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星団最強なのに回りくどい奴の物語。だってすぐ終わっちゃうじゃん。(改稿中)  作者: 耀聖(ようせい)
最終章・皆の幸せの形。
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先に進む者。

進むステイシー。誘惑に晒されるグレイス。

【クーン城・客間】


 中間試験が終わり、夏休みに入ったクーン組は帰省していた。

 城に到着した一行は、客間に集まり、仲良くお茶を楽しんでいる。

 この後、一人ずつアーレイに会い、貴族学校での報告をすることになっていた――。


「あー、やっぱりここが一番落ち着くわ〜」

「もう姫姉様、リラックスし過ぎですよ(笑)」


 お茶を一口飲んだステイシーは、身内しかいないので、大きく伸びをしている。

 やはり実家というのは一番心落ち着くのだろう。


 その余裕の表情からも、中間試験でそれなりの成績を収めたことがうかがえる。去年とは大違いだった——。


「ゲフンゲフン。ステイシー様、陛下がお呼びです(笑)」


 そんな和気藹々のところに執事が現れ、ニンマリとした顔をしていた。


「こ、こ、今回は怒られないよね(汗)」

「さあ、成績表を見て眉間に皺が寄ってましたけど(笑)」

「WWW(大汗)」


 ニヤついている執事は間違いなく遊んでいるし、真に受けたステイシーは不安に満ちた顔をしてしまう——。


 戦いの場だと、思考がキレッキレになるのに、こういう時はなぜかチョロくなる可愛い姫様だ。


「もう、姫姉様はこういうのに騙され易いんだから」

「そ、そうよね、大丈夫よね」


 とにかく呼ばれたなら向かうしかない。

 気を引き締めたステイシーは、静かに執事の後をついて行く。



 ※※※※※※



【アーレイの執務室】


「失礼します」


「おかえりステイシー」


 緊張した面持ちで扉を開くと、満面の笑みのアーレイが待ってくれていた——。


「ただいまパパ!」


 表情を見れば、余計な言葉は要らなかった。

 アーレイが大きく腕を広げると、ステイシーは思い切り飛び込んでいく——。


「もう何も言う事はない。夏休みは自分で判断して過ごしなさい」


 直接褒めることはなかったが、その言葉が自分を認めてくれている証拠だと、ステイシーには分かっていた。


 言われた彼女は意味を理解して、ニッコリと微笑んだ。


「うん、ありがとう。あのねパパ。ガルーダの騎士さんに会いたいの」


 実地訓練で助けて貰った礼を、ちゃんとしたいのだろう。

 だが、ステイシーには別の目的がある——。


「ふーん、奴らの剣技が気になるんだろ」


「あはは、バレたか」


 学校でヴァレリアと親しくしていることは、祖父のファビオから聞いていた。

 彼女の祖父がガルーダの騎士たちを率いる立場にあることを考えれば、ステイシーが彼らの剣技に興味を持つのも時間の問題だろう。


 彼女の向上心を考えれば、そうなることは容易に想像できた――。


「ファマスは頑固爺さんだから、上手くあしらえよ」


「うん。ありがとうパパ!」


 今年の夏は、公務と剣と魔法の訓練で過ごす予定だ。


 元気いっぱいのステイシーは、最後にアーレイをギュッと抱きしめると、軽やかな足取りでフローレンスの元に向かうのだった――。



 ※※※※※※



【レイヴン・テクノロジーズ・地下研究所】


「嗚呼、もう金が尽きた……」


 研究所で頭を抱えるグレイスは、深刻な金欠に苦しんでいた。


 頼みのジュリアンは最近姿を現さないし、連絡を取っても「いまは忙しい」と言われ、まともに話すことすらできなかった。


「あと、あともう少しなのに……悔しい……」


 視神経との接続は成功し、リリアが見ているであろう風景を再現できるまでになっていた。

 次は機械と脳を接続し、意識が戻っているかを確認する段階だった。

 しかし、肝心のソフトウェアと脳神経を接続するアダプターが手に入らず、研究は頓挫していた。


 そして——。


「グレイス様、ジュリアン男爵がいらっしゃいました」

「ほ、本当か、早く通すんだ」


 あと一歩のところで足踏みしていたグレイスのもとに、待望のジュリアンがやってくる。

 今か今かと待ち構えるグレイスの瞳は、最後の希望にすがるような、飢えた狼の目をしていた――。


「お久しぶりですグレイス君」

「やっと逢えましたねジュリアン様」


 感動の再会ではないが、姿を現すとグレイスは駆け寄り、期待に満ちた眼差しを向ける。


「少し込み入った話があるのですが……」

「わかった。あちらの個室へどうぞ——」


 少し困った顔をするジュリアン。

 グレイスは即座に読み取り、個室へと案内する。


 そして扉が閉まると——。


 バサッ――。


「なっ、いきなり、どうしたのですか」


 コートを脱ぎ捨てると、ジュリアンはいきなり後ろからグレイスに抱きつき、驚く彼を強く抱きしめた――。


(えっ、この感触……やっぱり……)


 背後から抱きしめられているため、ジュリアンの姿は見えない。

 それでも、背中に伝わる柔らかな感触や、甘い香り、背中に回された白く華奢な腕が、グレイスの疑問を確信へと変えていく——。


「色々辛い事があったの、やっとあなたに逢えてホッとしているの」


「そ、そうですか……こ、こんな僕でよければ話を聞きますよ」


 耳元ですごく寂しげな口調で囁き、甘えてくるジュリアン。

 今は金のことよりも、彼女に起きたことに神経が集中していた——。


 それと——。


(彼女はやっぱり……)


 女性だとわかった衝撃も手伝って、グレイスの心臓はバクバクと強く鼓動を打っていた……。


「怖かったの……だから……抱きしめて安心させて……」


「……うん、わかった……」


 不安に駆られる女性を拒否する理由がないグレイスは、その要望に応えようと、ゆっくりと振り返り、ジュリアンと向き合う――。


「えっ……」


 目に飛び込んできたのは、ワイン色のドレスを身にまとったジュリアンの姿だった。

 胸元には大胆な切れ込みが入り、その姿はどこから見ても女性そのものだった——。


「あの……もしかして……」

「いつか話さないといけないと思っていたの……私は女よ……」


 抱き合い見つめ合う二人はまだ恋人同士ではないが、ジュリアンの瞳からは悲壮感が漂い、放っておけない。


 ここまで彼女を追い詰めた原因は何かと考え、とある結論に行き着いた——。


「まさかとは思うが、金の工面で苦労したのか」


「それもあるし、一番はリリアさんの情報よ、裏組織は一筋縄ではいかないの」


「なんだって、大丈夫なのかジュリアン!」


 そもそもディスティアの技術は、危険な組織から入手しているのだろうと想像していた。

 だが、実際にジュリアンが危ない橋を渡っていると知り、グレイスは深い感謝とともに、胸が苦しくなるのだった——。


「男装は裏組織に食い込むためなの、女だと食い物にされかねないの」


「なんてお礼を言っていいのか分からない……ありがとうとしか言えない」


 妹のために尽くしてくれることは有難い。だが、なぜジュリアンは、そこまで危険を冒してまでリリアのために動いてくれるのだろう。


 グレイスには、それが理解できなかった――。


(俺に近づくためなのか……彼女はなぜ……あっ、もしかして……)


 思考を巡らせていると、以前会った時の言葉を思いだす。


 『あの難病に対する一つの道標になると思っているからよ——』


 ジュリアンが自分を信用させるために語った言葉だったのかもしれない。だが、グレイスはその言葉に共感していた。


 そしてジュリアンを見つめていたグレイスは、急にすまなそうな顔をした——。


「ごめんね、嘘をついていて……」


「いや、問題ないよ、俺の妹のためにすまない」


「いいのよ、辛いとき貴方の顔が浮かんだから頑張れたの……」


 その言葉は、遠回しに好意を伝えているようなものだった。


 妹のために尽くしてくれたジュリアンの言葉は、グレイスの心に深く響いた――。


「……こんな、俺のために……ありがとう……」


 グレイスの心には、ジュリアンを守ってあげたいという気持ちが湧き上がっていた。


 胸の鼓動が次第に強くなる。それは、彼女に好意を抱き始めた証のようだった。


「……」


 そんなグレイスの思いを見透かすように、ジュリアンは無言のまま彼を強く抱きしめる。


 ——ドクン。


 グレイスの中に、彼女を一人の女性として求める感情が込み上げてくる。

 彼はその思いを確かめるように、ジュリアンを強く抱きしめ返すのだった——。


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