1章-19 突っ込む世界
窓の隙間から月の明かりに照らされ、応接間に2人は向かう、長い廊下を無言で、初めてデートをする少年少女の、淡い空気をも漂わせ、その沈黙をあかつきが破る。
「ヘレさん、ありがと、こんな俺でも長い間面倒見てくれて」
「いいんですよ、私にはアカツキを護る義務がありますから、今はいくらでも甘えて下さい」
この3年間、ヘレはいつも優しく、アカツキに厳しくすることはなかった、それは今も変わらない、これからも変わらないだろう
。 アカツキはヘレの少し後ろを歩きながら、水風船のように膨らみ今にも破裂し四散しそうな心を落ち着かせ、深呼吸を2回。
「アカ……ツキ」
背後から暖かい風が吹き、ヘレは俯き目を閉じる、両肩から首の辺りをそっと回すアカツキの腕はとても暖かく、優しく伝わる鼓動はとてもはやく。
「ヘレさん……」
「おいエロツキ、幼女に猫娘に人妻にお姉さんか?盛んなのれす! 遅いのれす、もうみんな待ちくたびれてるのれす、いい加減にするのれす」
このタイミングで現れたルルゥに食い掛かろうと身構えたアカツキだが、呆けていた顔から一転シリアスフェイスのルルゥ。
アカツキの温もりを感じたヘレの瞼の隙間から、こぼれ落ちる水滴、それは床の絨毯に触れるまでの間、薄く膜を張ったよように凍結して転がっていく。
応接室の中にはライドウ、ゴルド、アンコ、4人程寝れそうなベッドの上に王。
「エロツキ遅かったな、なんか明るいなお前」
「アンコ、今は黙っててね」
間髪入れず感情も無く冷徹にアンコに釘を打つ、物理的にも釘を刺す。
それぞれが椅子に腰掛け、小さいが切り出す。
「皆様、集まって頂きありがとう御座います。いきなりではありますが結論から申し上げますと……」
えらく足早に話を進めるホビット、自己紹介もまだなのに誰が何してる人か全くわからない、これからのアカツキの立場上、最低でも何してる人かは分かっておきたいが。
「この国は無くなるでしょう」
「本当なのれすか?平和なのれす」
ベッドで横になっていた王は起き上がり、皆が集まるテーブルまで足を運び椅子に腰掛ける。
「まずは城内で起こっとる事じゃな、これは皆も知っておろう、内密にな」
「その病の原因がほぼ判明したんじゃ、それは魔女の拘束が解けかけておる、拘束術をかけた者か始祖の魔女にしか絶対解けんはずじゃ」
「しかし拘束術をかけた者はもうこの世にはおらん、そうなると……とけかけた封印をさらに上から別の封印で閉じ込める事じゃ」
「僕達の出番だね」
「そうですね、アンコ、私達の出番ですね」
想定外のライドウの声に意気消沈のアカツキ。
アカツキの出番は無く、完全に置いてきぼり、話の流れにも全くついて行けない、無人島で録音したラジオを延々と聞き虚しく突っ込んでいる気分だが、王は話を続ける。
「それとヘレ、久しぶりですね学院卒業以来ですか、貴女にだけ頼みたい事があるのじゃがいいかのう?」




