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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第十話 真なる神と手無女伝説の終焉
120/130

10-13


 割れた空間の向こう。そこには星々がチカチカと瞬く夜空があった。

 ━━否、あれは夜空じゃない。ブランクは瞬時に、思考ではなく直感で理解したのだ。あれは━━


「宇宙……?」


 地上から眺める夜空では無い。まるで巨大な望遠鏡で覗いたように、割れた空間の先には、果てのない宇宙がそのまま広がっていた。


(どうやら……ここでは無い別の世界の、っすね。奴は自身の力とこの都市そのものを力場とする事で、姐さんと虹魔木の放つ世界の歪みを、極大化させ別の世界と繋げたようっす)


「別の宇宙……別の世界の……神……っ!?」


 この世界には居ない真の神を召喚する、そう言ったディライトの言葉を思い出した瞬間、ブランクの脚が勝手にガタガタと震えだした。ディライトの言葉を思い出したから、では無い。今まさに開ききろうとする空間の向こう、さっきまで何も感じなかったその場所に、途方も無い威圧感を感じたからだ。

 ブランクが感じ取ったそれは、椿にはより顕著に、明確にわかったのだろう。今までブランクが聞いた事のない、鋭い声が内部から響いた。


(これは……マズイっすよ、新っち! 今すぐ奴を止めるっす!!)


「応っ、エクセス・チャージッ!」


 自身の、生物としての本能が発する危険信号に従い、椿の声に応えるよりも早く駆け出しながら、ブランクが拳に再び力を集める。そうして放つ、必殺の一撃がディライトに触れる瞬間、空から降り注いだ虹色の光を受けて、虹魔木が強い光を放った。


「ジャッジメント・ブレイクッッ!!」


 拳から撃ち込まれる、ブランクの魂を込めた光。しかし、それはディライトの右手で、いとも容易く握りつぶされた。


「なっ……!?」


「……残念だったね、ブランク君。もう時間切れだ……二度目は無いんだよ」


 虹魔木同様に虹色の光を全身に纏ったディライトが軽く首を振る。そのまま、ジャッジメント・ブレイクを潰すために挙げた右手で、トンとブランクの胸に軽く触れた。


「人々の為、君は今までよく頑張った。けれども、ここから先は私が引き継ごう。君はもう休むといい……」


 ディライトの右手から虹色の光が放たれ、ブランクの胸を貫通する。その瞬間、突風に飛ばされる紙屑のようにブランクの体は吹き飛び、ビルの壁を何枚も何枚も突き破って地上へと落下していった。


「……さて、では始めるとしようか」


 ブランクの墜落を確認する事もせず、ディライトが空へと両手を伸ばす。その全身から、虹色のオーラが立ち上り、上空の穴へと吸い込まれていく。

 同時に虹魔木もまた、ビルに巻き付く枝を震わせながら、虹色の光を空へと伸ばしていった。

 ボコリ━━空に開いた穴、異なる宇宙へ開いた扉、二筋の光を吸い込み続ける、何も無いはずのそこが大きく泡立つ。泡はすぐに弾けたが、その一つを皮切りに、次から次へと泡が生まれ、遂には巨大な扉を埋め尽くす程に、テラテラと虹色に輝く泡達が地上を見降ろすように浮かんでいた。


◆


「くぅっ!」


 ディライトの攻撃で、一瞬意識を失っていたブランクが、落下の最中に目を覚ます。

 すぐにビルの壁に拳を打ち込み、落下を止める。


「……ふぅ、危なかったな」


 壁に突き刺した腕でぶら下がりながら、自身の胸部を触り調べるブランク。胸部装甲はディライトの右手そのままの形に穴が開き、そこから周囲に大きなひび割れが出来ている。ディライトの攻撃はそれほどのダメージだったが、不思議とブランク自身に痛みは少ない。


(……奴の攻撃は、あたしが受け止めたっす)


「椿!?」


 ブランクの声なき疑問に応えるように、その内部から椿の声が響いた。しかし、その声にいつもの明るさは感じられなかった。


(ううん……ちょっとばっかし、きつかったっすね)


「大丈夫なのか?」


(万全とは言い難いっす。とは言え、一時退却している時間は無いっすね。新っち、どのみちやるしか無いっすよ)


 ブランクが上空を見上げる。全容はビルそのものに隠れわからないが、ディライトが居るはずの場所から、虹色の光が空の穴へと吸い込まれていく。上で何か動きがあったのだと理解した。


「そう……だな。悪い! キツイかもしれないが、もう少し付き合ってくれ、椿!」


(それ自体の答えは当然イエスっすよ……けど、さっきの力……このまま戻って、奴に真っ直ぐ突っ込んでも新っちに勝ち目は薄いっすね)


「……っ!」


(そこで、あたしに一つ考えがあるっす。新っちに今すぐ代案が出せないなら、強制的に賛同してもらうっすよ)


 ブランクの中で、フククと椿が……やはり力無く笑った。

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