③
時刻は二十三時半。
この町ではこの時間になれば人通りはほぼゼロと言っていい。人がいないと言うことは音がないと言うことだ。闇の帳と一緒に静寂が幕のように町に落ちているような錯覚に陥る。
そんなここで夜に家から出ている人間は必要にかられてか、何かヤバイことをしているかの二択だろう。
そんな夜の町を晃はのんびりと歩いていた。
一応、理由はあるにはあったが人に言えるようなものではない。要するに何が言いたいかと言うと、
「だからね? 何でこんな時間に外にいるの? その理由を言ってくれないと帰せないんだけどな」
めんどくせぇ。
今何をしているかと言うと青い制服に身を包んだナイスなメンから職務質問をされていた。目の前にいるポリスメンの晃を見る目は完全に家出してきた学生を見る目だった。
なぜこんなことになったのか。
そのことで一番最初にあげられるのは晃の格好だろう。こんな夜も深い時間に学生服で外を歩いている人間がいたら、そりゃあ職質もしたくなるだろう。
晃がなぜ制服を着ているかと言うと、特にこれと言って理由はない。
あのあと家に帰って、寝て、起きて、夕食をとったあとに外に出てきた次第だ。着替えてはいるのだが、着替えたのも制服ではなんの意味もないだろう。
・・・・・・この状況を改めて振り返ってみたら笑いが込み上げてきた。だが、このタイミングで笑いだしたら確実に交番まで任意同行と言う名の強制連行されてしまう。それは不味いから笑いだすのは堪えよう。
まぁ、そんなことよりも今重要なのは目の前にいるこのポリスメンの対処だろう。説明しないと解放してくれそうにもない。
ぶっちゃけ、晃がちょっとあるところに連絡を入れれば解決するのだが、それをしてしまうと後々面倒になる。具体的に言うと反省文に似たものを書かなくてはいけなくなる。そんなものを書くぐらいだったら自分の力で何とかする。
「え〜っと、ですね〜・・・・・・」
と思いつつもなんの言い訳も出てこない。それはもう面白いぐらいに。普段の2.5倍ぐらいは頭を使っている気がする。
頭を使った結果、達した結論。
こいつ殺しちゃえば楽じゃね?
・・・・・・いやいやいやいやいやいや。それはダメだろう。ちょっと落ち着こう。深呼吸深呼吸。スーハースーハー。・・・・・・ふぅ、落ち着いたのはいいが解決策はいっこうに浮かばない。
寧ろ、落ち着くために唐突に深呼吸をしたせいでポリスメンから向けられる視線がちょっと変わった気がする。具体的には家出少年を見る困ったような視線からヤバイやつを見る目に。
そのせいかポリスメンが無線に手をかけたように見える。
・・・・・・もうめんどくせぇなぁ。応援呼ばれんのも面倒だし。殺すとはいかないまでもちょっと寝ててもらうか。
そう思って腕をポリスメンにばれない程度に少し引く。
その腕を振ろうとした瞬間、晃の体を何かが吹き抜けた。
その何かが来た方向に目をやると、一瞬前まではいなかった人影がある。
「ん? そこに誰かいるのか?」
晃が視線を向けたせいでポリスメンが気づいてしまう。
これはマズイね。
だが、ポリスメンが晃の視線を追って晃から視線をそらしてくれたお陰でポリスメンに隙ができる。その隙を見逃すほど晃はバカではない。
晃はポリスメンの首の後ろに手を持ってくる。その手から一瞬だけ閃光が漏れる。それがポリスメンの首に当たっただけでポリスメンは膝から崩れ落ちてしまった。




