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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第十話 真なる神と手無女伝説の終焉
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10-10


「馬鹿な! 全人類を神魔にだとっ!」


「ふむ……そうだ。君と士郎君が下で戦ったヴァンガードも、その一端に過ぎない。……ああ、すまない。正確には違うな。新人類である魔人や神魔の糧にする為、旧人類も一定数残し管理した上で供給する事になるだろう」


「き、貴様ぁぁっ、チャージッ!!」


 叫び声と共に四肢に赤い光を纏わせ、低く地を滑るように、ブランクがディライトの懐へと一気に飛び込む。

 そのまま、下方から抉りこむように拳を突き上げた。


「……イグニッションッ!!」


 ディライトに触れた瞬間、ブランクの拳が白熱化し防ごうとしたディライトの両手ごと一気に爆ぜる。爆発によって吹き飛んだディライトを見据え、白煙をあげる拳を再び構えるブランク。その仮面の奥、スリットに隠された両目には、憤怒の炎が燃えていた。


「何が人類を生かすだ! 異形の支配する世界で、家畜のように喰われる……そのどこが救いだっ!」


「……それでも、人は、人の世界は残る」


 倒れたディライトが起き上がる。ブランク自身、想定していた事だが、金色の装甲には傷一つ無い。


「パラダイムシフトだよ、ブランク君。私達は、大きな変化を経て、新たな社会、新たな価値観を得るのだ。その世界で、旧人類は確かに自由では無いかもしれない……が、そこには飢えも病も争いも無い。あの怪異さえ打ち倒せば、人が未だかつて成し得なかった、真に平和な世界が訪れるのだ」


「ふんっ、詭弁だな。結局のところ、それは支配する化け物が変わるだけだ」


 ブランクの言葉に、ディライトがフゥと小さな溜息を漏らす。ゆっくり頭を振ると、カチャリと顎を撫でた。


「そうか……いや、君が私の同志になってくれるならば……そう思い、私の考えを全て伝えたのだが

。……良いだろう、あくまで今を生きる人の為に闘うと言うのならば、私もまた私の正義の為に、君を叩き乗り越えていくとしよう」


 ディライトの全身から発する圧力が増す。ただそれだけで、強敵だらけだった虹枝の誰よりも強い事を肌で感じ、ブランクが拳を強く握りしめた。


『来るっすよ、新っち!』


「ああ、行くぞ椿っ! クロス・チェンジッ!!」


 一際大きな赤い光が放たれ、ブランクへと収束する。先刻より更に鎧武者然とした姿へと変わったブランクが、飛びかかってきたディライトの左手刀を左手一本で受け止める。


「形態を変え力を増したか……しかし、その程度では、今の私にとって敵ではないっ!」


 ディライトの手刀に金色の光が宿る。ピシリとブランクの足元がひび割れ、僅かに沈み込んだ。


『この力……どうやら奴は、あたし達神の域にまで既に達しているっすね!』


「ああ、出し惜しみしている余裕は無いなぁ! セーフティデバイス・リリース! アンリミテッド・コネクトッ!!」


 ガチャリとブランクの装甲が動き、燃え上がる焔のような光が全身から立ち昇るように現れる。


「ハイチャージッ!」


 白熱化した手で、受け止めていたディライトの手刀を弾く。その隙を狙い、ブランクが右回し蹴りを放つが、ディライトの掌に無理矢理いなされた。


「くっ!」


「ヌッ……!」


 ブランクがグラリとフラつくが、無理な回避にディライトもまた体勢を崩す。その顔面に向けて、不安定な姿勢のままブランクが腕を振った。瞬時に腰から引き抜き、ブランクの指先から飛び出した二本の苦無が、ディライトの顔面に当たり、跳ね返され、眼前で爆発した。

 ディライトに目立った傷は無い。だが、そんな事はブランクの想定内だ。


「ハァッ……イグニッションッ!!」


 突然目の前で起きた爆発にたじろぐ……生物としての当たり前の反応が、ディライトに大きな隙を生んだ。ボディブロウの要領で打ち込んだブランクの拳は、今度こそディライトの胴へと突き刺さる。インパクトの瞬間に、拳に込められた力を一気に解放する事で、何倍もの衝撃へと変えたブランクの攻撃は、ディライトの装甲を大きく歪ませた。


「シィッ!」


 しかしブランクは攻撃の手を休めない。損傷したそばから、ディライトの装甲は内部の肉ごと再生を始める。その速度は神魔の比では無いからだ。

 それを証明するように、再び打ち込んだブランクの右拳は、ディライトの手でしっかりと受け止められた。


「今のは良い攻撃だっ……むっ?」


 ブルリと、拳を受け止めたディライトの腕が震える。ブランクの拳が、徐々にディライトの手を押し始めているのだ。


「何っ!?」


「ハァァッ!」


 遂にはディライトの掌をブランクの拳が打ち抜く。そのまま、回転する様に放つ右裏拳で、ディライトの横っ面を振り払うように打ちつけた。

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