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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第九話 虹枝の最期 灰塵と化す希望
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9-9


「くっ、お前っ……一体どういうつもりだ!」


 掴まれたアガルテが身を捩り叫ぶ。もう一人のブランクは、その返答だとばかりに結晶を握る手に力を込めた。

 ピシリと、結晶に亀裂が走る。


「ググァッ……何をする! ながっ、や、辞めろぉっ!」


 アガルテが踠き、肉の一部を鋭い刃へ変える。その刃がもう一人のブランクに触れるより早く、アガルテの結晶が粉々に砕け散った。


「がぁっ…………」


 途端にアガルテの肉も細かな灰と化し崩れ落ちた。

 その瞬間、まるで卵の殻のように、空間全体へ細かなヒビが入り、バラバラと剥がれていく。アガルテの消滅によって、結界そのものが崩れたのだ。

 空間が完全に崩れると、謎の白いブランクと対峙したまま、ブランクと士郎は再び、手名芽レインボータワーの隠しフロアに立っていた。割れた窓から吹き付ける夜風が、アガルテだった灰を吹き飛ばしていく。

 白いブランクは、手についた灰を払うと、ふうと一息つく。


「やれやれ……やっと片付いたな。いやあ、礼を言うよ、ブランク君、そして魔人なのに人の側に立ってくれた士郎君」


 白いブランクの中から、落ち着いた男の声が響いた。士郎は構えたまま尋ねる。


「……誰だ、あんたは……なあ、知っている奴か、ブランク」


 士郎が横のブランクに問いかけ、ブランクは小さく首を振った。その二人を広げた両手で制し頷くと、白いブランクが自分の首元に指を添える。


「ああ、それもそうか……この姿ではわからないのも無理は無いさ。ふふ、私だよ」


 カチャリ、首元のスイッチを操作すると、白いブランクの頭部装甲のみが解除される。現れた男の顔に、ブランクと士郎が驚きの声をあげた。


「おっさんっ!」


「中原会長!?」


 装甲が解除され現れたのは他でもない、新もよく知る人物……哲也の父親であり中原総合科学の長、中原哲史だった。

 哲史は、自身のツルリとした毛のない頭をペシリと叩いて笑う。


「ああ、そうだよ。二人とも久しぶりだね」


「まさか……会長が一体なぜブランクギアを装着しているんで……ん? 士郎も会長を知っているのか?」


「知っているさ……ある日突然訪ねて来て、俺達三人に、この憑依合身を教えてくれたのが、あのおっさんだよ。まさか、あの中原総合科学の会長だったとは知らなかったけどな」


「士郎君、君が人類の敵ではなく、やがてブランク君と共闘するだろう事は予想できたからね。より強くなれるようアドバイスしただけさ」


「ちょ、ちょっと待ってください。じゃあ会長は俺達……ブランクの事も、士郎の事も以前から全部知っていたって事ですか?」


「そうだよ。ハハハ、ここは私が立ち上げた都市だ。言うなれば私の庭みたいなものさ。ブランク……いや新君。君が息子と始めた神魔討伐の事も、街に害なす虹枝の会の企みも、それによって起こった士郎君達の悲劇や境遇も、ちゃんと全て知っている。だが、その頃の私には、それ等をどうこう出来る力は無かった……だからこうして、君達が虹枝に対抗する力を得る日まで、どれだけ待った事か……けれど、それも今日で終わった」


「じゃあ、そのブランクギアも?」


「ん、これか。哲也のデータをチョチョイと拝借し、私用に作ったものさ。なかなかの物だろう?」


 確かに会長である哲史なら哲也の個人データにアクセスする事も可能だろう、そうブランクが納得する。その様子を横目に、腕を組んだ士郎が哲史に尋ねる。


「で? 会長であるおっさん自ら、わざわざこうして出向いたのは、一体何の用でだ? 出てきたタイミングを見る限り、俺達に加勢しようってわけじゃなさそうだが……」


「それか、うん、それはな……チャージ」


 笑みを浮かべたまま、哲史が突然背後の壁を白く輝く拳で殴る。崩れ落ちた壁の向こうでは、黄金に輝く虹魔木が変わらず枝を伸ばしていた。


「虹魔木を……どうするつもりですか?」


「ん、何、人類の為になる事をやろうと思ってね……」


 哲史が士郎を指差す。その指先から青い光が発射されたかと思うと、光を受けた士郎の装甲が、デタラメにムクムクと膨張し始めた。


「な、なんだ!」


「士郎っ!」


 肥大化した装甲に動きを封じられ、身動きの全く取れない士郎。それに気を取られた一瞬の隙に、ブランクの懐へ哲史が飛び込んだ。


「なっ!?」


「チャージッ! セパレス・インパクトッ!!」


 哲史の白く輝く掌底が、ブランクの胴へそっと触れた瞬間、ブランクの全身を突き抜けるような衝撃が走り抜けた。

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