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「ぐぅっ!」
打ち合ったのは幾度目になるのか……ブランクとディライトの右拳が正面からぶつかり合い、閃光と共に重い衝撃波を放つ。一瞬静止したように見えた両者の拳は、しかしブランクの力に押し切られる形でディライトの腕を吹き飛ばした。
「……何故だ。この身は既に神を受け入れた器。真なる神の力が、たかが人の生み出した神に、何故こうも容易くっ……!」
ブランクの追撃を躱す為、後方へと大きく跳ぶディライト。すぐさま右腕を再生したが、その声色には焦燥が現れ始めていた。
「それがお前の限界だからだ、ディライト」
距離を取るディライトに対し、ブランクは動かない。ただ、ディライトをじっと見つめ、小さく首を振った。
「人の願いは、魂は、想いは、欲望は、時に醜く汚れ、あの邪悪な神魔すら産み出す。けれど、いつだって人類のそばに有り、困難を乗り越えさせてきた。お前はその力を軽んじ、絶望し、捨てたんだ。今お前の前に居る俺達は、そうして切り捨てられた世界の願い全てを背負って立っている。お前の相手はこの全世界だっ!」
「馬鹿なっ! ならば人の願いごときに、あの未来を覆す力があるというのかっ! 私は認めないっ、全人類の明日の為、今ここでその世界全て、消してくれようっっ!! オオオオオッッ!!」
ディライトが高く跳び上がり吼える。空中で突き出した右脚に、その身に纏う虹色の光が次々に集まり凝縮されていく。
「……分からず屋の頑固者め……仕方ない、やるぞっ!」
ブランクの体から、色取り取りの小さな光が次々と飛び出していく。それ等は空中で、様々な異形の姿を映し出すと、再びディライトの体内へと戻っていった。
「ハァァッッ!! オーバー・コネクトッ! エクセス・チャージッ!」
ブランクの長きに渡る闘い、そこで打倒し浄化吸収した、全神魔の結晶がブランクの力に重ねられていく。赤や青や黄、そして黒色の光が重なれば重なるほどに、ブランクの全身を覆う真白の輝きはより強さを増していった。
全ての光を飲み込むと、ブランクがディライトへ向けて跳ぶ。
「これが最後だ……世界を背負うと自称するならば、見事私も打ち倒してみせたまえっ、ブランク君っ!」
虹色の光が圧縮され、超エネルギーの塊となった右脚を伸ばしたままブランクへと加速するディライト。ブランクもまた、ディライトと同じ様に右脚を突き出す。
「応っ! バイツ・フィニッシャー!!」
ブランクの全身を、溢れ出したかつてない程の光が覆う。光は巨大な白狼へ姿を変え、一直線にディライトへと突き進んだ。
ぶつかり合う極限の力と力、互いの全力を出した攻撃は、やはりどちらも負けず時空すら揺るがしながら拮抗する。
「っつ! ……まだだっ! 私が倒れた先に人類の未来はっ……」
虹色の光が更に増し、ディライトの右脚を輝かせる。既に限界を超えているのだろう証拠に、ディライトの装甲に小さなヒビが走った。
だが、そうして増した力はジリと白狼を押し始める。
その時、ディライトの背後に影が射した。
『父さん……もういいだろう……』
破壊され倒れていたはずのチェイサーが、ディライトの背後に跳ぶと、装甲の隙間から何本ものケーブルをディライトへと絡ませる。
『父さんの望みは僕達が引き継ぐ。だから、父さんはもう、眠ってくれっ!』
哲也の声と共に、チェイサーの内部が強く輝く。輝きは瞬時に熱と衝撃に変わり、チェイサーの本体ごとディライトを飲み込んだ。
「くっ!?」
並みの神魔ならば大ダメージを負ったであろうチェイサーの自爆。しかし、ディライトの堅牢な装甲には傷一つつかない。通常であれば、何一つ意味の無い行動だった。
だが、今はそれで十分だ。
「オオオッッッ!!!」
爆発で生じたディライトの僅かな隙、極々小さな力の緩みをブランクは見逃さない。
瞬間的に力を増し、白狼の巨大なアギトはディライトを一気に飲み込んだ。




