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どうぶつたちのキャンプ 2  作者: 葵むらさき


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第103話

「そう」担当官が質問に対し肯定の返事をするよりも早く、

「どうして私にそれをさせるの?」コードベルーは質問の追加を高速で開始した。「オーストラレーシアにはもうすでに別のギルド員が行っているでしょう。どうしてこんな、海を隔てた島にいる私に命じるの? もしかしてさっきの担当に対してちょっとばかり苦言めいたことを言ったから? 報復のつもりなの?」

「そうではない」担当官は肯定しようとしていたところを急遽否定に変更しなければならなかった。「説明する」

「ええ、そうして」ベルーは受容を認可した。

「オーストラレーシアには」担当官は説明を開始した。「コードユムー、コードソユー、コードツトゥー、コードエヒュー、そしてコードイフーが滞在していた。しかし現在、そのいずれの者とも通信が取れなくなっている。理由としては恐らく」

 少しの間があった。

「恐らく?」

「全員死滅したものと思われる」担当官の説明は淡々とした調子のまま終了した。

「死滅?」ベルーは自分の声が──否、全身が震えるのを認めざるを得なかった。「どうして?」

 何もかもが「どうして?」でしかなかった。

「死因についてはまだ解明されていないが」担当官は相変わらず淡々と答える。「考えられることとして、狂犬病ウイルス、または別の微小生命体による作用である可能性が高いとされている」

「ちょっと待ちなさいよ」ベルーは恐れおののいている場合ではないと自分を焚きつけた。「狂犬病ウイルス、そいつに殺される可能性が高い土地に行って、その殺戮者をとっ捕まえて来いってこと? 要するに?」

「これはギルド本部の決定事項だ」担当官は申し伝えた。「拒絶するのであれば、コードベルーはギルドより除籍処分となる」

「──」自分を焚きつけた炎は一瞬にしてかき消された。どうする──否、考えるまでもない──否、考えることは許されない。「本部は、私にそれができると、判断したの?」

 その質問をしたのは、せめて自分には何某かの『価値』があるのだと、本部にそう認められているのだということを、確認したかったからだろう。

「そうだ」そして担当官は淡々と、さらにいえば地球時間で1ミリ秒の間も置かずにそう答えた。

 ベルーは森の木々を見つめながら「了解」と呟いた。

 コウハシショウビンの声はもう聞こえて来なかった。


          ◇◆◇


 モサヒーら一行は森から離れ、引き続きキャンディの脚力に頼る方法でしばらく西へと進んだ。

「この辺りで、うん、少し停まって下さい」

 モサヒーがキャンディに対しそのような指示を出したのは、森でも草原でも山でも海でもない、平坦でのっぺりとした土地だった。

 何もない所──否、そう見えたのはほんの一時だけで、実はその土地が非常に大きな意味を持つ、長い時間と濃密な仕事により『作成』されたものなのだということがすぐに判じられた。

 それは、農園だった。

 見渡す限りのっぺりとして見えるのは、丁寧に耕された形跡に他ならず、そこに生えている植物群は皆揃って同じ高さ、同じ太さ、同じ位の量の枝葉を伸ばし、同じ位の数の実を結んでいる。

「おい」ボブキャットが、何故か声を潜める。「ここって……人間のいるところじゃねえか」

「うん、はい」モサヒーは特に気にも止めぬ様子で頷く。

「こんなとこにいたら、見つかっちまうぞ」ボブキャットは声を潜めながらも叫ぶ。「こんなでっかいウマ」

「人間がいるのですか?」キャンディは辺りを見回した。「嬉しい。また一緒にゲームをしてもらえるのかしら」

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃねえぞ」ボブキャットは声を潜めながらも焦る。「全員とっ捕まって、それこそろくな目に遭わねえぞ。下手したらお前」

「うん、すぐに立ち去ります」モサヒーはそう言うとキャンディのたてがみから触手を解き、地面の上に降りて行った。「うん、モサヒーです、こんにちは」声をかける。

「え?」ボブキャットは声を潜めながらきょとんとする。「誰に──」


「んああ、んモサヒーか、ん待ってたよ」


 どこからともなく、答える声があった。

「うん、ストレプトマイセス・カトレヤさんですね」モサヒーが確認する。

「んああ、んそうです、んはじめまして」声の主はどこからかそのように答えた。

「え?」驚きの声を挙げたのは、コードセムーだった。「ストレプトマイセス?」彼女もまた確認しようとしたが、身動きを取ることはできずにいた。

 セムーはいまだ、モサヒーの触手に巻かれたままだったからだ。

「うん、では早速ですが」モサヒーは挨拶もそこそこに本題に入った。「この双葉に、うん、カルバペネムを与えて下さい」

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