エピローグ 塔の上の幸福
あの王宮での騒動から、ひと月が過ぎた。
メリアナとライネルは断罪され、二度と私たちの前に現れることはない。
クロフォード家は失墜したけれど、不思議と心は軽かった。
私は今、ルークと共に塔で暮らしている。
朝は陽の光で目を覚まし、塔の書庫で彼に魔術の知識を教わり、
夜は暖炉のそばで肩を並べて過ごす。
――それは、誰からも奪われることのない、私だけの幸福。
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「リリアナ」
振り向けば、いつものように彼が微笑んでいた。
「本を読みすぎだ。目を休めろ」
「ふふ……でも、あなたの研究は面白いのですもの」
私がそう言うと、彼は小さく肩をすくめ、けれど優しい瞳で私を見つめる。
「そんな君だからこそ、俺は惹かれたのかもしれないな」
頬が熱くなる。
彼はときどき、さらりと甘い言葉を口にするから心臓に悪い。
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夜。
塔の最上階の窓辺から、二人で満天の星を見上げていた。
「ルーク」
「ん?」
「私、今がとても幸せです。……でも、これからもずっと、そうであればいいなって」
小さな願いを口にすると、彼は真剣な顔でこちらを見た。
そして、私の手をとり、指先に口づけを落とす。
「君が望むなら、俺は一生その願いを叶え続けよう」
「……!」
「塔の中でも、世界の果てでも。君がいる場所が、俺の居場所だ」
その言葉に、胸の奥が甘く溶けていく。
涙が滲みそうになって、私はそっと彼に抱きついた。
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窓の外、星々が瞬く。
その光は、まるで未来を祝福してくれているかのようだった。
(私はもう奪われない。愛され、選ばれ、そして――)
この人と共に歩む。
それが、私の未来のすべてだ。
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――Fin




