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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
最終話 神を討つ戦鬼
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11-6


 ディライトを飲み込んだ白狼が、空中でクルリと向きを変える。進むその先、眼下に見えるのは虹魔木の巨大な幹だ。


「こいつで積み重なった憎しみと哀しみ、一切合切楽にしてやるっ!!」


 ブランクが叫び白狼が瞬時に加速する。閃光のようなスピードで、虹魔木の頂点からかぶりつくように衝突した。

 幹の頂点から根元へ、枝から枝へ、白い光が一気に虹魔木全体へと広がり包み込む。そのまま輝きを増した次の瞬間、バラバラと細かな灰に変わり崩れ出した。


「これで……」


いつの間に現れたのか、元居た屋上に立ちその崩壊を見上げている。否、その目線はさらに上、空間に開いた異世界の穴を凝視していた。


「君の思う通りだよ……ブランク君」


 ブランクの背後でディライトが呟くように話しかける。その身体は殆どが灰化し、残った首元を含む頭部も徐々に灰へと変わっていった。


「……私と虹魔木の消滅。これによって、あの扉を支えている力は消える。間もなく、何事も無かったかのように閉じるだろう」


「……そうか」


「ああ…………どうやら私に残された時間は少ないようだ。最期に一つ、老人のわがままを聞いてはくれないだろうか」


 ブランクは応えない。しかし、そうなるとわかっていたかのように、ディライトは構わず続ける。


「人類を守ろうとした私を討ち倒したんだ。後の事は任せ…………」


 その先は、ブランクの優れた聴覚センサーでも何も捉えられなかった。ただ、灰が崩れるカサリという軽い音だけが小さく鳴った。


「…………ああ、もちろんだよ。ディスコネクト」


 ブランクを光が包み込む。光が消え現れた八葉が、ぐらつく新に肩を貸し支える。


「っ……悪いな、八葉」


「いや……ふん、流石に消耗し過ぎたな。まあ、良い……皆の所へ帰ろう、新」


『それは賛成だね。支えていた虹魔木が消えて、このビルはもうじき倒壊するだろう』


 八葉に頷き返し、新が両足に力を込めた瞬間、腕に巻かれたブランクギアから、哲也の声が響いた。


「哲也! お前、生きてたのか!?」


『新……あれはあくまで遠隔操作のチェイサーが爆発しただけだよ。とは言え、このままじゃあ僕もビルと心中だ。キツイだろうけれど、助けてくれるとありがたいね』


 旧友哲也の相変わらずの口調に、新が思わず微笑む。


「……だ、そうだ。仕方ない、もういっちょやるか、八葉」


 まだ少しフラつく足を踏ん張り、新が八葉から離れる。そのままいつものように、八葉へと手を伸ばした。

 八葉もまた、小さく微笑むと新へと手を伸ばす。


「ああ、流石にここまで来て見捨てるのは寝覚めが悪いな……っ!」


 手と手が触れ合う瞬間、八葉の動きがピタリと止まる。


「ん? どうした、八葉?」


 不思議そうに新が首を傾げる。新の位置からは良く見えなかったが、うつむいた八葉の顔はどんどん赤くなっていった。


「な、なんでもないっ! ひ、憑依合身!」


 首をブンブン振ると、半ば自棄気味に八葉が新の手を握り叫ぶ。その気迫に新も気圧されながら、続けて叫んだ。


「お、おう……エクシード・コネクトッ!」


◆


「ふう……なんとか凌げたっすね……」


 虚木超常現象研究所の屋根の上、変身した椿が肩で大きく息を吸い込む。

 全身の装甲は、ところどころひび割れ、シュウシュウと白煙をあげていた。

 足元、研究所の中では律や楓、智秋達が避難住民と共に固まるように寄り添っている。

 回復した椿は、全速力でここへ戻ると、全員を家の中へと押し込んだ。

 ブランクとディライトの、神クラスのぶつかり合いから生まれるエネルギーの余波から、ただ一人で守る為だ。


「やれやれ、少しは加減を……出来る相手じゃ無かったすね」


 椿がフッと空を見上げる。そこに開いた異界の扉は、今まさにゆっくりと閉じ始めたところだ。


「何はともあれ、良くやったっすね、新っち。流石は姐さんが選んだ、あたしの自慢の弟子っす!」


 鬼面の奥、満面の笑みを浮かべ頷く椿。その時、足元から椿を呼ぶ声がする。見れば智秋と律が、椿に向かって大きく手を振っていた。

 それに大きく手を振って応えると、この街と世界を救った英雄二人を迎えに、椿は大きく屋根を蹴って跳んだ。

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