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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第十話 真なる神と手無女伝説の終焉
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10-5


 光が椿の手からブランクの胸へと移る。椿が手を離すと、それは胸の上でグニグニと動き形を成した。ブランク自身からは見難かったが、どうやら何かの印の様な形状になったようだ。


「よし、と。これで準備は完了っす」


 ブランクの胸に光る印を満足そうに眺め、椿が手を一度だけ軽く振る。それが合図だったかのように、光はブランクの中へと、吸い込まれるように消えた。


「えっと……それで、今のは何だったんだ?」


「ん〜、簡単に言うと、仮契約っすかね?」


「仮契約……?」


「まあ、説明する時間も今は惜しいっすから、実践するっす!」


 そう言うと、椿が再びブランクの胸へポンと触れる。


「憑依合身っ!」


 椿が叫ぶと、赤い光がブランクと椿を包み込む。それは今まで幾度も、相棒である八葉と共に経験してきた光だ。

 戸惑いながらも半ば条件反射のように、ブランクも続けて叫んだ。


「えっ……エ、エクシード・コネクトッ!!」


 その瞬間、光が更に輝きを増し、爆発するように広がる。光は二人を呑み込んだまま地上に堕ちた太陽のように周囲を照らすと、すぐに消えた。


「こ……これは……」


 光が収まると、そこにはブランクが一人立っていた。

 しかし、その姿は数秒前とは大きく違う。全身を鮮やかな赤で染め上げ、装甲は鎧武者の様な形状へと変化した。赤いスリット状のセンサーアイが丸い双眸になった、髑髏を想わせる頭部には鋭い角が三本生え、それは、かつて新が夢幻門の中で手合わせした、椿の戦闘形態である鬼神殻鎧に良く似ていた。


「まさか、椿と憑依合身出来るとは……」


『ははは、その為の仮契約っす。まあ、基本的に山の主であるあたしは、下界に干渉しないし出来ない事になってるっすから、これは特別中の特別っすよ』


「いや、それでも今このタイミングで、この助力は本当にありがたい。ありがとう……いや、ありがとうございます、師匠!」


 ブランクの脳裏に、自分一人では救えず道端に倒れるまま放置してきた人々の姿が蘇る。拳を握りしめ、思わず椿へと、何も居ない前方の空間に向かって深く一礼するブランク。途端に椿が慌てたような声をあげた。


『やめるっす! 以前も言ったっすけどね、それ結構ムズムズするっすよ! コホン……そんじゃ、早速片付けるものを始末するとするっすかね』


「あ、ああ……よし! 行くぞ、椿!」


『あ、いや、ちょっと待つっすよ、新っち』


 次の神魔を目指し、走り出そうとしたブランクを、その中から椿が呼び止める。


「どうかしたか?」


『ん〜、説明が面倒だから、身体借りるっす。な〜に、神様の力ってやつを、見せてやるっすよ』


 まるで巨大化した椿に、背後から包まれたような感覚と共に、ブランクは身体の自由を失う。

 そのまま、勝手に手足が動き出したかと思うと、チャージした時の様に、赤い光が拳を覆った。意思を無視してブランクの身体は、その拳を足元の地面に向かって真っ直ぐ打ち込んだ。


『ほい、完了っす』


「今のは……?」


 椿による身体の支配が解かれ、ブランクが地面に目を向ける。


『まあ見てるっす。すぐに始まるっすよ』


 椿の言葉を証明する様に、それは突然起こった。

 大地が突然、グラグラと激しく揺れだしたのだ。


『この地を通る龍脈、そこへあたしの魂の一部を送ったっす。そうして、あたしの力を受けて方向性を与えられた、龍脈の強大な力は、ある目的に向かって増強し、枝分かれ、細分化を経て……』


 揺れが一層激しくなった瞬間、コンクリートを突き抜け白い光が何本も何本も吹き上がっていく。天まで届かんほどの光は柱のようになって、ブランクの見える限り手名芽市の至る所から出ているようだった。


『一気に吹き出す。こんな風にっすね』


「す、凄いな……でも、ある目的って……」


『やだなぁ、鈍いっすね、新っち。あの光の一本一本、その場所には神魔の依代となった人間が居たっす。やつを等の魂や気は、通常の生物とは違うっすからね。そこを狙って大地の気を使い、ぜーんぶ一気に浄化したってわけっす』


「浄化!? 市内全域の神魔をか!?」


『ある程度以上の神魔はともかく、昨日今日産まれたような奴は残らず全て浄化済みっす。まあ、このくらいの事、神なら出来て当然っす』


「でも、八葉はそんな事一度も……」


『う〜ん、新っちの契約したのが、本来の姐さんだったなら、余裕に出来た事だったっすよ』


「本来の……八葉?」


 規模の大きさに、にわかには信じ難い話だ。しかし、それを肯定する様に、ブランクの通信機能が着信を告げた。


『おい、ブランク聞こえるか! 今の光は一体……目の前で神魔が人に戻ったぞ!?』


「士郎か! ……驚かせてすまない、今のは俺の師匠である鬼神がやってくれたんだ! 今日、市内全域に発生した神魔が全て、これで浄化された筈だ」


『なっ!? そうなのか? まさかそんな芸当が……とは思うが、実際に起きた事だしな。わかった、とりあえず一旦合流するか?』


『ふむふむ、今の声は例の魔人になったって子っすか……新っち、この子の言う通り合流するっす』


「椿、士郎の事を知っているのか?」


『今朝からずっと、新っちのこと見てたっすからね。そんな事より、今ので市内の神魔は居なくなったっすが、同時に奴にもあたしの存在と力が気付かれたはずっす。なるべく早く、その士郎っちってのと一緒に、次の行動に移るっすよ!』


「わかった! 士郎合流しよう。落ち合う座標を送るから、そこへ向かってくれ!」


 通信を終え、ブランクもまた集合場所へと走り出す。


「ところで椿、次の行動って?」


『決まっているっす。奴を倒して虹魔木から姐さんを救い出すっす!』

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