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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 碧猫
1章 シェフィ編 かけら探し
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2話 魔星の神官


 集落の一件以来、欲しい仕事は来ない。頼まれたのは監視の仕事と書類仕事だけ。


 プープー


 突然鳴り出す連絡魔法具。シェフィムは右腕につけている連絡魔法具を外した。


『夜分遅くにすまない。少し離れているが、村人が全員眠って起きないらしい。調査を頼めないだろうか? 』


 相手はシェフィムの上司に当たる人物。先日の集落の時に連絡を交わしていた相手だ。


 ぷにゅみにゃん


 メッセージが届いた音が鳴る。確認すると、報告書が添付されている。内容に関してはあまり情報がない。理解不能の減少が起きているような事しか書いていない。


「格安で受けてあげる。愛しきエレにゃん隊員の写真大量に送って」


『……後で送る。写真撮ってくるからあと三十時間くらいかかる』


「わかったよ……行ってくるね、今日も遅くなりそうだけど待ってて」


 シェフィムは眠っている少女のベッドに結界魔法を使うと転位魔法で目的地へと向かった。



 報告書に少しだけ書かれていたがその通りの小さな村だ。村人らしき人影は見られない。いるのは明らかに村人ではない清潔な衣装に身を包んだ金髪の少年だけ。

 シェフィムはその少年に近づいた。


「久しぶり、ミドゥ……今はエルって呼ぶべきなんだっけ? 由来はエレシェフィールらぶ魔星? 」


「半分は否定しない……早速だけど、今回の件ボクたちは何も知らない」


 清潔な衣装に身を包んだ少年がシェフィムに四角い箱を渡す。どうやら魔法具のようだ。

 シェフィムは受け取った魔法具を起動させる。

 だが、何も起こらない。

 何かの事象を起こすようなものではないんだろう。魔法具には小さな穴が存在するシェフィムは穴の中を覗いた。


「これは? 」


「暴れていた魔星を眠らせておいた。眠っているから何の情報も得られないけど、お目当てのものに共感している」


 箱の中にある魔星はかけらではない。だが、同じ魔星だ。何らかの繋がりがあるんだろう。

 今は光が弱い。この近くにはかけらがないんだろう。

 シェフィムは魔法具を少年に返した。


「いいの? 」


「うん。君が一緒にいてくれるんだから僕が持っておく必要ないよ」


 少年が何か言いたそうな目をしている。シェフィムは何も言わせない笑顔を見せた。


「なら契約しておく? シェフィが逸れた時のために」


「……僕は妹と違って無自覚迷子癖ないけど? 」


 口ではそう言いつつも契約のために動く。シェフィムの左手と金髪の少年が右手が重なる。

 シェフィムは神聖力を、金髪の少年は魔力を。二つの力が重なる。


「愛の星に生まれし二極、今再びここに重なり、絆を誓う」


 二人の足元にピンク色の魔法陣が浮かぶ。魔法陣から光が放たれる。地面から上空に向かい風が流れる。


「星の意思の元生まれし神極。愛の神聖、シェフィム・レディエース・エンシェルト。今ここに二極契約を繋がん」


「星の意思の元生まれし魔極。愛の魔聖、ミードゥジョプ・ワーグ・エーシェフト。今ここに二極契約を交わさん」


 魔法陣から出る光が二人の指輪に吸収される。シェフィムは左手の薬指、金髪の少年は右手の薬指につけている植物のような指輪に。


「これで契約完了。神官エル、相当優秀みたいじゃん。て事は、僕のお願い聞いてくれる? 」


「村の現状? 寝ている人は健康体。魔力の影響も受けていない。原因は不明。目に見えるものではないというか、普通の人では理解できない現象が起きている」


 普通の人は理解できない事。シェフィムや神官エルには視えるが、一般人は視るどころか知る事すらできないものだろう。

 それが多く集まっているのは小さな公園。靄のような光が漂っている。


 シェフィムはその光の元へと行こうとするが、神官エルに右腕を掴まれて止められた。


「近づかないで。あれは魔物の前兆。神聖なら呑まれた魔星の末路を知ってるはず」


 シェフィムはこくりと頷いた。

 自然に漂う魔星は様々なものに影響しやすい。呑まれた結果、何が起きるのか。それは神聖になる前に習う事。


「……あれが原因? 魔物が出てくるまで待つしかないのかな」


「……魔星の汚染から身を守る方法なんて限られている。気休め程度に回復魔法をかけているけど、ボクたちには」


 ただ待っている事しかできない。シェフィムはぎゅっと拳を握って漂う光を見つめている。

 現状でも、村人は眠って目を覚さない。放っておけば、魔物が現れる前にもっと酷い事態になるだろう。


 こんな時にエレシェフィールがいれば、魔星の姫がいれば、被害を抑えられるんだろう。


「……あっ⁉︎ あの子なら」


 シェフィムは魔法杖を収納魔法から取り出した。右手で魔法杖を握る。左手を胸に当てる。

 わずかな希望を求めて


 ——少しだけ力を借りるね。


 まだかけらが一つしかないからか、反応はほとんどない。だが、いいよと言っているかのようにわずかだがかけらから力が送られる。


「聖なる星の音よ、優しきこの音色で我らを包み込め」


 シェフィムは彼女の使う呪言を唱える。目には見えない、人の耳では聞き取る事すら叶わない。だが、美しい音色がこの村の人々を守ってくれるだろう。これ以上魔星の影響を受けないように。


 その結果にかけらもシェフィムの中で喜んでいるようだ。


「……人の心の澱みが具現化する事で魔物が生まれる。それに魔星が混ざる事で異常が起こる……あの子には見せたくないな」


 靄のような光が収縮している。収縮した光が魔物に変わる。

 この手の魔物は目の前にあるものを破壊するしか脳がない。魔物がシェフィム達に向かい炎を吐いた。シェフィムが氷魔法で壁を創り防ぐ。


「グォォォォォ! 」


 魔物が雄叫びを上げる。村人が起きていれば村中に響き渡り混乱を招いただろう。


「清らかな願いに生まれ変わる事を願うよ」


 シェフィムは浄化魔法を使う。魔物が白い光に包まれ浄化される。浄化される魔物にシェフィム達は祈りを捧げた。


「お疲れ様。神殿にはしばらく戻れないって伝えてあるから。寂しがり屋のシェフィはどんな時でも一緒にいたいって言いそうだから」


 シェフィムは笑顔で神官エルに飛びつこうとする。だが、神官エルが華麗に避けた。


「むぅ、避けないでよ」


「帰らないの? 」


「帰るよ」


 わざとらしくむすっとした顔を神官エルに見せる。数秒その表情を見せてから転移魔法を使った。



 古屋の中では相変わらず長い髪の少女がベッドで眠っている。今日も何事もなかったようだ。


「……かけら、ない方があの子のためなのかもしれない」


「そうかもしれないね。何も知らずにいた方がいいのかも。でも……これはあの子を守るためなんだ。それでも、全部あの子のためじゃないんだ。あの子の願いは違うから。それでも、僕のわがままに付き合って」


 シェフィムは眠っている少女の頭を撫でた。相変わらず眠っている少女の反応はない。

 だが、シェフィムの中にあるかけらは喜んでいるようだ。


「……エレ、僕は何度も本物を疑ったよ。今だって、それでいいのか迷ってる。でも、諦めきれないから、僕は僕のわがままを突き通すよ。君を巻き込み続けるよ。僕らは……僕は、君が望んだ結末を絶対に許さないから」


 その言葉は遠い場所にいる妹に向けた言葉。そして、近くにある存在に向けて。


 ぷにゃみにゃん


「……あっ……ほんとに送られてきた……相変わらず楽しそう……でも、このまま何もしなければいずれはこの笑顔も……」


 約束していた写真が送られてきた。隠し撮りは一枚もない。そして、写真の三人は楽しそうに笑っていた。二、三枚ゼーシェリオンの呆れた顔や、なぜか慌てている姿があったが、それも三人らしい姿だ。

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