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星団最強なのに回りくどい奴の物語。だってすぐ終わっちゃうじゃん。(改稿中)  作者: 耀聖(ようせい)
最終章・皆の幸せの形。
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お茶は戦いの場。

【迎賓館・会場】


 今回ウルフが準備したのは、もちろんアーヴィン王国産の高級茶葉だ。


 侍女が手慣れた手つきで、次々と茶器にお茶を注いでいく。


 やがて、鼻腔をくすぐる甘い香りが会場いっぱいに広がった――。


「んっ、まぁ~! なんて美味しいのでしょう!」


 一口飲んで、真っ先に声を上げたのは、グレイス派閥の女生徒だった。


 一方、サラは――。


「……」


 お茶を一口含むと、静かに茶器をソーサーへ戻し、続いて、焼き菓子を小さく齧った。


 少し間を置き――。


「お茶の甘さと、お茶菓子のバランスがとても良いですね」


 完璧な間合い。


「あ、ありがとう」


 一つ一つの動作に無駄がない。


 茶器を置く音すら立てず、背筋を伸ばし、凛とした表情でお茶を嗜む。


 その姿は、まるで生まれながらの貴族――いや、王族を思わせるほど優雅だった。


「何なのよ……平民のくせに、なんであんなに綺麗にお茶を嗜めるのよ」


 会場の令嬢たちも、表面上は静かにお茶を楽しんでいる。


 だが――。


 目を閉じて味わうふりをしながら、薄目でサラの所作を観察していた。


 無駄のない動き。


 完璧な茶器の扱い。


 そして、自然に身についた気品。


 そのあまりにも洗練された所作に、会場には小さなどよめきが走った。


(えっ……あれが平民だと……?まるで貴族ではないか……)


 もちろん、ウルフもサラから目を離さなかった。


 平民として招かれた以上、多少の粗相があっても気にするつもりはなかった。


 だが――。


「……」


 目の前にいる少女は、その予想を遥かに裏切っていた。


 完璧な所作――。


(彼女は……一体何者なんだ?)


 斜め上をゆくステイシーに、ウルフは思わず息を呑んだ――。


「次はフォーレストのお茶をお楽しみ下さい」


 どよめく会場をリセットするように、セシリアの声が響く――。


(ゲッ! なんでクーンの席に来るのよ!)


 茶器を運ぶ侍女とともに、セシリアが音も立てずに、サラの側までやって来る。


「うふふ、クーンのお茶を楽しみにしていますのよ……ステイシー王女殿下」


 セシリアはステイシー(アイラ)に声を掛け――最後にサラ(ステイシー)を見て、ニッコリと微笑んだ。


「……(汗)」


(ぎゃー! 絶対バレてる、バレてる!)


 悟られないように、サラはお茶を一口飲む。


 そして、ステイシーが口を開くまで、口元をキュッと結び、じっと様子を窺っていた。


 だが――。


 セシリアはそんなサラの反応が面白いのか、扇子で口元を隠しながら、口角を上げる。


 その直後――。


「あなた、平民とは思えない所作ね。どこで覚えたのかしら?」


 ドギマギとした空気を打ち破るように、隣の席の貴族令嬢がサラへ疑問をぶつけてくる。


 要するに――気に食わないのだろう。


「サラはルドルフ提督のご息女ですので、王家とも深い縁がありましてよ」


 ステイシー(アイラ)が、サラが口を開く前にフォローを入れる。


 王族からそう言われてしまえば、先ほどと同じく、これ以上の深追いはできない。


 嫌でも、貴族令嬢は納得するしかなかった。


(やはりルドルフ提督の娘なんだな……。となれば、王家との付き合いがあっても不思議ではない)


 ウルフが得ていたサラの情報も、ステイシーが述べた通りで、これといって不審な点はなかった。


 彼もルドルフ提督とは何度も顔を合わせている。


 それに、アーレイ陛下と親しい間柄であることも知っていた——。


(なるほど……)


 ウルフの中にあった僅かな疑念が、少しだけ和らいでいく。



 ※※※※※



【お茶会終了……】


 開始早々は会場の空気も悪かったが、クーンがお茶を出す頃には、なんとか鎮静化していた。

 その後も滞りなく進み、お茶会は無事に終了となる――。


「それでは、ご機嫌よう」


 それぞれが席を立ち、出口へと向かっていく。


「……」


「どうぞ、お先に……」


 サラが席を立つと、隣の令嬢と出会い頭になった。

 令嬢はあからさまに不機嫌な顔をするが、サラは両手をお腹の前に添え、軽く会釈した。


「フン!」


 令嬢は軽く鼻を鳴らし、流し目でサラの前を通り過ぎていく——。


 サラは相手にすることなく、軽く頭を下げたまま視線を床へ落とした。


「……」


 その一部始終を、ウルフはじっと観察していた。


 「それでは、失礼いたします……」


 サラはウルフを一瞥すると、ゆっくりとした歩調で出口へ向かう。


 コツ、コツ、とヒールを鳴らし、背筋を伸ばしたその歩き方は、なんとも優雅だった。


(……やはり、妙だ)


 ウルフは目を細める。


(彼女は……本当に平民なのか?)


 ただのお茶会の作法なら、教われば身につけられる。

 だが、あの立ち居振る舞いは、あまりにも自然すぎる――。


 まるで、それが当たり前であるかのように。


「王子、サラのこと好きなの?」

「うわぁ!……ああ……マギー様のご息女……」


 ステルスバグウサギのパルティータは、ウルフの傍で爆弾発言をぶちかます――。


「ずっと、意識してたでしょ」

「うわぁぁ……二人とも本当に驚かさないでくれよ、心臓が止まると思ったよ」


 そして反対側にはパルエッタが現れた。


「サラは脳筋、剣で語らないと見向きもしない」


「ああ、そうだね」


「王子がんばれ」


「じゃ!」


「……」


 言いたいことだけ言うと、ステルスバグウサギは忽然と姿を消す。

 度肝を抜かれたウルフは、一瞬固まるが、急いで正面玄関へと向かうのだった……。



 ※※※※※※



【正面玄関】


 ウルフの最後の仕上げはお見送りだ。

 正面玄関では、離れたテーブルでお話ができなかった令嬢達が、立ち話をしている。


「ステイシー!」


 クーンの一団が姿を現すと、席が離れていたセシリアが声をかけてきた。


「あっ、セシリア様」


 ステイシー(アイラ)は直ぐに反応して返事をした。


「んっ?」


 サラは一瞬、反応しそうになるが、途中で動きを止める。


(もう、セシリアは、わざとやっているよね)


 本名に危うく反応しそうになったサラは、心の中で毒づく。


「……」


 サラの動向を追っていたウルフ。


 サラが完全に振り向き、返事をすれば、確証を得られただろう。


 (気のせい……か?)


 確証を得られなかったウルフは、踵を返しつつ、横目でサラを見る。


 一度は納得したはずの疑念が、再び胸の奥に小さく引っかかった――。



 ※※※※※



【王族控え室】


 夏休みを翌日に控えた放課後。


 クーン組六名は控え室に集まっている。


「ステイはデルタ宇宙港で待ち合わせでいいですよね」


「ええ……」


 明日の帰国に向けた打ち合わせなのだが、サラだけが妙に暗い顔をしていた。


「姫姉様、どうしたのですか?調子悪そうですね」

「ああもう、どうしよう……最悪……」


 頭を抱え、今にも泣き出しそうな顔をしているサラが悩む理由はひとつしかない。


「過ぎたことなので考えても仕方ないですよ。次に頑張れば良いだけです」


 成績通知はすでに両親の元に送られている。

 帰省するとメッセージを送っても「気を付けて帰ってね」としか返信が無かった――。


「もう、アイラ……いっそ怒られるなら、怒鳴られたほうがマシよ」


 フローレンスが成績に関して何も言わない理由は簡単だ——。


「怒られたら気を抜くからです、エッタはそう考えます」

「ティータも同意見です!」


 普段は空気のような存在の、パルエッタとパルティータが珍しく意見を述べる。


「見透かされているのか……はぁ〜」


 クーンには戻りたい。けど、怒られるのが確定のサラは、俯き、頭を抱えるのだった……。

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