24話、続*葵と団長さんと初酒場
「エール2つ、お待ちどー!」
ドンッ!と勢いよく置かれたエール。
薄いビールみたいに書かれてたの見たけどアメリカのビールみたいな感じ?
「ありがとうございます!」
見た目も年齢も変えて転移させてもらったけど中身はまんま日本人、お礼はちゃんと言います。
「ありがとう」団長さんも言ってた。偉い偉い。
「料理はもうすぐ出来るからね!」
「はーい。」誰かに作ってもらって出来立てで食べれるの良いよね。それだけで幸せ。
エールが来たおかげでさっきまでの沈んだ空気がどっか言った気がする!お姉さんは神様かしら!
とか色々考えてたら団長さんと目があった。
「君の無事を祝っての飲みだからな、さっきの話は忘れてくれ!」
「あ、はい。忘れときます。」
「ふっ!ふふ。とりあえず乾杯だ!」
「乾杯!」カチャンッ!と2つのジョッキが音を立てる。
忘れてくれって言ったの団長さんなのに、なんで笑うんだよー!!
「あ、私の無事を祝ってってなんでですか?他にも街を出てる冒険者いらっしゃいますよね?」
誘われた時から疑問だったんだけどね?
「最近オークの目撃情報が多発してたから、集落があるんじゃないかって話は少し前から出てたんだ。目撃情報も北側に集中してたようだ。」
団長さんはそこで区切ってエールを一口。
「そんな時ただの魔法練習をしに行っただけの君が帰って来ない。入った方向も違えばフェンリルが従魔だから大丈夫だと思っても、なかなか心配で…オークは魔物でも人間でも繁殖に使うが、特に女性を狙うとからな」
………言えない。スノーからそのオークの集落に突っ込まれましたって、言えない。
私から言わなくてもすぐバレるだろうけど。
そもそも心配してくれてるのに嘘つけない。
えーい!ままよ!
「あの、この流れで非常に言いにくいんですが…。魔法練習の仕上げみたいな感じでスノーと行って倒しました…」
途中から尻すぼみに声小さくなったけど許してください!
「………………。」
チラッ。
唖然とされてる。そりゃそうだ。
「門にたどり着いた時には大丈夫そうだったが、本当に怪我は無いのか?無理はしてないか?」
「スノーが守ってくれてたので魔力切れでぶっ倒れたくらいで、全くの無傷です!」
「そうか…。うん。そうか。…………」
って言ったっきり俯いてる。
周りは騒がしいはずなのになんでこんなに静かに思える!
ん?静かすぎじゃない?ほんとに周りの声聞こえないけど?
チラッと横目で周囲を確認……… 。
なんでみんなこっち見てるのーっ!?
団長さんだけじゃなくてお店の中の皆んなが沈黙して
かれこれ5分くらい経ったでしょうか。
いい加減耐え切れなくなってきたからそーっとジョッキを持ってエールを飲む。半分くらいを一気に飲む。
「今、オークの集落にお前さんと従魔だけで行って討伐したって聞こえた気がするんだが、確かなのか?」
団長さんの後ろから眼帯に髭のごっついおじさんが出てきて聞いてきたから
「本当です。私の従魔、フェンリルなので…」
って我ながら小さっと思うくらい小さい声で言ったのに
「「「「うぉーーーーっ!!!」」」」
って急にテンション上げるからびっくり!!
「お前さんなかなかやるな!Bランクパーティー3つとあとCランクが4〜5つくらいはいねぇと集落なんて落とせねぇのに1人と1匹でやったのか!」
「フェンリル連れの冒険者の噂は聞いてたがあんただったのか!」
「俺もフェンリルくらいすげーな従魔にしてみてぇー!」
「そもそもフェンリルって本当に居たんだな!?」
とか色々あっちこっちから声が飛んできて、どう対応していいかわからない。
スノーの事怖がられてないどころか、ここでも肯定的なの喜びたいんだけど、目の前の団長さんが俯いてる。なんなら拳握って震えてる。オーラがすっごく怖いんだけど!
様子を伺ってたら
「なんでそんな無茶をしたんだ!!!」
って物凄い剣幕で怒鳴られた。
我慢する間もなく涙が出る。
「す、すッ、すの!…スノーに、連れッ…行かれて…」
グスグス、エグエグしながら必死で声出しても言葉になってるかもわかんない。
私、悪くない。そこに連れてったのスノーだもん!
オーク気持ち悪いし死にたくないし、スノー居るから大丈夫だと思ってても怖かったし、夢にも出てきそうで本当は今もビビってるのに、なんで怒られなきゃいけないの?
心配してもらえたのは嬉しいけど、いきなり怒鳴られるのは違うと思う。
ちゃんと反論したいのに怒鳴り声が怖すぎて声が出ない。
昔から怒鳴り声が大の苦手なんだよ。
理由はわかんないけど。とにかく平常心になれない。
てか息も上手く吸えない。はぁはぁ言ってたら
背中さすられて結構ビクついた。
振り向いたらいつの間にか髭眼帯のおじさんが居て、私の背中さすってくれてた。
んでおじさんが団長さんに諭すような感じで話かけた。
「団長さんよぉ、なにもそんなに怒鳴らんでもいいだろぉ」
「俺は彼女が心配で!」
「心配ったって、この嬢ちゃんはフェンリルが従魔の冒険者だろう?ならそれが仕事で、生きて帰ってきたんだからいいだろぉが。」
「彼女はまだ冒険者になりたてだぞ!」
「なりたてで集落に行った理由は?騎士団の団長やってんなら怒鳴る前に冷静に聞けよ。」
って言われて少し言葉に詰まった団長さん。
そしたら見てた人の1人、身長小さめなのにがっちりした長い髭のおじさんが話に入ってきて
「半信半疑で聞いてた話だから間違ってるかもしれんが、この嬢ちゃんが通ってきたのは件の森で、おまけにそこで暮らしてたんじゃなかったか?その話を団長さん自ら聞いて、街に入れたって門衛が話してたがよ?」
「そうだ!だが森で魔物を取ってたのは養父で彼女じゃない!それなのに冒険者になっていきなりオークの集落に単身で乗り込むなんて!」
またヒートアップしそうな団長さん。
髭長おじさんは
「フェンリル連れてんのにオークなんて雑魚だろ。大体あんたが怒鳴った後、途切れ途切れだが連れてかれたって言ってなかったか?」
って言いながらこっち見たから頷く。
髭眼帯のおじさんは相変わらず背中さすってくれてるから
呼吸が少しだけ落ち着いてきた。
ふぅーー。




