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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第十話 真なる神と手無女伝説の終焉
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10-4


「グヒヒヒヒ、噂の神魔狩り、この程度とはな」


 ガチャリと戦斧を構え直し、ミノタウルスが下卑た笑いを浮かべる。


「はんっ、そんな余裕も今だけだ……チャージッ!」


 ブランクの両脚に光が灯る。八葉と憑依合身した青いブランクには遠く及ばないが、強化された脚力で離れた彼我の距離を一気に詰めた。


━━ギィンッ!━━


 ミノタウルスの戦斧とブランクのブレードがぶつかり火花を散らす。しかし、戦斧を軸に、刃を受けたままのブレードをクルリと回すようにブランクが跳び上がり、戦斧の上にヒラリと降り立つ。


「なっ……!?」


 ミノタウルスが驚き、ピタリと動きの止まった刹那、ブランクの姿が眼前から消えた。


「エクセス・チャージッ……ミノタウルス、今楽にしてやる」


 後頭部から聞こえた声が、ミノタウルスが最期に耳にした音だった。熱く燃えたぎるマグマのような刃が、ミノタウルスの頭頂部から深々と突き刺さり、それがブランクの攻撃だと理解するより早く、巨体は灰へと変わり崩れ落ちた。


「……ふぅ……並みの神魔なら、この姿でもどうにかなるな」


 ブランクが手にしたブレードを振り、一息つく。振り返ると、ジャングルジムの中で、互いに庇い合うように寄り添う人々へ声をかけた。


「あの、もう大丈夫です。俺はまた別の場所に行かないといけないの……」


「新さ……ブランクさん!」


 皆が怯えないよう、ゆっくり近づくブランク。その言葉を遮るように、奥から一人の少女が前へと出た。


「おっ……と、楓ちゃんか。無事で良かったよ」


「はい! み、皆さん、この方はあの怪物から人々を守ってくれるヒーローのブランクさんです! ブランクさんが来てくれたから、もう大丈夫ですよ!」


 楓が振り返り、不安そうな人々へ笑顔で話す。少なくとも自分達に危害を加える相手では無いとわかったからか、いくらか場の空気が緩んだ。


「ありがとう、楓ちゃん。でも、皆にはもう少し頑張ってもらわないといけないんだ。俺はこの場には留まれないから、皆だけで安全な超常現象研究所まで避難してほしい。俺が倒してきたから、ここから超常現象研究所までの道は、他に比べて神魔の数も圧倒的に少ないはずだ。……楓ちゃん、案内頼めるかな」


 ブランクの言葉に、楓の顔にも一瞬不安の色が見えた。しかし、すぐに笑顔を見せると、少女は力強く頷く。


「わかりました! 私に任せてください。だから、ブランクさんは……きっと無事に帰ってきてくださいね!」


 楓の言葉に同調するように、次々と後ろの人々も頷く。ブランクは一度深く頭を下げると、手を振る楓達を背後に残したまま、再び走り出す。

 そのまま公園を離れ路地を曲がった時、ブランクの目の前に突然、パーカーのフードを目深に被った人物が立ち塞がった。


「わっ、あぶっ……!」


 予期せぬ事態に、慌てて立ち止まろうとしたブランクだが、スピードが早すぎて到底間に合わない。なんとか衝突する直前で跳び越えようとした瞬間、伸びた手がその胸に触れ、ブランクをヒョイと頭上へ軽々持ち上げた。


「うっ、えぁ?」


 言葉にならない声がブランクから漏れる。金属装甲の塊であるブランクが、どう見ても人間の腕一本で持ち上げられたのだ。慌てるブランクだったが、聴き馴染んだ声がパーカーの奥から聞こえてきた。


「なるほど、ね。まだ諦めていないようで関心関心っす。この状況で良くやってるじゃないっすか、新っち」


「なっ……なんだ、椿か……」


「なんだ、とは失礼っすね。せっかく新っち達のピンチに、こうしてズバッと参上したっていうのに……」


 ブランクを放り投げ、フードを降ろすと椿はその頬をプクッと膨らませる。

 着地したブランクは、気まずそうに頭を掻いた。


「いや、まさか椿が山を降りているとは思わなくて……あ、八葉の事なんだけれど……」


「姐さんの事なら、もう知っているっす。残念ではあるっすけれど、今それを言っても仕方ないっす。むしろ、それで新っちが、本当にすべき事を見失って姐さんを言い訳にウダウダやっているようなら、頭張り倒すつもりで来たっすが……どうやら、その心配は要らないようっすね」


「……ああ、そんな俺を八葉は望まないだろうからな。あいつには、全部終わった後でゆっくり詫びるとするさ」


「なら、ひとまず今は良いっす。とりあえずこの騒ぎを、二人でとっとと終わらせるっすよ」


「そ、そうか! 椿が協力してくれるなら、これほど心強い事は無い。じゃあ、手分けして神魔を……」


 ズコンと重く響く音がブランクの言葉を中断させる。椿の軽いチョップがブランクの額に当たったのだ。

 もっとも、軽いチョップだと思っているのは椿だけで、まともに受けたブランクの頭部装甲は、それだけで軽く凹んだ。


「落ち着くっすよ、新っち。それよりもっと良い方法があるっす!」


「うぐっ……も、もっと良い方法?」


 クラクラする頭を振りながらブランクが尋ねる。

 椿はその疑問に答える事はせず、微笑みながら光る掌でブランクの胸に触れた。

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