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天空のリヴァイアサン  作者: 朧塚
混沌の世へ。
119/121

魔王ジュスティス。再び、ジャベリンへ。 1

 その怪物は、巨大な翼の無いドラゴンのようなオオトカゲのような形状をしていた。

 背中から、翼の代わりに大量の人間の腕が巻き付かれながら樹木のように生えていた。


 そして、身体中から人間の上半身を生やしていた。

 その人間達はまるでその化け物の体内を泳ぐように身体を動かしうごめいていた。

 これまでのキメラ達と違い、明らかにこの怪物に移植された人間達は、苦痛と助けの声を求めて叫び声を上げていた。


 山岳地帯に現れたその化け物は、人々を襲っては食べていた。

 食べられた者達は、キメラの一部となって巨大な怪物の身体の一部で苦しんでいた。


「悪趣味と外道さ。卑劣さが、また酷くあがったわね」

 ロゼッタは生理的嫌悪感と怒りを伴いながら叫ぶ。


 魔王ジュスティスは、真っ黒な聖職者風のデザインをしたローブに包まれながら、岩の一つに腰掛けて、ロゼッタとエレス、サラナを見下ろしていた。


「いや。一応の美学として、僕は人間の死体をキメラにしても、素材に元の意思を残して、生きたまま苦しませる事は無いよ。流石に、それは悪趣味過ぎるだろう? キメラ使いとしての最低限の美学なんだけどねえ」

 生きたままキメラにしたエートルの事を完全に無かった事にして、倫理の魔王は嘲り笑う。完全に、ロゼッタ達をコケにして挑発している顔だった。


「じゃあ、こいつは何だって言うのよ。言っている意味が分からない」

 ロゼッタは挑発を完全に無視して、魔法の杖を向ける。

 このキメラが明らかに、今までジュスティスが使っていたキメラとは違う事は一目瞭然だった。明らかに何かが違う。


「こいつ? この化け物を君達の力で楽にしてやってくれないか? この化け物は、僕が『ローズ・ガーデン』に向かった時に見つけた、施設内に閉じ込められていた化け物だよ、僕の使うキメラとは違う。この化け物は、僕の技術で作ったものじゃないな。何百年も前に、魔法学院と偽って数多の未成年、児童達が集められた魔法学院の生徒達の成れの果だよ。まあ、成れの果ての一つと言ってもいいかな。『ローズ・ガーデン』は、僕も正直、ドン引きするくらいに、非道極まりない実験の結果と、その産物が大量に残されていたよ」

 ジュスティスは、飄々とした言葉で言い放つ。


「それをお前が生物兵器として、再利用している時点で、お前も充分非道よっ!」

 ロゼッタはアクアリウムの解き放つ準備を行う。


「そして、エートルは苦しんでいなかったとも?」

 杖の先に、水流の刃が生まれていく。


「少なくとも、あの少年は、精神的にはどうあれ、彼は肉体的には苦しんでいなかった。このキメラは、キメラにされた後も激痛でのたうち回り発狂を続けている」

 ジュスティスは、露骨に詭弁極まりない事を述べる。


 巨大な怪物の上半身から剥き出しにされている、かつて人間だった者達は両手を広げていく。そして、どうやら魔法の詠唱を行っているみたいだった。


 炎や氷や瓦礫の飛散といった魔法の数々が、巨大なキメラの一部から放たれていく。


 ロゼッタ達は、それらの攻撃を避けていきながら、反撃の準備を行っていた。


「本当に最低に外道極まりないデザインの、モンスターねっ!」

 ロゼッタは怒り狂いながら、水の刃を巨大な怪物の身体から生えている人間達に向けていく。ダメージを受けても、すぐに再生していくみたいだった。


 エレスがロゼッタに追随する形で、自らの雷の魔法『レディ・キラー』を放つ。

 電撃が、巨大な怪物全体の身体に直撃する。

 そして、サラナも魔法のスクロールを広げて、一般魔法の炎の弾丸を怪物へとぶつけていく。


「処で、あの魔法学院ローズ・ガーデンには行ってきたの? どうやって入れたの?」

 ロゼッタは、今度はジュスティスに対して、水の刃を向ける。


「行ってきたよ。入り方は秘密だ」

 ジュスティスは唇に人差し指を当てる。


 ローズ・ガーデンは、世界の何処かに封印されており、この世界から切り離された異空間に隔離されているとロゼッタは聞かされている。一体、そこでどんな非道な人体実験が行われていたのかは、ロゼッタにはまるで分からない。

彼女からすると、まるで神話のような存在だ。フリースやサンテは関係者らしいが、やはり実感が分からない。

未だに実在していて、眼の前の宿敵が、実際にそこに行ってきたという事実は、少し理解が追い付かないものだった。


 自然と、エレスとサラナは巨大なキメラとの戦いの担当。

 ロゼッタは、ジュスティス本人との戦いの担当になった。


 ロゼッタは水流を空中に生み出して、小型ミサイルのように飛ばしていく。


「それにしても。ロゼッタ王女、君は本当に僕とよく似ている。成長に対して強い探求心で、何度でもくじけず、立ち上がろうとするのだからねっ!」

 ジュスティスも何処からともなく、魔法の杖のようなものを取り出す。

 そして、ロゼッタの攻撃を杖によって弾き飛ばす。


「私はお前とは似ていない。ふざけるな。私は一国を背負っている王女だ。お前のようなただただ無責任な邪悪と一緒にするなっ!」


「ははっ? それはどうかな? 君は本当に表情によく出るんだねっ!」

 彼は何処までも嘲り笑っていた。


「私と鏡のように似ている“鏡像関係の悪”は、ベドラムやステンノーだっ! 彼らは腐れ外道だか、一国を暴君や独裁者として背負っている。私も未来の可能性として、ジャベリンが拡大化すれば、彼らのような暴力による支配や、独裁による支配を行うかもしれない…………。でも、お前は違うっ! お前と私は何処までもいっても、混じり合わない平行線だ。私はお前が一番、大嫌いだっ!」


 二人は両手に持った得物を激突させていた。

 互いが互いを宿敵として、睨み合う。


 ロゼッタは、ジュスティスから少し離れる。

 辺り一帯に、アクアリウムの空間が生まれていく。

 そして、この空中水族館から生まれた魚達は、まるでサンテの召喚する海の魔物のように、標的目掛けて襲い掛かっていく。つまりジュスティスにだ。


「魔王サンテのヴァンダリズムと君の魔法は似ているね。でも彼女が召喚なら、君のは生命の生成なのかな?」

 倫理の魔王は、杖の先から小さな爆撃の一般魔法を放っていって、襲い来る魚達を迎撃していく。

 小さな炎の渦によって、魚達は燃やされていく。

 

 エレスとサラナの方は、かなり苦戦しているみたいだった。

 明らかに、ジュスティスがローズ・ガーデンから持ち込んだキメラが強過ぎる。


 ロゼッタは彼女達の方を、ちらちらと見ていた。


「ジャベリンの山岳地帯に出る魔物も使ってね」


 ジュスティスは、ロゼッタから距離を一度、おきながら、懐から小さな宝箱のようなものを取り出して、この辺りの山岳地帯に放り投げる。


 すると、無数の頭部と無数の腕を持つ一つ目のサイクロプスのモンスターのキメラが一体、現れる。そして五体程の、大量の頭を持った狼型のキメラも現れる。


「さて。僕一人やあのキメラ一体に苦戦している君達は、僕は物量で推す事を忘れていたんじゃないかな?」

 そう言って、ジュスティスはせせら笑いながら、背中に白鳥のような翼を生やしてロゼッタから離れていく。


 ロゼッタは、ジュスティスが新たに解き放ったキメラ達に混乱していた。

 どれから倒せばいい?


 その時だった。


 無数の頭部を持つ一つ目巨人のキメラの頭部に、無数の矢が放たれていく。


 同時に、狼型のキメラ達を、瞬く間に、両手に持った短刀によって切り刻んでいく女の姿が現れた。


 ダーシャとアネモネの二人だった。


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