いは届いていると思う。手紙と一緒に送られたと思われる薬で。
唯一、あの子の症状を緩和させられる薬。しかもかなり安全なもの。他の薬はかなり残っているのに、この薬だけ一錠しかない。
この薬の瓶と手紙だけは持っておく。僕は腰につけている収納袋に、その二つを入れた。
収納魔法は便利だけど、袋なら魔法使えない時とか、誰かに渡す時に便利なんだ。
「……シェフィ、この件から手を引いても、誰も責めないよ」
僕の心中を考えてだろう。エルの声がいつもより暗い。
「引くわけないでしょ。なんとしてでも僕の手で助けてやる。あの子の代わりに」
僕はそう言って振り返る。扉の方にいるエルを見る。
「変だって思っていいよ。でもね、何があっても、人を傷つけるような復讐も見捨てる事も絶対しない。僕は愛の神聖なんだ。本気で許せないなら、こういう時に、あんな事して強者を主張してたくせに僕に助けられるほどの存在なんだって、嘲笑ってやるだけだよ」
それが正式に神聖となったあの日、僕が決めた事。僕は、愛を捨てない。それは愛の神聖として以上に
「それが姫の兄であるという事? 」
そう。その通りだよ。僕があの子のおにぃちゃんだから。おにぃちゃんは、憎しみを生まないために愛を届けてあげるんだ。全てを救う、慈悲深き愛を
「そういう事。君だってあるでしょ? そういうの。僕は、あの子に醜い世界を見せたくなんてない。あの子には優しい世界を見せていたい」
エルも姫の兄。そして僕とおんなじ愛の星の生まれ。二十一の星と二十一の役割。今代は二十三だけど。希望と、もう一つは僕も知らない。愛の星で愛を届ける役割を持つエルも、きっとおんなじなんだ。
一番大事な人に愛を与える模範でありたい。
「……」
エルが頷いて肯定しようとしてるはず、なのに黙った。理由は、突然ふわっと現れたかけらの子。本を見つめているのはすきだからかな。
集落の時のような異常は感じられない。
ソファに座る彼女。僕はその隣に座りにいく。
「……ありがと」
笑みを浮かべてそう言う彼女は、僕が彼女の最後の願いを聞き入れないと知っている。
「……なんだか、ここの人達に迷惑かけちゃったみたい。ただ、フォルが見ていた本を見たかっただけなのに。触れる事もできなくて……」
ん? これ本がすきじゃなくて、フォルがすき?
悲しげな彼女を、僕は抱きしめてあげた。実態がないから触れられない。
「……シェフィ、わたしの言葉なんて気にせずにすきにしていいよ。わたしはどちらを選んでも、受け入れるから」
「うん……ごめん、身勝手な兄で」
彼女は僕のする事を否定しない。ピンクの光となり僕の中に入る。
ただそこにいるだけで、影響を与えてしまう。ここの人達が、愛より欲を選んでいたからなんだろうね。
影響がなくなったなら回復するんだろうけど、ちゃんと改めて欲しいもんだよ。このくらいで愛を選べば苦労しないけど。
「これでこの国の人は救われたはずだ。帰ろっか」
「……シェフィ、同じ姫を持つ兄として言わせてもらうけど、姫の無事を祈る事も、姫を消させない事も、身勝手じゃないよ」
「……そう、かな」
身勝手じゃない。それが何よりも救いだ。
用が済んだ僕らは、転移魔法で家に帰る。
持ってきた手紙と、薬が入った瓶を、だいすきな人のそばに置いておく。怪我しないように、結界魔法で保護して。
「エレ……君を想う人はいっぱいいるよ。これは君が気づかなかった優しさ。そばに置いておくから、読んであげてね」
寝ているから読まないって事は知ってるよ。でも、いつか読めるようになると信じたいから。
最近はエルと一緒に床とかソファで寝てるけど、今日は彼女の隣で眠る。ごめんね、エル。三人は入らないから。




