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異世界転生。同居人は私を殺した魔女でした  作者: ロイ
第1章~誰のために
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1章-18 3つの世界


 この国は4つの権門勢家が城を囲むように出来ている。東西南北でそれぞれの役割を果たす。

 北はベンドル家、商業を生業とし、国内のマーケットを管理する。

 南は主に医療術や魔術、学問、歴史と幅広い分野の研究を目的とした、アザー家。

 東は武術に長け、言うなればこの国の矛と盾の役割をするサジ家。

 そしてゴルド家、これと言って何かを専門というわけでは無く、各勢家の本家のような立ち位置。時には剣を持ち、時には筆を執り、またある時には人々を癒やすといったところ。


 「さぁ到着しました、今日は疲れたでしょう、もう少しで屋敷です、ゆっくりしていってください」

 

 ゴルドは馬車を大きな門の前に止め、手綱を放しご苦労、と威厳ある態度で執事に席を変わり、コーチのドアを開けアカツキを出迎える。

 馬車から降りようとするアカツキの体には、ラルゥは癒着してはおらずアカツキ一人、ここに来るまでに、ルルゥ一行はまた身を隠してしまい。ラルゥが気持ちよく寝息をかいている間、ルルゥが無理やりはぎ取ってしまった。

 そのせいでアカツキの胸は、力いっぱい引掻いた線が数本生々しく残り、左手でさすりながら邸のある地をふむ。


 昼間の、明るい時に目覚めた場所とは違い、白銀の城に勝るとも劣らない豪邸を目の当たりにし、昼間の牧草の香りと、狭いレンガでできた小さな家とは、どう似ても似つかない。

 いくら精神状態がアレだとはいえ、見間違えるはずもなく呆然とする。

 現実の世界ではお目にかかることもできそうにない、木製の立派な門がゆっくりと開き、屋敷の隠れていた部分が現れ、全貌が視界に入る。

 玄関にたどり着くには長い道のりがまだ続いており、ゴルドがここからは歩いていきましょうと、迷わず屋敷の敷地内を歩く。

 屋敷までの道のりには、アカツキの想像した銅像や手入れされた嗜好品が並び、あたりを見わたしながら、光沢のある石でできた幅の広い道、ゴルドに先導されながらついていく、これぞ豪邸といった風景。

 見慣れない風景に気を取られ、しばらく進むとゴルドは立ち止まり、アカツキはゴルドの屈強な体にぶつかる。


 「ようこそわが屋敷へ、みなさんもそろそろ到着するころです」


 ゴルドが5人ほど横に並んで入れそうなほどの扉、右側を開け邸内に足を踏み入ると、邸内は外観とは違い、特に目立ったものはない。思いのほかシンプルな内装、唯一屋敷らしいといえば、床に敷いてある真っ赤な絨毯と、大きな階段、そしてシャンデリアぐらいである。

 屋敷にしては意外と質素な内装、細かいもの一つ一つが丁寧に、精巧に作られていて上品な雰囲気。

 アカツキの興味がこちらに来るまでじっと待つ、耳のとがったスタイルのいいメイドが3人で出迎え、視線が合う。


「お待ちいたしておりました、ご案内します」


 肌も透き通るように白く、身長もアカツキと同じぐらい、ゴルメイドのこちらへと、案内する声がなければずっと見ていたかもしれない。

 すいませんと軽く会釈をし、後ろについていくアカツキ、メイドをまじまじと観察しつつ、案内されるがままに長い廊下を進む。無数の部屋を通り過ぎ、メイドが歩みをやめこちらに振り向く。


 「こちらで用意している格好に着替えてくださいとのことです。着替えが終るころに、またお迎えに上がりますので、お部屋でお待ちください」


 部屋に入ったアカツキは、等身をすべて映し出す大きな鏡と、クローゼット一面に揃えられた多様な衣類が、贅沢に並べられている。

 アカツキに用意されているのであろう、兵装が目の前には掛けられていた、その下には、プレートアーマーの中に着る下着、布が多重に重ねられた衣類のよう。

 それはシャツによく似た形状をしており、アカツキにでも、たやすく身に着けられそうである。

 これでいいのかと服を手に取り、そそくさと着替えメイドの迎えを待つ。


 数分ほどするとメイドが迎えに来たのか、足音が聞こえドアの前で止まる。


 「お迎えに上がりました、応接間で皆さんお集まりです、ご案内しますので、どうぞこちらへ」


 メイドの声がドア越しに聞こえ、アカツキの鼓動は一瞬とまり、すぐにバクバクと動き出す、膝に手をかけ、まだ慣れないゴルド家の兵装に身を包み立ち上がる。


 アカツキの1歩は、重心のしっかりと堂々とした1歩、始まりの1歩、これまでの情けない生活は、このドアを開けた時さらに速いスピードで変貌する。


 「ヘレさん、俺、一人でも生きていけるようゴルドさんの所で働くよ、だから見ててほしい少しでも強くなっていく俺を」


 扉に手をかけ、廊下に出るとメイドと……ヘレ、突然の出迎えに表情が固まり、ドアを閉めようと取っ手をに握るアカツキ。

 ぐっと握ったままでドアを閉めなおし、廊下に立つ、おかえりなさい、と今日の昼間と変わらないトーンで声をかけるヘレ。目覚めたアカツキの意思を、歓迎するかのように手を広げアカツキを軽く抱擁する。


 「ヘレさん?どうしたのさ、意味が分からないよ、しかも恥ずかしい」


 ヘレの異様な態度に困惑し、へれの露出した冷水でも浴びたかのような冷たい肩に手を置き、少し距離を取る。


 「ヘレさん、何かあったの? ちょっとあまりにもいつもと違うから、動揺してるんですけど大丈夫?」


「大丈夫、これから皆と、今後について話す前にアカツキに会いたかっただけ、きっとこれからアカツキのそばで見守ることは少なくなると思うから……」


 アカツキの格好を見てヘレは悟ったようだ、自分のそばを離れ自立していくのだと。まだアカツキがゴルド家に仕えると知っているのはまだアカツキとゴルドのみ、その姿で察したのだろう。


 思わぬ様子のヘレにアカツキの身は引き締まる。

 格好もそうだが、気分は上級騎士のごとく、どんな苦難も切りぬけ打開出来そうな自信が見られる。ただし、今は戦うすべをアカツキは知らない、この屋敷でこれから身に付け強くなる、心も体も、そしてだだっ広い不穏な空気漂う応接間で目の当たりにする。


 己の運命と真実……そしてヘレの真実を。 

 

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