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天空のリヴァイアサン  作者: 朧塚
混沌の世へ。
118/121

間章 ジュスティスの脅威。

 エレスの家族は全員生存している。

 エレスの家族は「幸運」を限定的に操作する魔法を使えるので、全員、生存している。

 ただ自分達家系のみに適応される魔法なので他者に対しての実用性は無い。…………。


 エレスは家族を全て失ったサラナや、バグナクの冒険者の知り合い達に対して彼女なりに強く心を痛めていた。


 二人は王宮を歩きながら、今日もロゼッタの手伝いに向かう。


「エレス。今日は何かロゼッタ様から何か言いたい事があると言われたんだけど、何を言われるんだろうね。重大な報告らしいけど」

 サラナは笑顔の裏に陰を帯びながら、いつも笑っている。


 どうしようもない不平等さの中で、二人は生きている。

 


「魔王ジュスティスがエル・ミラージュに現れた。アネモネからの報告だけど」

 ロゼッタは書類を手にしながら、かなり厳しい顔でソファーに座っていた。


 彼女はかなり厳しい顔をしていた。


「出現したのは、数日前。本来なら、電子機器によって即座に伝達するつもりだったらしいけれど。何をやってくるか分からない混乱を防ぐ為に、数日間、情報をジャベリン側に隠蔽する算段だったらしい。私としては即座に情報が欲しかったけど…………アネモネの判断らしい。ただでさえ共通の敵をソレイユに固定している段階で、ジャベリンへの伝達に悩んだらしい」


 ロゼッタは寝不足の顔と、身体中から疲労が取れない様子だった。

 空中要塞の実質的な最高責任者及びベドラムの参謀でもあるディザレシーに稽古を付けて貰う事になったらしい。


「今度こそ、地獄に送ってやるわ。絶対に逃がさない」


「その事ですが。ロゼッタ様」

 サラナはおそるおそる言う。


「どうしたの?」


「これは、推測。推理の段階らしいですが、アネモネ様は“内通者”がいるのではないか? と、分析しています。ジュスティスのメンタルティを分析したうえで、ジュスティスは誰かをジャベリンの内通者として、とっくの昔に送り込んでいるのではないかと。……勿論、確証が無いので、アネモネ様からはその推測は言わない方がいいとは言われておりますが」


「…………。内通者か。在り得るわね。その方が自然と言っても差し支えないわね」


 ロゼッタは腕を組み、ソファーでリラックスしながら天井を仰ぎ見ながら思考する。

 つまり、スパイを焙り出す思考をしなければならない事になってしまっている。


 イリシュはまず在り得ない。恋人の仇だ。

 ベドラムもまず無い。彼女の性格のみならず彼女は奴に母親を殺されていると聞かされた。

 ダーシャもまず無いだろう。理由が無い。

 騎士団長のヴァルドガルトや、ロゼッタの両親もまず無い。

 

 そうやって、ロゼッタはジャベリン王宮に近付ける者達。王族周辺の者達。そして徹底して“ジュスティスとの利害が一致する者”を考え続けていった。


 一番、怪しいのはフリースだが。

 彼女はそもそも合理主義の極みであって、わざわざジュスティスを組む理由も分からない。となると、消去法として一番、怪しいのは…………。


「オリヴィ?」

 あの赤髪の男は、情報によると、マスカレイドの政権争いの為に、吸血鬼ソレイユを利用しようとしているらしい。もっとも、ロゼッタは彼と彼の国の事は知った事ではないので、オリヴィの存在は放置していたのだが。

 そして、オリヴィの姿が最近、見えない。

 一体、彼は今、何処で何をしているのか……。


「なんにせよ、ジュスティスの評価を聞いていく限り、奴は倫理の魔王だけど。実質は“混沌の体現者”よ。一体、次は何をしてくるのかまるで分からない」

 ロゼッタは、本当に心の底から不快そうな顔をしていた。


「そう言えば、フリースさんは今、どうしているんですか?」

 サラナは訊ねる。


「天体観測所に篭り切っている。私が彼女を権力から“左遷”する形にしたからね。特権を行使させて貰ったわよ。あんな何を考えているのか、裏で何をしているのか分からないような人物を権力の座に就かせたままにするわけにはいかないから」

 ロゼッタは平然と、言い放った。


 サラナは少しだけ冷や汗を掻く。

 眼の前にいる王女は、この国の“最高権力者”なのだ。ふらりと庶民達の集う酒場にこそ現れるが、彼女の一存で自分の人生の命運が決まってもおかしくない立場にあるのだ。

 もしかすると、ロゼッタもまた“独裁者の素質”があるのではないか?

 最近、よく関わる事によって、サラナには薄っすらとそんな事を考える事もある。


 部屋の扉が勢いよくノックされる。


「誰? 入って!」

 ロゼッタは叫ぶ。


 城内の兵士達数名だった。


「ロゼッタ王女様! ジャベリン南西の崖付近に、巨大な怪物が現れましたっ! 形状からすると、新種のキメラと思われますっ! 既に兵士達の何名もが負傷していますっ!」


「成程。噂をすればね。エレス、サラナ。役に立って貰うわよっ!」

 ロゼッタは書類を机に置いて立ち上がる。


「貴方達は増援として、エルフのダーシャとエル・ミラージュのエージェントであるアネモネを探して連れてきて。正直、ジュスティスとの戦いは、数が多い方がいいわ。どんな罠を仕掛けてくるのか分からないから」

 そうロゼッタは兵士達に告げる


「あの。ベドラム様とディザレシー様は?」

 兵士が訊ねる。


「ベドラムはディザレシーいわく、世界を放浪中らしい。世界征服を仕掛けた結果、エル・ミラージュとの全面戦争になった為に、しばらく世界全体を放浪して考え事をしたいと言い放って不在。まったくっ、無責任極まりない! で、その為に、空中要塞の最高権力者はディザレシーという状態。ディザレシーは“最後の切り札”。本人としても、私としても彼はまだ切りたくないカード。ディザレシーに何らか不幸があれば、ジャベリンにも空中要塞にも……下手をすると協定を結び、共通の敵を決めているエル・ミラージュにまでダメージが行きかねない。だから、ディザレシーは“最強”だとしても、戦力として使いたくない。彼は最強だけど無敵でも不老不死でも万能でも無い。そう本人が言っていた。だから、ディザレシーには伝達だけしてっ!」


 そう言って、ロゼッタは武器の杖を手にすると、兵士の横を通り抜けて走りながら、キメラの現れた場所へと向かっていった。


「魔王ジュスティスくらい、私達だけで倒してやるっ!」


 後からエレスとサラナも彼女の後を追うように向かう。


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