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異世界転生。同居人は私を殺した魔女でした  作者: ロイ
第1章~誰のために
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1章ー24 最後の世界その3


 一部始終を見守ることしか出来ないアカツキ。何度もヘレの姿をしたエレナに声をかけるが、声はアカツキの周囲を反響しエレナには届かない。まるでフワフワと浮かぶシャボンの中に閉じ込められているよう。



 せめて自分の手で安らかにと、エレナはディアボルトの首を刈ろうと大剣を手にするが。

 カレナを媒体とし、魔人となったディアボルトはいくら切りつけようとも、黒狼の首をまだ片手に持ったまま。その場から動かず傷一つ付けることが出来ない。


 「このままここに放置するわけにもいかない、せめてカレナの魔力があれば……」


 エレナはカレナの立ち去った後に目をやると、湾曲した鋭利な刃が視界に入る。まだ魔力の残ったカレナの大鎌、それを手に取り切れ味を確かめるように空を裂く。

 エレナは魔力を刃先に込め再度大鎌を振ると、刃先が空を切り裂いた跡には空間が割れ、数多の輝きを放つ闇を作り出す。エレナはその異様な光景に驚きを見せるが、直ぐさま安堵の表情浮かべ。


 「これなら……安らかに……ディアボルト」


 ディアボルトの首を撥ねようと大きく振りかぶり、ありったけの魔力を込めるエレナ。過剰に注がれた魔力は辺りを覆う。


 「どうして?」


 エレナの思う範疇を超え、その光景は信じられず眉間に皺を寄せる。黒狼、ディアボルトの手に落ちた黒狼の首がエレナの放った刃を受け止める。

 黒狼はエレナごと後方に放り投げ、ディアボルトの身体を呑みだす。しっかりと上下の顎で、頭の先から耳障りの悪い、骨に響く音を立てなながら。


 噛み砕く、自分を殺した者への執念か、それともエレナに殺させたく無かったのか、真意は分からず黒狼は屠るのを辞め、赤い瞳でエレナを敵意丸出しで睨みつける。

 黒狼もまたカレナの魔力に浸食され、揺らめく黒い影へと変貌する。ディアボルトの半身と同じ流れるような肉体。この状況を整理しようと思考をこらす。


「そう、諦めて逃げた訳じゃ無かったのね」


 何もかも奪っていくカレナは、エレナと対峙した時から全て奪い去るつもりでいたようだ。

 カレナの真の目的は元の世界に戻ることでは無く、エレナから全てを奪う。そして何度も後悔し、何度も生まれ変わる。その度に奈落に突き落とす、永遠に2人の魔女が和解することは無い。


 エレナは腹をくくり、これまで平穏に静かに暮らしたい、何者とも争わず普通に暮らしたかった、その信念をここで拭い捨てる。


 敵は身内にいた、切っても切れない縁。歯を食いしばり血液が全て脳に集まるかのような圧迫感、肩は震え憤怒の津波、抑えきれない感情。

 邪魔者は迷わず消す、エレナに立ちはだかる障害は蚤のように小さいな障害であろうと消すと、今まで押さえつけていた感情は魔力と共に爆発し再度エレナに収束し大地が揺れる。


「許さない……」


 静かに一線、エレナの一言と共に、黒狼の出来上がった肉体を裂く。

 前足と後ろ足は重なるように地面でもがき、暫くすると呆気なく絶命する。切断面はまだエレナの魔力を帯び、煌めく闇を漂わせ、黒狼の肉片を吸い込んでは地に吐き出し、次第に肉片は霧へと変わり不安定な型を形成する。


 エレナは次々と自分の範疇を起こる出来事に、頭を抱えるが霧は止まらず人を象るようにに集まっていく。


 そのゆらゆらとし人型は時間をかけ、霧から影となり凝縮していき、頭部から徐々に肉体が出来上がる。黒ずんではいるがしっかりとした全身を作り上げると、どう見ても(アカツキ)である。

 その手には真反対の色をしたシャカシャカとした袋、緑の文字で文字のようなものが記載されてある。


 【Funny Mart】


 エレナには読むことが出来ず、袋の中身は、溶けて飛び出したアイス、お菓子のふくろ、四角い容器に入った液体のような白いドロドロした物、ある程度はエレナにも理解できる。


 エレナは不思議なアカツキの肉体を調べようと近づくと、骨が体内で震えるような無数の鈍い音。黒い影と共にエレナの周囲を囲む、エレナは身体を蝕む音に耐えきれず、顔をしかめる。


 影から発せられているであろう音を断つため、エレナは周囲空間を凍結させ、ぽろぽろと落ちる無数の小さな欠片。

 欠片の中にはポツリと足に毛が生え、頭部は赤いレンズの集合した丸い目が二つ、それは死臭に群がる蠅。


 「何が起こっているの? 私の理解を超え過ぎるているわ」


 地面に横たわりぐったりとしたアカツキに白狼が弱々しく寄り添う。既に黒い影はなく血色の良い血の通った普通の少年姿。エレナは全貌を現したアカツキに、父を投影させたディアボルトとは違う、温度のある懐かしさを感じ、少年の頬に触れ。


 「この子は私のもの、誰にも渡さない、永遠にそばに置いておく」


 エレナは瞳孔の開ききった瞳でアカツキを、アカツキを露出した背に背負う、血流の温もりを感じ、残された白狼は魔力を使い果たし獣の未熟児のよう、エレナは白狼も抱え明かりのつく村へと向かい消えていく。


「これが俺の、この世界での始まり。初めて目覚めた記憶は俺の物であって俺の物じゃない、整理するのに時間がかかりそうだ」




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