その後のI・F・G王国(2)
意外に長くなってすみません・・。
<<3年後・ビット村近くの森の中>>
ビット村近くの森の中でサイラスとティアナが簡易のテーブルセットを広げ、妖精たちと仲良くお茶をしていた。もちろん妖精と仲が良いロズリーヌから極意を聞き今日で3回目だったりする。
妖精「お茶のお礼よ、これあげるね」
サイラス「よし!妖精の涙をゲットしたぞ」
17歳になったサイラスは魔導剣士として実力を伸ばし、気がつけば勇者の証を取得して念願だった勇者にジョブチェンジを果たしていた。いま彼が手にしているのは目の前にふわりと飛ぶ妖精から恵んでもらった「妖精の涙」と言われる貴重な薄緑色に輝く小さな結晶体だ。
「難しかったねサイラス、勇者と魔法使いが妖精と3回もお茶しないと貰えないなんて想定外よ」
ティアナはアデール直伝の魔法を与えられ厳しい修行を行い、こちらも気がつけば魔道士まで上り詰め、I・F・G王国の中でも指折りの術者と言われるほどに成長していた。そして今日はとあるクエストをクリアした記念すべき日で、ゲットした妖精の涙を持ってアルテミシアとの謁見に挑む事になる。
<<エルフ城・謁見の間>>
レイモン「間も無くアルテミシア女王様が参られる。跪き頭を下げよ」
謁見の間に入ったサイラスのパーティー5名は緊張感が増す中レイモンに言われ跪き女王をを待つ。程なくしてカツカツと床を鳴らす音が聞こえ入り口に立つ侍女が深く頭を下げると、黒いドレスを身に纏い赤いヒールを穿いたアルテミシアが颯爽と現れた。悪政を引く女王が無理難題を申し付ける設定なので冒険者と対峙する場合は悪趣味な洋装に着替えて対応するのだ。
「よくぞ我が出した5つのクエスト全てを解き明かした。其方たちは褒美として魔神族領に入れる通行証と、人数分のエリクサーを授けよう」
手に入れた妖精の涙を含むクエストで得たアイテムを差し出すと判定機の上に乗せ、真贋を確かめたアルテミシアは本物と分かるとニヤリと口角を上げた。
「ありがとうございますアルテミシア女王様」
声を揃えて感謝の言葉を現す5人の冒険者達は、サイラスをリーダーとして魔道士ティアナ、元乗組員の僧侶戦士ルーベル、騎士のアウグストが加わり、更に弓使いの名手ダークエルフの《《ロズリーヌ》》を加えた5人でパーティーを組んでいた。そしてアルテミシアが出したクエストをコンプリートして魔神領内に入る権利を手に入れるのだった。
「魔人族領コボルル村は遠いぞレベルを上げつつゆっくりと向かうがよい。何せラスボスは強いのでな」
「承知しました女王様、必ずラスボスを倒しこの国の頂点を目指します」
魔人族領に存在する《《コボルル村》》はラスボスが住むダンジョンに挑戦する前にダニエレを倒し村自体を完全破壊しなければならない。この国の頂点を目指しリアルRPGの世界に挑み早15年。サイラスはあの日交わした約束を信じ通行証を受け取るとキリリと気合の入った眼差しに変わりエルフ城を後にするのだった。
ーー
<<数ヶ月後・魔神族領コボルル村付近>>
サイラス「そろそろコボルル村が見えて来る筈だ」
少しばかりの草原と荒れ地が続く街道を一台の馬車がゴトゴトとサイラス一行を乗せ、目的地であるコボルル村を目指し早数ヶ月が過ぎようとしていた。転移魔法陣を使えばと思われるがRPGアルアルで現地に入りして登録しないと使えない。なので遠いこの地まで自分たちの足を使いやって来た。
ロズリーヌ「そうですねー、村が近いから助平さんがポコポコと沸きますね(笑」
ティアナ「もう、魔神族は若い女の子を見るとなんで興奮するのよ、全くもう(オコ」
魔神族領に入り1番厄介だったのはモンスターより魔神族の男たちだ。宿場町に入ればセキュリティーが保証され襲われることはないが、一歩でも外に出ると女性ばかりを狙いスケベ心全開で狙ってくる。もちろん可愛らしいロズリーヌも狙われるものの峰打ち用の弓をガンガン打ち込み牽制しつつ、持ち前の身軽さを使いチョロチョロと逃げ回り難を逃れていた。しかし魔道士のティアナは小物相手に魔法を使いたくないのか、魔法の杖を使い追い払っているのでいつも集中攻撃を受け頭にきていた。
「そういうなティアナ、残るコボルル村を破壊さえすればラスボスが住むダンジョンだ」
魔神族の村コボルルは最終局面となる最初の難関で、ダニエレ村長を含む一定数の村民を倒すと通行証が発行される。そしてその先にあるダンジョンの最深部に君臨する悪の権化、「《《白髮》》の《《フェリーク》》」を倒せばゲーム終了だ。今まで350組が魔神族討伐に挑み25組がダンジョンに入る権利を有している。しかし完全クリアはゲームがスタートして十数年経つがたった3組しか達成できていない。
「絶対に今までの仕返しをしてやるんだから(オコ」
「ティアナは細くひ弱に見えて私より豊満だから尚更狙われるんだよね〜(笑」
ロズリーヌは洋介に誘われFPSを体験するとゲーム世界の魅力に取り憑かれ、自分が住むリアルRPGの世界で頂点を目指すと母親であるアルテミシアに宣言すると快諾され、必死になって弓の練習を行い名手と言われるまでに成長していた。因みに何故、快諾したのかその理由が明らかになるのはもう少し後の事だ。そして歯に衣着せぬ物言いをする彼女に対しティアナはジト目に変わる。
「煩いわ!弦切り王女様(笑」
「キャー、ソレ言わないで〜(恥」
「弓使いのワンパン王女様(笑」
最近ロズリーヌには「弦切り王女」と「ワンパン王女」というふたつ名が付いていた。遠距離を狙い重い弦を引くために筋トレをしすぎたのが原因で、女性用はおろか男性用の弦まで引きちぎるほどの剛腕の持ち主だ。なので長袖とアーマーで隠してはいるものの、実はムキムキマッスル娘で接近戦も得意だったりする。
「さて、貧素な村長をぶっ飛ばして終わりにしよう」
「貧素とは失礼な奴め、このクソ冒険者どもめ負けてビギンに帰りやがれ」
コボルル村の前まで来たサイラスたちを撃退しようとダニエレが現れた。彼は罰として必ず冒険者と死ぬまで戦う事が義務付けられ、一応、復活の魔道具が与えられているので死ぬことは無いが毎回殺されれば苦痛には違いないだろう。そして討伐戦が始まりを迎えようとしていた。
「ここは私に任せて」
「ティアナ、一気にけりをつけるつもりなのか」
大きな魔法石が付いた魔法の杖を持つティアナが自信満々の表情を浮かべ、サイラスの前に立つと目を瞑り印を組み長い詠唱を始める。
「あのー、取り敢えず剣を交えてからにしませんか?」
「無駄だよ、もう詠唱に入っている。邪魔するなら俺達が相手するぞ」
テンプレ通りに行えば取り敢えずの初手は剣を交え相手のレベルを窺い、後日、要塞化したコボルル村の攻略に入るのが定番だ。最上位パーティーだと上手くやれば4日、長くても10日もあれば突破出来る。
ロズリーヌ「サイラス、とりまダニエレをヘッドショットしていいかな(笑」
ダニエレ「いや、貴女のそれ超反則技です(汗」
サイラス「まあ待てロズ、弓矢が勿体なぞ(笑」
ロズリーヌが弦を引くとギリギリと嫌な音が響き渡り、鏃が真っ赤に染まり始めていた。彼女は弓の戦士の中で珍しく魔法を付与して曲撃ちや多重攻撃が出来る「魔法弓使い」という稀有なジョブの持ち主だ。狙われたダニエレは百発百中の弓矢を見て完全にビビっていた。
「良いわよサイラス、準備が出来たわよ」
「ああ、思う存分やってくれないか」
詠唱を終え準備が整ったのかティアナはパチクリと目を開け印を解き、魔法の杖を握るとダニエレに向かってそれを向け、さっさと逃げだしなさいよと暗に語っていた。
「古より伝わる究極魔法よ魔神族の村コボルルを焼き払え、メテオ!」
アデール直伝の究極爆裂魔法メテオを使い短時間でこの村を木っ葉微塵に破壊するつもりだ。魔法の杖を高く掲げ魔法石が光り輝くと大空にキラリと光る無数の点がだんだん大きくなり始める。
「え゛!それいきなりは反則じゃないの〜」
「こんな村はちまちま攻略するより速攻で潰したほうが、タイパがいいもん!」
リケジョのティアナはチマチマ戦いポーションやエリクサーを浪費するよりも、究極魔法1発で村をぶっ飛ばしたほうがコスパが良いと計算していた。それに今まで尻を追い回された恨みを倍返しで返そうと心に決めていたので、ダニエレの戯言ごときでブレることは絶対に無い。
「来る、来るぞ!」
「みんなにげろー!」
光り輝いていた隕石は大気との摩擦熱が加わり真っ赤な極悪の火球へと変わろうとしていた。それを見たダニエレは狼狽え始め慌てて村に戻り避難指示を出す。
<<30秒後>>
∞「ゴー・・ドカーン」
数え切れないほどの無数の隕石が降り注ぎ、この日、魔神族の村コボルルは完全消滅した・・。
「はい、これがダンジョンに入る生態キーになります」
煤けた顔のダニエレは懐から生体認証用のトリコーダを取り出しサイラスたちに生体キーを転送する。そして究極魔法メテオで跡形もなくなったコボルル村は荒れ地へと変わり果て、吹き飛ばされた村人が戻ってくるとボチボチと後片付けを始めるのだった。
「どうも、もう作業に入っているから村は明後日迄には再構築できそうだね(笑」
ゲームストーリーの中で大量の爆薬や爆裂系魔法を使い完全破壊が出来るクエストの中でコボルル村は一番人気だ。とは言え毎回建て直すとなると費用も重なり時間もそれなりに必要になるので、早く安価に作るために3Dプリンターが導入され約2日程で元通りに復元が可能だったりする。
「そうですけど、午後からは別の冒険者が来るのでこれから《《第2》》コボルル村に移動なんです(諦」
隕石の爆発に巻き込まれ一度死んだダニエレはエルナの魔道具で復活を果たし事なきを得る。しかし次の予約が入っているのか何ともいえないやるせない表情を浮かべているものの、フィリーサを亡き者にしようとした彼は罰として寿命が来るその日までこの生活を続けなければならない。まあ温情として生活の自由を得ているのだから諦めるしかないだろう。
宜しければブクマ評価感想などお願いします。




