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第38話 トロワ・ヒルメルズ

「それじゃ、まずライカ……じゃなくてララァの為に改めて自己紹介するわ。『トロワ・ヒルメルズ』、この便利屋ナナツボシの社長で冒険者、アルカナ『戦車』の肩書も持つ機人族よ」

「私とテスの事は既に知っているだろうから紹介は省くが……、まぁ、よろしく」

「よろしく、でも冒険者と言っても今はほとんど引退して、こうやって社長やって生活してるのよ。ほら、これね」


 そう言ってトロワは義肢である左手をひらひらと振って見せる、さっきテスが言っていたが足も、目も、腕も失っているらしい。

 確かにそんな状態で冒険者稼業を続けるのは難しいだろう、体術を主にして戦う私なんて特に無理だ、考えるだけでもゾッとする。


「ま、失ったのは私じゃなくて、『私の娘』なんだけどね」

「第2世代を造ったのですか? いつの間に?」

「10年前くらいかしら、テスが居ない時だから知らなくて当然よ。あと、ナナ……『ナンバー7』とは婚姻関係なの、今は2人とも仕事で出かけているけど、帰ってきたら紹介するわ」

「えぇ……? ナンバー7と言えば……貴方と一緒に機人族領の防衛に当たっていた第1世代でしょう? え、そうなると誰が今機人族の国を守ってるんですか……?」


 テスの困惑と疑問は最もだ、機人族の、それも第1世代と言う最大戦力が職務放棄して人族領に来ているのだ、だからと言って攻め込もうと思う奴は居ないかも知れないが、あまりにも不用心過ぎはしないだろうか。


「あぁー、大丈夫よ大丈夫。今はナンバー2が国の運営してるし、演算能力に長けたあいつが、実質機人族の代表みたいになってるわ」

「国を離れた私が心配するのもなんですが……本当に大丈夫でしょうか」

「本当に大丈夫よ。今は昔と違って第2世代以降も性能が上がってるし、うちの娘見たら、第1世代とほとんど変わらないって分かるわよ」


 だが、機人族と言う種族は考え無しで動くような者達でない。


 ……と、テスが言っていたから大丈夫と言えば大丈夫なんだろう、知らんけど、私はテス以外の機人族ほとんど見たことないから、知らんけど。


「まぁ……トロワの家族事情は分かったが、娘に何かあったのか?」

「あぁ、そうそう。とは言っても娘が仕事に失敗して大怪我して、それで私の目と腕と足をあげちゃったのよ」

「あげちゃったって……そんなことしなくても、第1世代の身体と違って第2世代は部品や構造が簡単なのだから、機人族領に帰れば修繕できたでしょう?」

「そうだけど……んー、なんていうか、事情があるのよ。それに別に後悔も苦労もしてないわ、子の為なら何でもできるのが親、私の定義している家族はそういうもの、と言えばなんか素っ気ない風に見えるけどちゃんと愛情はあるわ、テスだってそうだったりするでしょ?」


 トロワにそう言われ、テスは納得したように頷く。

 テスもそうだ、『味覚』と言う機人族の身体では説明できない現象を知り、その原因を知るために、私達と旅を始めたという経緯があるのだ。


「だからこの杖、元々は普通に使えた狙撃銃だったけどもう使えないから、分解して組み直して、杖とハンドガンにしたのよ。片手で使えるサイズにしたら、自衛くらいは出来るからね」

「なるほど……貴方の事は分かりました。なんだかんだで元気そうですし、何より、幸せそうで良かったです、トロワ」

「そっちもね、ララァが居なくなって塞ぎ込むように研究室から出なくなって、皆言葉にはしてなかったけど、それなりに心配してたんだから」


 テスとトロワ、2人揃って笑い合う、その姿を私は微笑ましい気持ちで見ていた。


 兄弟姉妹の居ない私にとっては少し羨ましく思う、これまで会ったアルカナにまともな奴は居なかった、トロワもきっとそうだろうと思っていたが、テスの姉妹と呼べる間柄の彼女だ、犯罪紛いのことも請け負っていると言うのはきっと何か、噂みたいなのが独り歩きした結果に決まっている。


「さて、ではそろそろ頼みたい事とは何か、聞かせてくれないか?」

「あら、もういいの? まぁ気になる事が出来たらいつでも聞いてね」


 トロワがデスクに向かい、何か書類を持って戻って来る。


 書類には行方不明者として捜索依頼が出ている男性と、その調査結果について事細やかに記載されているらしい。

 恐らく、トロワの依頼とはこの男性の捜索なのだと、簡単に予想できた。


「貴方達には囚人の脱獄を手伝ってもらいたいの!!」



 しかし彼女の口から出た言葉は私とテスの想像の遥か上を行く、狂気の言葉だった。

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