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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
最終話 神を討つ戦鬼
126/130

11-4

「……それが神狼、真の大口真神の姿か」


 光が収まり、現れたブランクの姿を見て、ディライトが呟く。その声を聞き、ブランクは大きく首を振る。


「違うな、これは八葉と俺の、そしてそんな俺達を支えてくれた皆の願いが顕現した姿だ」


 不思議な感覚だ……ブランクの中で新はそう感じていた。いつものように、自身の中に八葉を感じない……というよりも、まるで自分が八葉になったような錯覚を覚える。今ディライトに向けた言葉も、新自身が発したもののはずだが、同時に八葉が喋ったようにも思えた。


(俺《あらた》と八葉《わたし》の境界が曖昧になるくらい、混ざりあっているってことか……)


 そう思ったのは、新か八葉か、それともその両者か。とにかくブランクはそう結論づけると、改めて自身の姿を眺めた。全身を覆う白い装甲は、堅牢で神秘的な金属でありながら、同時にしなやかな生体の印象を受ける。その金属装甲からは何本もの白い光が、まるで獣毛のようにたなびき揺れている。

 ブランク自身が見る事は出来ないが、狼頭そのものな形状の頭部装甲も、同様の光に覆われ傍目には輝く毛皮を持つ人狼に見えた。


「そうか……皆の願い、か。ならば、全人類の明日を掴むため、その儚い願いを踏みしだくとしよう。行くぞっ!」


 言い終わるやいなや、ディライトの姿が搔き消える。次の瞬間、ブランクの右下方に回り込んだディライトが、現れると同時に鋭い右突きを下から捻り込むように放つ。

 超スピードの移動と、死角から必殺の一撃……しかし、その攻撃をブランクは僅かに後方へと身を逸らしただけで躱す。


「くっ!」


 ブランクの光毛とディライトの拳が、数ミリ単位で擦れ合いチッと小さな音を立てるが、拳は完全に空を切る。微かに崩れた体勢を狙うように、ブランクがディライトの身体を蹴りあげた。


━━ガギンッ!━━


 激しい音と共にディライトが派手に吹き飛ぶ。咄嗟に左腕でブランクの蹴りを受け、直撃こそ避けたものの、全身を虹魔木の幹に打ち付けられ、ディライトは仮面の奥でくぐもった声を漏らし動きを止めた。


「まだまだっ!」


 左腕をダラリと下げ、幹に体を預けたように動かないディライトへブランクが跳ぶ。その勢いのまま、ドロップキックの要領でディライトの胸へと両脚を打ち込んだ。

 グシャリと嫌な感触がブランクの脚に伝わる。硬い胸部装甲ごと、ディライトの心肺が貫かれ粉砕される。


「ハッ!」


 幹を蹴る事で、泥のように粘つく液体で赤く染まった両脚を引き抜き、ディライトの前に着地したブランクが更に拳を次々と打ち込む。ディライトだった残骸は次第に形を失っていった。


「……どうやら私自身のスペックを、既に大きく超えたようだな」


 ブランクの頭上、飛び散った肉片の一部が蠢き増殖し、みるみるディライトの装甲に覆われた頭部を構成すると、相変わらずの落ち着いた調子で喋りだす。


「それだけの力があれば……いや、まだ決着はついてはいないな」


 ズリズリとディライトの全身が再生されていく。


「とは言え、このままでは私の勝ちはないだろう。仕方ない、少々無理をさせてもらおう……ハァッ!」


 完全に再生したディライトが、空へと両手を差し伸べた。それが合図であったかのように、虚空に開いたままの、異界の神が蠢く穴から虹色の光がディライトへと降り注ぐ。

 全身に虹色のオーラを滾らせ、ディライトが右手をブランクに向かって振り払った。


「ッ……!?」


 ディライトの手から伸びる虹色の光を、ブランクが交差した両腕で防御する。以前のブランクであれば、瞬時に消し飛んでいたであろう攻撃を防ぎきるが、同時に目の前に現れたディライトのボディブロウが直撃する。


「くっ!」


「ふん、どうかな。未だ完全に制御出来ないが、なかなかのパワーだろう?」


「……この力、まさか……」


「言ったろう、ブランク君。既に虹魔木が無くとも、神との繋がりは出来ていると。そうして神から限界以上、引き出せるギリギリの力をこの身に降ろしたのだよ」


 ディライトの右拳が放たれた。その腕を傍から掴み、ブランクが唸る。


「馬鹿な! これだけの力、いくらギアの助けがあっても、ただじゃ済まないはずだ!」


「だろうね……だが、今更自分の寿命を伸ばそうなどとは思わんよ!」


 ディライトの右腕を包む虹色の光が輝きを増す。そうして力を増した腕で、ブランクの手を力任せに振り解く。


「だからこそ、君も全力を出したまえ、ブランク君!」


 輝きを増し、数十倍の威力を秘めた右拳を、ディライトが打ち込む。それに合わせるように、ブランクもまた右拳に力を込め放つ。


「おぉっ! チャージッ!」


 虹色の拳と、真白の拳が正面からぶつかり合う。両者の拳から生じた、途方も無いエネルギーは、互いにぶつかり、渦を巻き、行き場を失って二人を、そしてビルを中心に、周囲へと吹き荒れた。

 核爆発のような衝撃に、現存していた手名芽市のビルや家屋が次々と崩れ吹き飛ぶ。

 凄まじい破壊の嵐の中、まるで台風の目のように、虹魔木に守られ唯一無事なビルの上で、ブランクとディライトは更に攻撃を続けた。

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