その後のI・F・G王国(3)
話はまだまだ続きます
<<魔神族の村・コボルル>>
「さあ、次に行くか」
反則技とも言える究極魔法を使い速攻でミッションクリアしたティアナは、ダンジョン挑戦の権利を得るとニコニコ笑顔で踵を返すが・・。
「あっ、魔力切れだわ」
「はいティアナ、ポーションよ」
振り返った途端、魔力切れを起こしパタリと倒れたティアナは直ぐ様サイラスに抱えられ、ロズリーヌがポーチからポーションを手渡すとコクコクと飲み干し魔力を補給すると元気を取り戻した。
「今日はここまでだな、宿に入って祝杯を上げよう」
「うふふ、数分で攻略したんだから間違いなく記録に残るよ(笑」
ティアナの頑張りでわずか数分で勝利を得たサイラス達は乗ってきた馬車に乗り込み、今日の寝床になる近くの宿場町を目指す。
<<移動中の客車内>>
「・・・・(愛」
御者は仲間の2人が行い客室には残りの3名が乗り、ゴトゴトと規則正しい心地よい振動はティアナを眠気に誘いついうつらうつらしてしまう。瞼に重しがのしかかり意識が遠のく中、窓外を眺めるサイラスに柔らかな笑みを送るロズリーヌに気が付いてしまう。
「・・・・(驚」
目線のその先にあるのは風景を見るわけでもなくリーダーを崇める信者でもない。ただ少しでも距離を縮めたいと願う恋する乙女そのものだ。恋人に向けられるその眼差しを今すぐにでもやめさせたいと思うが、自分を慕い可愛らしい妹分のロズリーヌに対し嫌悪感が湧くはずもなく眠気も重なり、ティアナは躊躇してしまう。薄目を開けたまま様子見をしているといつしか睡魔に襲われ気が付けば到着していた。
<<宿場町>>
宿に入り英気を養った冒険者一行はお休みの時間となり、それぞれの部屋に向かっていた。
サイラス「お疲れ〜、明日はゆっくりでいいよ」
ロズリーヌ「はーい、おやすみなさい」
2人は恋人同士なので大きめのダブルベッドがある部屋に入る。直さま埃や汗をシャワーで流し、サイラスは窓際で佇むティアナを後ろから抱きしめ窓外から流れてくる冷たい夜風を共に楽しんでいた。
「あのね、最近ロズリーヌの貴方を見る目がなんか違うのよね〜」
ティアナは客車内のロズリーヌの様子が気になったのかサイラスに問い、反応を伺う。もし浮気しているなら背中で感じる鼓動が早くなるはずだ。
「人間で言ったら16歳くらいだしお年頃なんじゃね、気にすんなよ」
眼中に無いのかそもそも恋愛相手としてみいてないのか、鼓動は上がることなく平然としている。まあサイラスは嘘をつけない性格なので疑いはしたものの取り越し苦労に終わる。
「あの子、パーティーに加わった時と違って最近は感情《恋心》が表に出ているのよね」
ロズリーヌがサイラスのパーティーに入って3年が過ぎようとしていた。その間、お付き合いの申し込みや、他のパーティーのお誘いはあったが興味がないのか頑なに断り続け、最近になって目覚めたのかサイラスをジッと見つめたり上の空だったりと、要するに恋する乙女になっていた。まあ洋介が父親になる前は同じ種族と結婚するのが当たり前だと思っていたが、べったり甘える母親を見て拘りが無くなったのも一因だろう。それが分かっているのかティアナは悩ましい表情へと変わった。
「俺は手を出さねーよ、それより久しぶりに楽しもうぜ」
「駄目よサイラス、王女のあの子に手を出すとアルテミシアに殺されるわよ、アン♡」
元々恋人同士だった2人はこの世界に転生してもそれは変わらず、16歳を過ぎた時から親密な関係になっている。そして今宵もまた交じり合う事になり、サイラスの手は後ろから双丘に伸びていた。この後の愛の歓喜は無駄に耳の良いエルフには筒抜けだったりする・・。
<<ロズリーヌの部屋>>
<ンッ、ンッ、いいよサ・ラ・・>
「サイラスを王にしないと私は永遠に結ばれないの・・」
声を押し殺しても聞こえる歓喜の声を聞きたくないのか、意味しげな言葉を呟いたロズリーヌは尖り特徴的な耳を無理矢理に押さえて眠りにつくのだった。
ーー
<<3ヶ月後・ダンジョン>>
ダンジョンの最下部55階層だけは作りが無機質に変わりモンスターは出現しない。ラスボスが住んでいる地下宮殿の中に入らなければ安全が保証される。なので補給物資が尽きるまで何度も挑戦が可能だ。そしてひとつのパーティーが攻略を諦めて地上へと戻ろうとしていた。
ロズリーヌ「それじゃ気をつけて、地上に転送される50層まで目指して頑張って」
冒険者「ありがとうロズリーヌ、アイツは手強いぞ後は頼んだ」
数日前、地下迷宮最下部に到達したサイラスたちは直ぐにでもラスボスに挑みたかったが、2組のパーティーが挑戦中で順番待ちになり足止めを食らっていた。とは言え宮殿入口付近は野営が出来るようにトイレなどが整備され、貴重な情報交換の場でもある。1番年下のロズリーヌは皆に可愛がられ攻略を諦めた冒険者たちを見送っている最中だ。
「じゃあね~バイバーイ」
「おいロズリーヌ、今晩のおかずをゲットして来たぜ!ホレ」
ダンジョン内に出現するモンスターの一部は食用に適している。なのでサイラスは上の53層の沼地で狩って来たばかりの数匹のスモールトードをロズリーヌの目の前に差し出す・・。
「いやーん、カエルさんはむりぃ~」
狩って来たばかりでまだ半死の状態なのかピクピクと痙攣しているトードを見た瞬間、青ざめたロズリーヌは全身に寒イボが現れ、猛ダッシュして逃げていくのだった・・。
<<翌日・宮殿入り口>>
「今日は何度でも挑戦できるな、それじゃ行こうか!」
昨日、挑戦していたパーティーは押し寄せるモンスターを撃退した後に、1人目のボスに挑むが、突然鈍器のような物で蹂躙されたのか全身血だらけで戻って来た。話を聞くと「流石に明日は休息日だ」と宣言したのでサイラスたちは心ゆくまで挑戦できる。
「他のパーティーには悪いけど勝者は私達よ」
ラスボス戦に挑むチャンスを得たサイラス一行はポーションやエリクサー、毒消し草など事前に得た情報を元に必要となるアイテムを揃え、少し緊張した面持ちで宮殿の入り口へと向かう。
「さあ、みんなで開けるんだ。少し奥に入っただけで奴らがわんさか湧いて来るらしいぞ」
「いいね腕がなるよ、サイラス今日中にボス戦に挑もうじゃないの」
ラスボスが住む宮殿に通ずる大きな扉の前に立つサイラス達は”せーの”と声を掛け、気合いを入れ扉を押すと、ゴゴゴと重低音を響かせラストクエストの道が開かれる。
「来る!数十匹以上の敵が来ます」
耳の良いロズリーヌが先頭に立ち索敵を開始すると、50mも進まないうちに大量のモンスターが迫りくるのを感知したのか、声を上げた数秒後にドドドと地響きのような振動が伝わり嫌でも緊張感が高まり始める。
「雑魚ばかりだな、悪いが瞬殺だ!」
宮殿の広場に出た辺りでワラワラと湧き出てきたモンスターと退治することになるが、知らぬ間に背後からも現れ周りを取り囲まれてしまう。敵を一瞥したサイラスはレベルが低いとわかった瞬間、円陣を組む指示は出さずに思いっきり突っ込み横殴りの一太刀を浴びせ、刃に掛かった数匹が血飛沫を上げ絶命する。
「燃えよ異物どもめ、メガファイヤ!」
ティアナも負けじと魔法の杖を振り払い火炎系魔法が放たれると、まるで火炎放射器の業火で蹂躙するように後方から迫りくるモンスターたちを瞬時に黒焦げにしていく。
「ふん、やはり数だけで柔いな、さあ宮殿までの道を切り開くぞ」
「援護します!」
切り込むサイラスをロズリーヌが魔法を付与した弓を使い援護する。弦を引き発射した弓矢は瞬時に散弾の様に広がり、数匹のモンスターに対しベッドショットを決めていた。他の仲間もそれに続けと肉弾戦やロングソードを振り回し次々に屠って行く。
<<30分後・・>>
「よし、宮殿に入れば奴らは追跡はしてこない筈だ。さあ中に入れ!」
強力な仲間と共にラストクエストに挑むサイラス達は順調にモンスターを倒し、宮殿に侵入を果たす事になるが・・。
<<宮殿大広間>>
「ククク、だれかと思えばロズリーヌじゃないか、今回は特別な戦いをしよう」
RPGといえば玄関から入るのがセオリーだろう。と言うか侵入経路はそこにしか設定されてなく、正面から入るといきなり大広間に出てしまった。そして程なくすると大きな影が現れ、よく見れば、人相が更に悪くなった極悪人の様なスネイプが姿を表す。
「お母様を傷つけたクソスネイプ、覚悟しなさい!」
ロズリーヌがいきり立つのはいいが、現れたスネイプは青鬼の様に肌が青白く角も生え、驚くべきはなんと身長は3m程はありこれはかなりの手強い相手だろう。血糊がべっとりと付いたままの鉄の棍棒が握りしめられ、そして何やら特別な戦いと言い放つと急に全ての扉がバタンバタンと勝手に締まり、窓を含むすべての出入り口が塞がれてしまう。
「ヤバいよ扉が閉まるって聞いてないよ」
冒険者仲間の情報だとパーティーが全滅しそうになれば開けっ放しの扉から出るだけで、撤退の先にモンスターは現れることは無いと聞いていた。なので閉じ込められるなどありえないのだが、スネイプはロズリーヌを見て拉致したいのかこれ幸いに戦いの方針に切り替えた。
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