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多世界転生物語〜偽りの姫の居場所〜  作者: 碧猫
1章 エレ編 偽りの愛姫エレシェフィール
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エピローグ フォルの想い


 風呂上がり、自分では絶対にしないから僕がエレの髪を乾かす。部屋に戻ってベッドの上二人で一緒に座る。リプセグに書かれた言葉。エレはかなり気になっているみたいで、ずっと考えている。

 悩みながらも、僕にべったりとくっついている。でも、エレはエレみたい。悩み疲れたら本能に従って寝た。

 僕にくっついたまま。


 そんなに離れたくないんだ。


 僕はギュリエンの後から書いている日記を収納魔法から取り出した。

 あの後からずっと、誰にも言えない事を書いた日記を。


 この日記を書くのはこれで最後にするよ。あの頃から離れるために。


【ギュリエンが滅んでから何日経ったんだろう。あの時の記憶は曖昧だけど、ちゃんと覚えている。あの日々はもうなくなったんだという事も理解している。

 自分がしてしまった事も、ちゃんと理解してるんだ。

 ギュリエンが滅んだのは他でもない僕のせいなんだって。


 なのに、みんなは僕を責めなかった。慰めるだけ。

「仕方なかった」「フォルのせいじゃない」「あまり思い詰めないで」

 何度も、何度も聞いた言葉。それが全て僕を想っているからだと知ってる。でも、それで救われるはずないんだ。

 あの子の言葉だけは、違ったか。

「あれは、一番取ってはならない行動だった。最悪を選んだ」


 その通りだと思うよ。発端は僕の選択ミスから始まったんだ。そもそも、僕が出る必要のない最前線へでなかれば良かった。指示だけしておけば良かった。


 そうする事もできたんだから。あの子らは知らないだろうけど。それをしなかったのは他でもない僕自身。


 あれからギュリエンから逃れられたみんなはどうしているんだろうか。転生したみんなはどうしているんだろうか。また怯えて暮らしているんだろうか。諦めて、連中に従う道を選んでいるんだろうか。

 主様や本家の人達が新しい居場所を与えてくれているんだろうか。


 僕は何も知らない。知る権利のあるなしならあるとは思う。むしろ、責任を取るというなら知っておくべきなんだ。でも、それができなかった。


 それからずっと時間は止まっていたんだ。それを周りに悟られないようにしながら過ごしてきた。でも、ずっとは続かなかった。

 主様が対応してくれたから何もなかったけど、あの日の話が噂程度で出回り始めた。


 その後、あの連中が僕に御巫候補の処分を命じてきた。相手はエレとゼロ。僕が選んだ御巫。連中は尻拭いだとか言っていたけど、そんなのはただの言い訳だろう。何か別の狙いがあるはずだ。

 正式な御巫に選ばれそうな候補の失踪が相次いでいる。それと関係あるんだろうからって、初めは引き受けたんだ。


 それが変わったのは、前々回。僕は仕事の関係でしばらくエレとゼロとは離れていた。


 帰ってきたのは全てが終わった後。

 精神系統の魔法にかかったエレをゼロが止めたんだ。文字通り命がけで。僕はそれを後から知った。


 愛らしい桃色の部屋に置かれた魔法具。音声を記録しておくもの。


「ずっと一緒なの」


 ただ一言。エレの声。せめて次の転生先は幸せな場所で。そんな願いは世界には届かないだろう。


 その事があって、僕は久々に管理者の箱庭の書庫に籠った。天井を見ようとすると首が痛くなるような高さ。というか見えるか怪しい。円形の壁にぎっしりと詰められた本。

 何日も籠った甲斐はあった。

 奇跡の魔法の記述。これがあれば、エレを世界から解放できるかもしれない。彼に会えるかもしれない。主様やイールグの御巫候補も救う事ができるかもしれない。あの二人が選んだ子も報われない運命にあるから。主様の方は消息不明。イールグの方は、聖星の方が眠ったまま。


 問題は発動条件。これはかけに近い。それでも、あの二人ならきっと成功させる。僕らはずっとそうやってきたんだ。なんの根拠もないのに互いを信じてきたんだ。


 必要なのは絶望転じる希望。方法は簡単だ。


 僕はジュンドの森に二人を呼び出した。裏切りという絶望と、その真意を気づかせる希望。

 おんなじ願いを持たせる。そこだけは難点だけど、僕らなら余裕だ。

 助けたい。それが僕らの願いだ。


 奇跡の魔法は成功した。でも、その効果がどれだけのものなのかはわからない。今回は夢空間。そこでの記憶は何も持たず、僕ら全員が目覚めた時に奇跡という希望を与えるだけだから。


 夢空間から目覚めた時は転生に近い現象が起こっていた。ゼロは十歳の時記憶が戻って自分からエクリシェへ来た。エレは記憶が戻らず、リブインの王城で監禁。


 気づいた時には十六歳になっていた。エレを迎えに行った。全てを諦めたエレを見て、僕は無意識に抱きしめていた。

 何するにしても先に発作をどうにかしないといけなかったのに。


 婚約発表でエレはかなり働いてくれた。相変わらずエレは期待以上の働きをするのに、予想外の失態を犯す。魔力による影響は一番考えるべき事の気がするんだけど。そんなとこもあの子らしい。

 僕は、エレに何を期待してるんだろ。エレは彼を呼び出すための鍵だから自分の足であそこへ来させたいだけなのに。


 今日で止まったままの時間を生きるのを終わりにする。もう僕はこの日記の時に戻らないよ。前に進むから、見ていて。

 でも、最後に少しだけその後を書いていいかな。もし、この日記に書かれた想いがみんなに、君に届いたなら、最後は幸せで締めないと。


 エレは、まだ自分が偽物っていうんだ。でも、僕のって部分は否定しなかった。

 あの子が気づくまで隠しておくつもりだけど、エレには確実にあれがあるんだよね? 君は知ってる? もしかして、知っていて、あの子の願いを叶えようとしてるわけないから、あの子を救おうとしてる? また一緒にいられるようにしてくれているの?


 ねぇ、君がいないと寂しいよ。僕もエレも、ゼロも。きっと他のみんなも。でもね、エレは君がいない環境でいっぱい成長してるんだ。

 それとありがと。守ってくれて。大好きだよ、シェフィム】


 誰にも知られる事なんてない。わかっていても、奇跡を信じようとしてしまうんだ。

 書き終わった日記は机の上に置く。


 ブーブー


 連絡魔法具からの着信。僕の双子の兄から。


「フィル? どうしたの? 」


『……大丈夫? なんか、弟と義妹が泣いていそうで』


 繋がりって、ほんとに信じられない奇跡を生むよ。ていうか、まだ結婚してないんだけど?


「大丈夫だよ。もう……迷いはまだ少しあるかもしれない。すぐに受け入れて前を向くなんて無理な話だ。でもね、前を向こうって思えるようになれたんだ。ちゃんと、今を見ようと思うようになれたんだ。だから、もう大丈夫。心配してくれてありがと、フィル」


『弟を心配するのも信じるのも当然。だから、いつでも甘えて……でも、今日は遅いから、ちゃんと寝て。おやすみ』


「自分だって……って切れてる」


 自分だって、魔法具作りに熱中していつも徹夜してんのに。


 まぁ、今日は寝るか。他ならない優しいにぃ様の頼みだから。


【ごめん。大変な時にそばにいてあげられなくて。止めてあげられなくて。そばにいて支えてあげられなくて。ごめん。

 

 誰にも頼れず、一人でがんばったね。ずっと泣きたかったのに泣かなかったんだね。僕がそばにいれば君と一緒に泣いてあげられたのに。

 

 エレを信じてくれてありがと。エレの言葉を聞いてくれてありがと。

 

 離れていてもずっとみんなを想ってる。神聖はみんな繋がっているよ。僕はエレだけじゃない。君の事だって大事だよ。みんな大事だ。それに、フォル、僕も君の事だいすきだよ。だから早く僕の義弟になってね? 他の女の子選んだら君とエレの目の前で泣いてやるから♡ 】

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