表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装メイドは冷酷公爵の執着から逃げられない。女の子として育てられた身代わり僕娘、正体を暴かれ夜に咲く花となる   作者: 雨音 美月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

第六話 【絶望】実家から届いた「不備品の処分」命令。借金の形に売られた僕

 

 翌朝、旦那様は何事もなかったように書類へ目を通していた。


バレたのに。

僕が男だって知ったのに。

何も言わない。


それが怖いような、でも少し安心するような、不思議な感覚だった。


旦那様が王都へ発った日、僕は書庫の整理をしていた。

その時、本の間から一枚の羊皮紙が落ちる。


差出人は、ヴェルナ男爵。

――父上だった。


宛先は、セヴェラン公爵。


見てはいけない。

そう思ったのに、指が勝手に紙を開いていた。


『献上せし「商品(花)」は完璧な仕上がりにて候。借財の帳消しを条件に、貴殿の自由になされたき。不備あらば、即刻処分に処すべし』


最後に添えられていたのは、乾いた薔薇の押し花。


商品。

処分。

借財。


「……は」


乾いた声が漏れる。


商品だったんだ。最初から。


愛されていたわけじゃない。

売るために、完璧な商品として育てられただけ。


そしてセヴェラン様は、それを借金の形として受け取った。


名前を呼んだのも。

頬に触れたのも。


全部、道具の管理だったんだ。


「……あ、あぁ……っ!」


気づけば走っていた。

雨の中を、裏門へ向かって。


「どこへ行く、ラナ」


背後から声が落ちてくる。


振り返る。

旦那様がいた。王都から戻るには、早すぎる時間だった。


「……知っていたんですね! 僕が商品だって、借金の形だって!」


「……」


「男だって知って、笑ってたんですか! 珍しい玩具を手に入れたって!」


「……玩具か」


彼がゆっくり近づいてくる。

逃げ場を塞ぐように、壁際へ追い詰められた。


「取引があったのは本当だ。商品として受け取ったのも事実だ」


「だったら――」


「だが」


次の瞬間、強く抱きしめられる。

冷たい雨の中で、痛いくらいに。


「お前を処分などさせない」


低い声が、耳元で響いた。


「お前は私のものだ。誰にも渡さない。……お前が、お前だからだ。それ以上の理由は要らない」


「……なんで」


涙が零れた。


声を殺しながら、彼の胸の中で泣く。


好きなのに苦しい。

苦しいのに、この腕から離れたくない。


――最悪だ。


完全に、詰んでる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ