↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星団最強なのに回りくどい奴の物語。だってすぐ終わっちゃうじゃん。(改稿中)  作者: 耀聖(ようせい)
最終章・皆の幸せの形。
589/619

RPG。

ヴァーチャル世界での一コマ。

【王族用・控え室】


 ギィ――。


 控え室の扉が開き——そして閉まる。


 すると、何もない空間から、突然サラが姿を現した。


「はぁ〜……よかった〜。パパのモジュールが届いて(汗)」


 安堵の表情を浮かべるサラの額には、嫌な汗が滲んでいる。


 まるで、しつこい相手からようやく逃げ切ったような顔だ——。


「もう、姫姉様。アーレイワークスのモジュールは、ここでは使用禁止ですよ」


 サラがグレイスから逃げるために使ったのは、アーレイワークスが開発した軍事用モジュールだった。


 ステルス性能が桁外れに高い軍用装備であり、当然ながら学園内での使用は認められていない。


 しかし――。


 今朝、顔を合わせた際、嫌な予感がしたサラは、グレイスの表情から必ず来ると考え、不測の事態に備えて、アーレイに送ってもらっていたのだ——。


「だって、グレイスが探しに来るって分かりきっているから仕方ないし」


「おぼっちゃま貴族、すっかりストーカー化してますね」


 アイラが、さらりと毒を吐く——。


 ステイシーのことをよく知る彼女からすれば、あれだけ傲慢なグレイスが、姫姉様に執着している状況など迷惑以外の何物でもない。


「あれで大人しくしてくれたら良いんだけど……」


 サラは困ったように頭を抱える――。


 手を出したくても出せない状況を作ったつもりだった。


 昨日の一件で、さすがに懲りただろうと思っていたのだ。


 だが――。


「まさか、ここまで粘着質だとは思わなかったわ……」


「本当に困った人ですね」


 二人は揃って、深いため息をついた――。



 ※※※※※※



【数日後・レイヴン・テクノロジーズ】


 レイヴン・テクノロジーズはクローン体、光学迷彩、マッスルスーツ、高性能ライフルなのどの、軍事装備品を中心に開発製造する中堅軍事企業だ――。


 その正面玄関にグレイスの姿があった――。


「ここのプログラマーに頼めば、作ってくれるかな」


 この企業の役員の息子であるグレイスは、持ち前の頭脳でクローン開発に力を貸している。


 なので、他部門との繋がりがあり、とあるプログラムを作って貰う為に、訪れていた。


 ※※※※※※


【AIプログラム・開発部門】


「このRPGにチートプログラムは使えますか?」


「結論から申し上げますと、バーチャルシステムの上に、ゲームプログラムが走っているので、チートは可能です」


 グレイスは、逃げ回るサラとバーチャル上で接触するつもりだった――。


 だが、仲間内から、「ソロで誰とも組まないし、直ぐに姿を晦ますので会うのは至難の業」と聞いていた。


 そこで、グレイスは閃いた。

 チートを使い、対等に渡り合えばば話を聞いてくれる。

 そう思ったのだ――。


「おお、それはいいね。それで何が出来るの」


 「軍が監視しているので、一番強いプレイヤーに合わせるのが良いでしょう」


 あのバーチャルRPGで一番強いプレイヤーは――サラだ。


 互角なら、どうにかなる。


 淡い期待が心躍らせる。


「プレイヤーの検索も出来たらいいな」


 バーチャルRPGの世界はリアルを追求しているので、フィールドは一国の広さ程もある。

 当然、ソロのプレイヤーを広大なフィールドで探し出すのは不可能に近い。


 グレイスは確実にサラと出会うために、注文をつける。


「それは簡単です。索敵に組み込みます」


「ありがとう。早速使わせてもらうよ」


 チートプログラムを受け取ったグレイスは、早く試したいのか、足早に去ってゆくのだった。



 ※※※※※※



【レイヴン・テクノロジーズ・地下研究所】


「それで、現状は!」


 急ぎ足で開発部門を出たグレイスは、緊急連絡を受け、地下のクローン研究所へとやって来ていた。


「人口眼球を先に試したところ、脳との接続に成功しました」


「何だと!」


 久しぶりの朗報だった——。


 これまで幾度となく実験を繰り返してきたものの、クローン体と脳を完全に接続することはできなかった。


「瞳孔が動く……!」


 研究員がライトを当てると、瞳孔がゆっくりと絞られてゆく。


「やったな……成功だな!」


 それは、人工眼球と神経が正常に繋がった証拠だった。


 グレイスは目を細め、その表情には、妹を想う愛情が滲んでいた――。



 ※※※※※※



【バーチャルRPG・ダンジョン内】


「やっ!」


「グェェェ!」


 チャリーン!


「まあまあかな」


 ダンジョンボスを倒したサラは、地面に湧き出した金貨を数えて満足そうに頷く。


 暇さえあればログインして、地道に学費を稼ぐ——。


「さてと……面倒なクエストやるか」


 少し前、学校から発表があった。


 このバーチャルRPGで一定数の「クエストクリア」をしなければ、単位が貰えないとの通告だった。


「面倒だけど、必修科目なら仕方ないか」


 ――もっとも。


 この仕様変更の原因を作ったのは、他ならぬサラ自身だった——。



 ※※※※※※



【RPG内・魔界の村】


 村の名前の通り、魔物がよく湧き出るスポットだ。


「うふふ、長剣を買ったから、ここのクエストで使ってみよう」


 サラは剣を新調して、クエスト受注をする事にした——。


「森に魔物が出て、薪が足りないのじゃ」


 NPCのお婆さんに声をかけると、クエスト開始だ——。


「任せて! 速攻で取ってくるわ!」


 一見すると簡単そうなクエスト。


 だが、このクエストはプレイヤーの間で「怠け者殺し」として有名だった。


 そんなこととは露知らず、サラは意気揚々と森へ向かう——。


「ふんふんふーん♪ あー、楽勝楽勝!」


 しばらくして、背負子には、単位取得に必要な薪が山のように積まれていた。


「ギャオーン!」


 そして帰り道——定番の魔物が出現する。


 これこそが、このクエストが「怠け者殺し」と呼ばれる所以だった。


 背負っている薪の量に応じて、帰り道に出現する魔物が強くなる。


「ふっふーん、現れたわね!」


 ならば薪を置いて戦えばいい——普通なら、そう考えるだろう。


 だが――。


 薪を地面に置いた瞬間、今度は盗み猿が現れ、薪を持ち去ってしまうのだ。


「ギャオーン!」


「なーんだ。キラクマちゃん(キラーベアー)じゃない!」


 普通なら尻込みををする相手だが、サラは臆するどころか愛称で呼び、口角を上げる。


 そして、薪の重さで素早さが落ちているにもかかわらず――


「えいっ!」


 ドゴォッ!


 一撃。


「……」


 脳筋姫には、あまり関係のない話だった——。


「よーし、村まであと少し!」


 魔物を軽々と撃破し、サラは意気揚々と村へ向かう。


 その時だった――。


『デュエルを申し込む』


「……は?」


 突然、現れたプレイヤーからデュエルを申し込まれた。


 しかも、このゲームには妙な仕様がある。


 自分よりレベルの低いプレイヤーからのデュエルを拒否すると、単位が減ってしまう。


「はぁ~~~~……」


 サラの顔が、一瞬で嫌そうに歪む。


 否応なしに、戦うしかない。


 だが――


 これもまた、そもそもの原因はサラ自身だった……。


「あんたねぇ、この状態で戦えっていうの?」


「あんた狂剣だろ? ハンデって言葉の意味って分かる?」


 プレイヤーの名前は――アーク。


 見知らぬプレイヤーだった。


「……」


 傲慢な物言いと、不敵な笑み。


 この状態のサラに決闘を申し込んでくる性悪など、聞かずともグレイスだと分かる。


(ああもう……あのことの探りを入れに来たのね)


 もう、こうなれば――叩き伏せるしかない。


 サラは無言でウィンドウを開き、決闘のアイコンを押す。


 3――。


 2――。


 1――。


 そして、戦いが始まる。


「はっ?」


 あろうことか、サラは背負っていた大量の薪を、背負子ごと頭上へ放り投げた!


「ウキィィィ!」


 当然、盗み猿が湧き出てくる。


 だが――


 サラはそれを待っていたかのように、冷ややかな表情で柄に手を掛ける。


「えいっ!」


 バキャーン!


 神速の横薙ぎが炸裂する。


「グフォ――!」


「ピギャァァ――!」


 盗み猿も、グレイスも同時に叩き切った!


 <勝者:サラ>


「……よっと」


 空中から落ちてきた背負子をひょいと掴み、そのまま背中に回す。


「……」


 そして、アークには一瞥すらくれず、サラはそのまま村へと入っていった――。

宜しければブクマ評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。