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第十二話 未来への選択

 妹とライネルが連れ去られた王宮の謁見の間は、嵐の後のように静まり返っていた。

 玉座から王が深い吐息を漏らす。


「リリアナ嬢。……そなたには辛い思いをさせたな」


 その言葉に、私ははっと顔を上げた。

 王自らが私を労う――それは今まで決して得られなかった評価だった。


「私は……」

 何と答えてよいのか分からず、言葉を探していると。


「彼女は俺の妻です。何も心配なさらずともよい」

 隣のルークが堂々と告げた。

 その声音には、誰にも侵せない強い確信が宿っている。


(そうだわ……私はもう一人じゃない)



 王宮での一件の後、塔へと戻った私たち。

 緊張が解けたのか、深夜、私はルークの腕に縋るようにしていた。


「ルーク……私、本当にこれでよかったのでしょうか」


 不安が残る。

 妹は破滅し、家は失墜するだろう。

 その未来を想うと、胸がちくりと痛んだ。


 けれど、ルークは優しく私の髪を撫でてくれる。


「選んだのは君だ、リリアナ。俺はその決断を誇りに思う」


「誇りに……?」


「ああ。奪われ続けてきた人生を終わらせ、自分の未来を選んだ。

 それは誰にもできることじゃない」


 その言葉に、胸の奥が温かくなった。

 彼はいつも、私の弱さを見抜き、それでも支えてくれる。



「リリアナ」

 ふいに、ルークが真剣な瞳で私を見つめる。


「これから先、俺の塔で生きていくのは楽じゃない。

 王宮からも貴族からも、時に妬まれ、狙われることもあるだろう」


「……はい」


「それでも、俺と共に歩んでくれるか」


 静かな問いかけ。

 けれどそれは、あらゆる誓いよりも重い言葉に聞こえた。


 私はゆっくりと頷き、彼の手を取った。


「はい。私はルークと共に生きます。

 これからも、ずっと――」


 その瞬間、彼の腕が私を抱きしめ、唇が重なった。

 深く、長く、甘い口づけ。

 これまで流した涙をすべて溶かしてしまうような、永遠の誓い。



 夜明け。

 窓辺から差し込む光の中、私はルークの胸に寄り添いながら、未来を思い描いた。


(私は奪われるだけの令嬢ではない。愛され、守られ、共に歩む妻――)


 彼と出会い、選び取った道。

 その先に待つものがどれほど険しくても、恐れることはない。


 だって私の隣には、愛する人がいるのだから。


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