本気度。
新学期が始まり、サラは……。
【Cクラス・教室】
新学期が始まった。
二年生になったサラは、晴れてCクラスの仲間入りを果たす。
しかし——。
「うわ〜、脳筋姫来たわ〜」
意気揚々とサラが入ってきた瞬間、教室中から、警戒するような視線が向けられる……。
「狂剣って、カンニングしたんじゃないの〜」
どこからともなく、聞き覚えのある声で悪口が飛んできた——。
「誰よ、いきなり喧嘩売るとは、上等ね!」
見渡しても、元のクラスメイトも、顔見知りすらいない。
ますます眼光が強くなるサラは、殺気を放つ——。
「やっぱ噂通り、脳筋なんだ……」
「うわぁ、怖い、輩だよね」
あちこちから、ヒソヒソと囁く声が聞こえる。
新学期早々トラブルかと思われた——。
「だって私以上に脳筋のサラが、このクラスって変でしょ(笑)」
先ほどの声の主が、ようやく姿を現す——。
ヴァレリアだ。
バーチャルの時と全く同じ、薄いピンクの短めの髪、子リスのような愛くるしい顔。
すらりとした姿もそのままだった——。
「源氏名、もといプレイヤー名ヴァレリアじゃないの!」
「ムキィ!」
珍しくサラは嫌味で返す。
それは、お互いの距離を縮め、仲良くなりたいと思い、わざと言い放ったのだ――。
反応したヴァレリアはプンスカと怒るが、最後は笑みを浮かべてくれる。
「うふふ、サラって変わらないんだね。よろしくね」
「こっちこそよろしく、また、戦おうよ!」
剣で互いを知った二人は、すでに心を通わせていた。
どちらともなく手を差し出し、握手を交わす。
「サラ、よろしくね。私メアリーよ」
次に青色の髪の女の子が手を差し出してくる。
サラは快く笑顔で握手をした――。
新たなクラスメイト達は、清々しいほどに男前のサラを受け入れてくれるのだった。
「うん、みんな仲良くしようね!」
気取らないサラ。
気がつけば、周りを皆が取り囲んでいた……。
※※※※※※
【数ヶ月後・前期試験】
あっという間にクラスに溶け込んだサラ。
最近ではヴァレリアとリアル、バーチャルの両方で、一緒に行動していることが多い。
バウンデ出身ということもあって、デルタをよく知るサラと遊ぶのが、楽しくなったらしい。
「はぁ〜いよいよ前期試験だよ〜」
ため息をつくのは勿論サラだ。
勉強は問題なく進んでいるものの、やはり脳筋はテストを嫌う——。
「結構頑張っているから、大丈夫だよ」
「そう言ってくれると、心強いよ」
新たにできた友人と過ごす時間は楽しい。
しかしその楽しい日々を過ごせば、試験もまたやってくる。
教壇に立った教師は、無情にも答案用紙を配り始めた——。
「君たちはCで満足できるような生徒ではない。しっかり上を目指せよ」
「「はい!」」
諦めたような顔で対応していたFクラスの教師とは、随分と違う。
それは生徒も同じで、皆目が真剣だ——。
「うわぁ〜Fとは全然違うわ〜」
底辺から這い上がってきたサラには、それが新鮮に映る。
しかし、彼女は更に上を目指さなければならない。
気を引き締めて、答案用紙に向き合う——。
※※※※※※
【数日後・結果発表】
成績発表を待つサラの表情は、暗くはないものの、不安でいっぱいだった。
「……うう……来るなら来い!」
気合いを入れた、その瞬間——。
ピッ!
「来た!」
タブレットの画面を手で隠し、嫌なものを見るように、少しずつ手を動かす——。
「へっ?マジ」
周囲からため息や、喜びの声が聞こえる。
そんな中、画面に映る数字を見たサラは、信じられないような表情になる——。
「見てみて見て!」
パアッと明るい表情に変わったサラは、一目散にヴァレリアの元に駆け寄ってゆく。
その結果とは——
「65位・B判定」
努力が実を結んだ瞬間だった。
今まで成績は判定のみで、順位が表示されることはなかった。
100位以内に入ったことで、新たな指標として順位も表示されるのだ。
「65位って、斜め上にも程があるでしょ」
結果を見たヴァレリアは、呆れた顔をしている――。
同時に、自分の結果を見せたくないのか、サッとタブレットを仕舞っていた。
「よし! このまま上がれば、おう……勘当されなくて済むわ(汗)」
「ふーん、サラの家って厳しいんだね」
(やばやばやば、王籍って言いかけちゃったよ)
危うく口が滑りそうになるサラ。
慌てて取り繕うと、ヴァレリアは気が付かなかったようだ。
とにかく、このいい流れのまま上位を目指さないと駄目だ。
「期末は生死を分けるのよ、一緒に頑張ろうよ」
「そ、そうだね」
破竹の勢いのサラに押されるヴァレリア。
友情にヒビが入ることはないが、ちょっとだけ悔しさを滲ませていた。
※※※※※※
【デルタ王宮・ジェフの執務室】
ジェフの執務室には、アーレイ、クリス、キースの三人組とルドルフが顔を揃えている。
集まった理由は、貴族学校の修学旅行の打ち合わせだ。
大画面には数パターンの日程が明記されている。
「という訳だ。来月から第九艦隊を駆り出すぞ」
「……相変わらずの斜めっぷりだな」
ジェフが呆れるのも無理はない。
どこの都市を訪れようが、最終的には実戦訓練が組み込まれている。
「平和ボケ防止だよ。特に森林戦は知力体力精神力が試される」
「じゃ、勝手知ったるクーンの森でいいな」
「そのつもりで、すでに準備してあるよ(笑)」
こうして、一風変わった修学旅行が実施されることが決まる。
「森での作戦行動は、行軍と索敵、模擬戦になります」
ここでルドルフが詳細な作戦の説明を始める。
しかし——説明が終わると、どうも顔色が優れない。
「まさか、俺がフォローに入るのか」
「そりゃ、娘が経営する宿に泊まるからな、行きたいだろ」
ルドルフの娘ジェシカは、来訪者が日に日に増えるクーンで、そこで知り合った夫と共にホテルを経営していた。
クーンの森にあり、作戦行動の拠点にするのが一番、理にかなっていたからアーレイはそのホテルを選んだだけだった。
そして、なんとも言えない顔をするルドルフ……。
「まぁ作戦を考えれば、仕方ないな……」
強面はそのままだが、目尻がピクピクと反応しているところを見ると、内心では喜んでいるのがよくわかる。
アーレイはニヤリと笑う。
しかし、ここで話が終わるはずもない——。
「げふん、もう一人の赤い髪の娘は元気にしとったぞ!」
「……(大汗)」
ルドルフは固まるが、アーレイはどこ吹く風だ。
そして——。
「……なぁジェフ、赤い髪の孫娘も可愛いだろ」
「ああ、久しぶりに愉快なことが起きたので、楽しかったぞ(笑)」
一連のやり取りをじっと窺っていたルドルフは、呆れた表情に変わった——。
「なんだ、バレていたんだ」
「もうすぐ剣聖クラスになるんだぞ。遅かれ早かれ、ばれるよ(笑)」
貴族学校で活躍するサラを隠し通すには無理がある。
あともう少し学力が上がれば、どのみちアーレイは公表するだろう――。
「フォフォ、サラは可愛いのう~」
ジェフも理解しているのか、詳しくは聞かない。
ただ、ジェフはアーレイといると面白いことが起きると、期待しているようだった。
※※※※※※
【レイヴン・テクノロジーズ・地下研究所】
グレイスの謹慎は、冬休み明けと同時に解けた。
だが、彼にとって謹慎期間は、妹のために研究を進める時間でしかなかった。
「試験結果は相変わらずの一位だな」
神童と呼ばれるグレイスは、学校の勉強など眼中にい。
それよりも、一刻も早く妹を復活させたいと願っていた——。
ピン!
ケースの中に浮かぶリリアの脳を眺めていたグレイスのもとに、子飼いの内通者からメールが届いた。
「修学旅行で模擬訓練か、ダルいな」
修学旅行は自由参加だ。当然、グレイスに参加する気はなかった。
次の報告を見るまでは——。
「サラが65位だと!」
サラを、底辺のFクラスにいた脳筋女としか認識していなかったグレイスに、衝撃が走る——。
「許せない、俺をコケにしたアイツだけは許せん!」
研究に没頭するうち、サラのことなど忘れていた。
だが、信じられない結果を見て、グレイスの中に眠っていた憎悪が、ドロドロと湧き始める——。
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