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星団最強なのに回りくどい奴の物語。だってすぐ終わっちゃうじゃん。(改稿中)  作者: 耀聖(ようせい)
最終章・皆の幸せの形。
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心の内。

修学旅行明けの一幕です。

【デルタ王国・検察本部】


 グレイスは父親に付き添われ、デルタ地検本部へ出頭していた。


 逃げ出すわけにもいかず、促されるまま取調室に入る。


「とりあえず、これを見てくれ」


「……」


 取り調べ中、グレイスは証拠映像を見せられていた。

 しかし、腕を組んだまま、不満を隠そうともしない。その傲慢な態度に、捜査官は苦い顔を浮かべていた。


「言い訳があるなら、一応聞くつもりだ」

「最初は、懲らしめる程度で済ませるつもりだった」


 始めた当初はそうだったのかもしれない。しかし、実際に起きたことは全く違う。


「君は殺傷モードで何度も銃撃した。それで殺意はなかったと言い切れるのか」


 捜査官は訝しげな表情を浮かべる。

 逃げ惑う少女に対し、殺傷モードで何度も銃撃するなど、極めて悪質な行為と判断していた。


「あの女が逆襲してくるのが悪い。攻撃は正当防衛だ!」


「何を馬鹿な。殺人未遂だ。反省して示談に応じなければ、刑務所行きだぞ」


 サラが金銭による解決に応じるかは分からない。少なくとも示談に持ち込まなければ、貴族であっても立場が苦しくなる。捜査官はそれを暗に告げていた。


 そもそも、サラは丸腰と言っても過言ではない状態だった。


 現実を突きつけられたグレイスは、返答に困り始める。


「……」


 これ以上、言い逃れはできないと理解したのか、苦虫を噛み潰したような表情で黙り込んだ。


 捜査官は、あからさまに不機嫌なグレイスを見て、ため息をつく。


「陛下と父親が君の処遇について話し合っている。少しは考えて発言するんだな」


「分かりました」


「それでは、この調書を見てくれ。判断は君に任せる」


 捜査官は調書を差し出した。

 そこには、地検がまとめた事件の経緯が記されていた。


「……まあ、この流れにするしかないよな。分かった、サインする」


 検察側がまとめた内容は「サラから逆襲を受け、ついカッとなって銃撃してしまった」というものだった。


 未成年者の処分を考慮すれば、これが妥当な落としどころなのだろう。


 渋々ながら調書にサインしたグレイスは、保護観察処分となり、保護施設へ送られていった――。



 ※※※※※※



【保護施設】


 保護施設の部屋は無機質で、何もない。まるで反省部屋のような場所だった。


 時間を持て余したグレイスは、サラとの一戦を思い返していた。


「あのとき現れた騎士は、クーン近衛騎士団だったな……」


 助けに入った初老の騎士の腕には、クーン近衛騎士団の紋章があった。それに、アーレイのバトルドロイドまで同行していた。


(あの状況なら、機甲歩兵か一般兵を出すのが普通だろう……妙だな……)


 一般人を保護するには、あまりにも豪華な布陣だった。グレイスはそこに違和感を覚え始める。


 それに、貴族を恐れないサラの堂々とした態度や、時折見せる凛とした表情は、王族たちが見せるものとどこか似ている気がしていた。


(何か引っかかるんだよな。一応、探りを入れてみるか……)


 サラの素性を調べるため、グレイスは手下に連絡を取り始めた。


 なぜ、あの女はあれほど多くの人間に守られているのか。


 そして、病魔に侵され、衰弱の末に黄泉の国へと旅立ったリリアと比べ、あの女は青春を謳歌している。


 最近、めきめきと頭角を現し始めたサラの姿を見るたびに、グレイスの心は掻き乱されていた。


 その答えを求めるように、彼はサラの素性を調べ始めるのだった――。



 ※※※※※※



【数日後・貴族学校】


 修学旅行は無事に終わり、週明けから再び日常が始まった。


 職員室近くの掲示板には、人だかりができていた。


 そこに掲示されていたのは――。


『グレイス・アークライト。無期限の謹慎処分とする』


 理由は明記されておらず、処分内容だけが記されていた。


 しかし、処分されるからには、それ相応の理由がある。しかも、その相手が誰なのかは、言わずとも分かることだった。


 噂は瞬く間に広がっていく——。


「Cクラスのサラがボロボロだった理由は、これか~」

「相当ひどかったらしいよ。聞いた話だけど、殺されそうになったみたい」


 こうしてグレイスの悪行が学園中に知れ渡り、生徒たちは、サラとグレイスの間に何かあったのだと勘ぐり始めた。



 ※※※※※※



【Cクラス・教室内】


 グレイスの処分が公表されると、好敵手だったサラにも、嫌でも注目が集まってしまう。


 Cクラスには他のクラスから生徒たちが押しかけ、サラの周囲には人だかりができていた。


「サラさん、やっぱりグレイスと一悶着あったんだよね」

「ええ、そうよ。森の中でひと暴れしたのよ」


 グレイスの具体的な所業は伏せられていたものの、ボロボロになったサラの姿と、森で響いた盛大な爆発音が結びつくのは当然だった。


 サラは詳細こそ語らなかったが、グレイスとやり合ったことは認めた。


 すると、心配そうな顔をしたヴァレリアが、人波を押しのけて目の前に現れた。


「サラが戦った相手はグレイスだったのね。何か恨みでも買ったの?」

「ううん。一方的に恨まれているだけよ。男の嫉妬は怖いよね(笑)」


 サラは、勝手に恨みを買って困っているかのように振る舞った。


 だが、本心では、自分がグレイスのプライドを逆撫でしたことが原因だと分かっていた。


(人の上に立つ器じゃないのよね。私が王族だと知ったら、どうなることやら)


 人を身分の違いでしか判断しないグレイスに、サラは憤りを覚えていた。


 そんなことを考えているうちに、表情が険しくなり始める。


「サラ、みんな心配したんだからね」


 今度はセシリアまでもが声をかけてきた。


 ハッと我に返ったサラは、反射的にセシリアを抱きしめていた。


「ありがとう、セシリア。ヴァレリアも、もう大丈夫だよ」

「うん。グレイスは当分来ないから、安心してね」


 出会って間もないヴァレリアだったが、今では友達以上の親友と呼べる存在になっていた。


 ヴァレリア自身も、裏表のないサラを信頼しているらしい。セシリアを抱きしめていたサラを、今度は自分が優しく抱きしめた。


「サラさん……少しよろしいですか? Bクラスのアランと申します。こちらのクラスでも話題になっていましたよ」


 そんなとき、一人の青年がサラに近づいてきた。


「ん? 何? 見ない顔ね」


 サラに近寄ってくる男子生徒のほとんどは、RPGで勝負にならない相手だと判断し、相手にしてこなかった。そのため、リアルで気を許している男子生徒は、クラスメイトくらいだった。


「あはは、そう言わないでください。今や全校生徒の人気者なのですから」


 目の前にいるのは、絵に描いたような好青年だった。


 しかし、剣を交えたこともない相手に、サラが簡単に気を許すことはない。


「じゃあ、潜ったらデュエルする?」

「あはは、よろしくお願いします」


 脳筋娘であるサラは、男を選ぶ際に強さを一番の判断基準にしていた。


 だが、それは単に、碌でもない男をふるいにかけるための方便に過ぎなかった。


(クーン王族に恥じない男って、本当にいるのかしら……。アラン、笑っているけど、何だか誠実さが感じられない)


 サラが求めているのは、剣の道を通じて真面目に精進する、理性を備えた男性に過ぎなかった――。



 ※※※※※※



【レイヴン・テクノロジーズ・地下研究所】


 ジェフとアーレイの話し合いが進み、アークライト家が慰謝料を支払うことで示談が成立した。


 ただし、取り下げられたのは、あくまでもサラに対する殺人未遂の告訴だけだった。グレイスは騒動を起こした責任を取らなければならず、学校からの無期限の謹慎処分は継続することとなった――。


「すまない、リリア。俺のせいで、少し遅れてしまう」


 グレイスは研究所に籠もり、リリアの復活研究に注力していた。しかし、示談金の支払いが仇となり、研究費は大幅に削減されていた。


 保存液に浮かぶリリアの脳は、何も答えることなく、以前と変わらぬ姿でそこにあった。


「必ず復活させるから、待っていてくれないか、リリア……」


 予算削減の影響で、人影もまばらになった研究所を見渡すグレイス。


 自分が招いた失態によって、このような事態に陥ったにもかかわらず、彼に反省の色は見られなかった。


 厳しい表情を浮かべたまま、グレイスは研究所を後にするのだった。

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