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「今日は一晩平和でありますよーにっと。って俺が神に祈るなんて滑稽か」

「そうですよ」

「なら、なんに祈れば良いと思う?」

「ん〜、悪魔?」

「対価求められそうで嫌だなぁ。平和の代わりにお前の魂をいただこう! とかね。俺は自分の魂を差し出すぐらいなら平和なんていらん」

「利己的ですね」

夜も更けた時間。心許ない街灯の弱い明かりだけが照らす道を晃と梅は歩いていた。

二人の服装は昨日とほぼ同じで、晃が着崩したブレザー、梅がパーカーのフードを深くかぶっていた。

まだ集中する必要がないからか、晃の顔に鬼の面はつけられていなかった。

夜更けの町を男女二人で歩く。

この状況だけで件の警官に見つかったら職質からの任意(強制)同行がまってそうだ。

「あのさ」

「はい、何ですか?」

「この状況ってさ・・・・・・」

そう言いながら道を左に曲がる。すると視界に見慣れた、けして見慣れたくなかった紺色の制服が目に飛び込んできた。

「おい、そこの二人。こんな時間に二人で何をやっているんだ? ちょっと話聞きたいからそこを動かないように」

ちょっと考えたのが完全にフラグだったらしい。はぁ、何で俺はあそこでこんなフラグを建てたんや。超めんどくせぇ。

しかも、声を聞く限りではまた同じ警官に会ってしまったらしい。不思議な縁のある警官だこと。その縁は全くもって嬉しくはないんだが。今日はどう対処しようかな。

頭の中で今日の逃走パターンをいくつも考えるだが、思考がうまくまとまらない。どうしても思考が危ない方向に進んでしまうせいでまともな案が浮かばない。やはり面をつけなきゃダメかな?

そんなことを考えていると左腕の袖がキュッと退かれた。

声でバレるといけないので声は出さなかったが平時なら確実に間抜けな声を出してしまっていただろう。左腕の袖辺りに目をやると梅が震えながら晃の制服の袖をつかんでいた。震えるほどには昨日の逃走劇は恐怖だったのだろう。

そう考えている間にも警官との距離は近づいている。・・・・・・はぁ、見つかったら連行確定かな。

晃は腰に手を伸ばし、鬼の面を手に取る。その面を顔につける。

思考が急激に冷えていく。今までは火照った攻撃的な思考しかできていなかったが、頭が端まで冷えて、戦闘時の頭に切り替わる。

その冷えた頭で逃走方法を思考する。その思考の過程ででた結論としてはいつも通りが一番と言うことになった。

「梅、顔見られないようにしとけ。あと動くなよ。そして言葉も発するな」

梅に耳打ちをする。梅は晃の吐息が耳にかかったらしく体を少し震わせる。だが、それに構っている暇はない。

晃は身を低くすると警官の後ろに回った。

「あれ? お前どこかで見たことある気が・・・・・・」

警官が手に持っていた懐中電灯のスイッチをいれ、梅を照らし出す。そして、梅の姿を見て首を捻る。

「ん? もう一人いた気がするんだが・・・・・・」

「グッドナイト」

「は?」

首を捻る警官に後ろから声をかけ、こちらを振り返る前に閃光を当てて気絶させる。いつも通りそれだけで警官は倒れてしまう。

いつも通りで楽と言えば楽なのだが呆気なさに拍子抜けする。二日連続で意識を飛ばされて寝かされたのに警戒しないなんてこいつは馬鹿か? 警官の呆気なさに違和感を覚えながらも意識を切り替える。もうこいつはどうでもいい。

「顔、見られてないな?」

面を外しつつ梅に声をかけるが梅は答えない。

「梅?」

梅の顔を覗き込むと梅は両手で口を塞いで喋らないようにしていた。それどころか息もしないようにしているのか顔色が悪くなってきている。

「喋って良いぞ。あと黙れとは言ったが息するなとは言ってないぞ、俺は」

「プハッ。はーはー。顔は見られてないと思います」

「そうか、なら良いんだ。とりあえず移動するか。浅く当てたからいつ目が覚めてもおかしくない」

「そうですね。そうしましょう」

二人が歩き出そうとしたとき晃のポケットから軽快な音楽が流れ出した。

「ちょっと失礼。・・・・・・ゲッ! ま、いいか」

晃は通知を見て明らかに嫌そうな顔をしたあと、電話に出る。

「はい、俺です。・・・・・・は? 今から? 馬鹿じゃねぇの? 定期連絡だってちゃんとしてんだろうが。なんの文句があるってんだ。・・・・・・ちっ、わかったよ。行きゃ良いんだろ。・・・・・・はいはい、すぐに」

晃は電話を切るとめんどくさそうな顔をした。さっき警官に見つかりそうになったときですらここまでの顔はしていなかった。

「すまん、急用ができた。また明日部活でな」

「あ、はい。さようなら」

晃は用ができたことを告げると返事も聞かずに駆け出していってしまった。

梅はその背中を見送ったあと、またフラフラと夜の町を歩き出した。


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