7話 危険な賭け
そういう事? フォルは何か気づいたんだろうか。
握られる拳が、その気づきがいいか悪いかを物語る。
「……僕らの動きは全部、予想通りという事か」
「それなら……みんなは」
その答えを知っているからだろう。聞きながら俯くエレ。僕らも、大丈夫とは言えそうにない。
「助けられない、だろうね。というか、もう助けようと思うのはやめる事にするよ」
「ふぇ⁉︎ 」
声を出したのはエレだけ。でも、その言葉に反応したのは、僕ら全員。
助けるために動いているのに、今更見捨てられるわけない。そう思ったのは、僕だけじゃないはず。だけど、誰も反論はせずに、黙ってフォルの話を聞く。
「あの連中は、情報しかないんだ。心を理解していない。それは、君らも感じているはずだ」
「うん。でも、それと助けないのは」
「助けないんじゃないよ。助ける事だけを考えて行動するのをやめるんだ。あの連中の情報には、僕らはなんとしてでも人と世界と星を助けようとする。そう記録されているはずだ」
真面目に話しているフォルの言葉。浮かんできたのは、あの時の言葉。黒い聖星宮殿で、イシュ達が言われた事だ。
その情報には一度も感情が載っていない。ただ、こういった事があればこうなるはずだ。僕らの感情は、全て連中の情報から作られている。それはきっと、思考もおんなじ。
そこに気づいたからといって、そこまで大胆にできるのは、フォルだから。
星の生命。その役割を知ったあとからなんだろうか。ゼロを助けに行った時といい、思い切りが良すぎるよ。まるで、以前のフォルに戻ったような……
以前?
以前ていつ? 僕は、冷静で慎重な姿は見ているけど、こんな姿を見た事ないはず……
「それでも、助けられる可能性は低い。ないといってもいいくらいだ。それでも、協力してくれるかな? 」
「エレはいいよ。フォルの恋人なんだから……ほんの少しの間だけど」
「私も、協力する。可能性は、助けようとするのも変わらないと思うから」
姫達が協力するという以上、僕らに拒否権なんて存在しない。
フォルは「ありがと。」とお礼を言うと、考えを話してくれる。
「できるかはわからないよ。勝負は一度だけ。魔星を鎮める瞬間。結界を使わずに、その力をこの世界にぶつける」
それは世界が滅ぶんじゃないのかな。って、普通は思うよね。僕らには、それだけの力があるから。
だから、これは僕らが絶対にとらない方法。それだけは間違いない。そして、絶対にあの邪悪な種族は考えない事。
「ただし、ぶつけるのは空中。地上には絶対にぶつけないよ。じゃないとほんとに滅ぶから」
「できるの? 」
「うん。こっちの方が火力的には高い。いけるはずだよ。難しいのは、アディの術の影響だけを残す。そこだけかな。理論上は可能。さっきとおんなじでね。ただし、こっちは、全ての条件が重なった時だけだ」
不可能に近いかな。でも、どちらにせよ守れないなら、足掻く方を選ぶ。そんな感じなんだろう。
エレは魔法学の事になるからかな。ある程度理解できているみたい。
だからこそ、この言葉もでたんだろう
「それでも、問題点はあるはずだよ。まず、こっちの方が強い術師ばかり。バランスの調整ができないかもしれない。それに、できたとしても、アディの術の影響だけ残すのは、現実的じゃない。いくら理論上はできても」
「うん。そうだね。だからこそだよ。そんな、できそうな事ばかりだと、連中の予測範囲を越えられない。なら、絶対にあり得ないだろうと思われる事を、成功させて見せないと」
そのために、とんでもない技術を要求してきているよ。
「リスクを考えて、賛同できないなら、協力しなくていいよ。姫の意思は無視して、自分達で決めて」
失敗すれば、僕らは一つの世界を滅ぼす事になる。フォルは、それを僕らに背負わせたくないんだろう。
僕の答えは、もう決まっている。
「オレは協力する」
誰よりも早く、ギューが答える。迷う時間なんてなく。
「いいの? 説明聞いてたでしょ? ……正直、君は必須で考えてたから……助かりはするけど」
「聞く必要ねぇだろ。オレはフォルを信じるって決めてっからな」
「こんな無茶振りでもか」
「無茶振り、だからだろ。一緒に背負ってやる奴いねぇと、だろ? 」
こんな時に、その笑顔とか反則でしょ。でも、言っている事はそうなんだよね。誰も、フォル一人に背負わせる気なんてないんだよ。
「……ありがと。他のみんなは? 」
「僕も協力する」
「ぼくも」
「俺も」
やっぱり、みんな協力を選んだ。それ以外の選択肢なんてないんだよ。
姫達は、考えを変える気なんてなさそう。
笑顔を作るフォルに、エレが抱きついている。きっと、フォルの笑顔はエレ吸引効果があるんだと思うんだ。
「もう一つだけ言っておかないと。成功しても、救えるとは限らないんだ。これは、世界を守るための方法。人がどうなるのかは……何も言えない」
「それでも、可能性が一番高いはずなの。成功さえすれば。と言うわけで、グリちゃん、お願い」
そろそろ、外の方も準備が整っている頃合いか。
遠くの場所でゼロが抱いていると思われるグリちゃん。エレの呼びかけに応じてくれる。
エレにだけ見えるゼロの幻覚じゃなくて、僕らにも見えるゼロ達の幻覚。幻覚というのは、少し語弊がありそうなんだけどね。実際は、遠くの景色を映すとか、その人の内情を映すとかの効果だと思ったから。
だからなのかな。ゼロが「キシャァーーーー! 」しているのは。
連絡が遅かったのは謝るけど、こっちだって色々とする事があったんだよと言ってやりたい。
「みんな、頼みたい事あるの。あのね」
エレがフォルに言われた事を話す。イシュが補填をする。
ゼロ達への説明を終えると、早速始める。
合図はエレとゼロ。こっちと外の中で一番息が合うから。普段喧嘩ばっかりなのにほんとに不思議だよ。
「ゼロ、いい? 」
『キシャァーーーー! 』
威嚇。また威嚇した。エレはもういつもの事だと全く気にしていない。
エレとイシュは、その重みを知っている。だから、なんだろう。魔法杖を握る両手が震えている。誰だって、そうだよね。
僕らだっておんなじだ。表に出すか出さないかの違い。経験値もあるのかな。
何度も、世界の最後に立ち会った。守れなかった。でも、今度は守りたい。
空に願うのは……
「ヴィー……全員おんなじだ」
「……」
ヴィー……そっか。それはそうだよね。あんな失敗をした上で、次はできるとは簡単にならないか。あの子は、元々かなりの天才気質を持ってたから。
僕らが何か言うよりも、ギューの言葉の方がヴィーはいいんだろう。
これだけは、見守るしかない。
「……ギューが、何でもそつなくこなせるからそう言えるんだ」
「なわけねぇだろ。むしろ、オレはヴィーと違って、なんもなかったんだ。じゃなかったら、あんな方法とろうなんざ考えねぇ」
「……」
「あんな仕事してっからな。少しでも、自分が負けるなんて考えっと、迷いを見せっと、相手はそれに漬け込む。それを知ってるだけだ。そんでも、迷う時は迷うんだがな」
ギューは、ほんとに僕らに似ているよ。わかってる。
僕らだって、こんな大業を成せるなんて思ってない。言い出しっぺのフォルですらね。
協力すると言ったエレとイシュも、二人で握る魔法杖。その温もりでどうにか前を向こうとしているんだろう。グリちゃんの能力越しに映る、ゼロ達も。
「そういう時は、自分の能力じゃねぇ、可能性を信じるようにしてんだ。それで、むりやり前を、敵を見んだ」
「……」
「ヴィー、エレだって、怖いよ。失敗したらって思う。何度も失敗しているから、またって思うよ。でもね、そうしないとなら、そうするだけ。後の事も、前の事も、何も考えないの」
ほんと、この子は強すぎるよ。自己評価が低いだけで。
こんな時でも、エレは笑顔を見せる。
「それにね、エレはきれいで美しいお花だから、ゼロにえっへんってしてやれる実績つくんないと」
冗談っぽく言っているけど、半分は本心だろうね。
『キシャァーーーー! そんなちょっとした失敗いつもなんだ! 実験には失敗つきものなんだ! 俺はいまだに、雨凍らせたら濡れない信じてんだからな! 』
それはそろそろ諦めてください。後で毎回泣かれてめんどくさいから。
「……ゼロのとんでも行動と比べたら本当に、かわいいの」
「だな……済まない、時間を取らせて。もう、大丈夫だ……ギューも、何も知らずに」
「気にしてねぇよ。何も話してねぇこっちが悪りぃんだ」
話す気は、なさそうだけどね。まぁ、何はともあれヴィーも動けそうだ。
「ゼロ。いつもの」
『キシャァーーーー! 』
それ合図なの!? 聞いてない。なんて、言わずに、全員何故かその合図で同時撃ち。




