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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第九話 虹枝の最期 灰塵と化す希望
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9-8

◆


「ぐぅ……まさか、ここまでやるとはな……」


 バイツ・フィニッシャーとグレイプニル・ブレイク、超威力の攻撃を同時に受けたアガルテが、呻くように呟く。


「はっ、まさかはこっちの台詞だぜ、爺」


「ああ……アレを受けて、まだ立っているなんてな」


 士郎の呆れ声にブランクも同意する。そう、アガルテはまだ倒れてはいなかった。

 直撃する瞬間、両腕に力を注ぎ込み、盾として二人の攻撃を受けると同時に、その威力を外へと受け流したのだ。

 もちろん、それで助かったとはいえ、無傷というわけにはいかない。アガルテの両腕は装甲ごと肩から消失し、更に腹部は左右それぞれ大きく抉れ、暗い穴から臓物の切れ端が垂れ下がっていた。


「ふん……想定外の力だったな。まさか配下を取り込んだ士郎がここまで強くなっていたとは……」


 欠損を再生させながら、士郎が放つ追撃の蹴りをアガルテが器用に躱す。


「そしてブランク……いや忌まわしい山狗め。まさか不完全な貴様が、これほど力を取り戻していたとはな!」


 ブランクの拳を再生したばかりの腕で防ぐ。


「不完全……何のことだ!」


「……だが、私も私の目的の為、ここで敗れるつもりはない」


 ブランクの問い掛けには答えず、アガルテが背の龍達を再び持ち上げた。

 しかし、自身の再生を優先した為か、龍達には未だに回復する様子は無い。


「はぁああああっ!」


 その龍達が光の粒子へと変わる。黒い光は集い、再び三対六翼の黒い翼となった。


「焔だ、水だと、小手先で遊ぶのはお終いだ。ここからは私の全力でお相手しよう!」


 全身に黒い光を纏い、アガルテが飛びかかる。鋭い手刀がブランクの首元へと迫った。


「なっ!」


 だが、その腕をブランクがガッシリと掴む。そのまま力を込めて装甲の上から、アガルテの再生したばかりの腕をボギリと折った。


「ば、馬鹿なっ!」


 慌てた声を発しながら、逆の手で貫手を放つアガルテ。ブランクの腹部へ突き刺さるはずの指は、しかしブランクの肘と膝に挟まれ無残に潰された。


「な、何故だ! 六龍を取り込んだ私が、何故こうも!」


 叫び、蹴り上げた脚を受け止められる。ブランクはその脚を折り、更に立っている片脚の膝を蹴り抜いた。


「ガフゥッ!!」


 ドサリと倒れるアガルテ。再び再生を始めた四肢が、すぐさまブランクに踏みつぶされていく。


「気付いてないのか? 本当にわからないのか?」


 士郎が倒れたアガルテの首元を掴むと、胴体ごと持ち上げる。


「な、何がだ……」


 アガルテが訳の分からないまま尋ねる。それにブランクが腕を組みながら応えた。


「エネルギー切れなんだよ、お前はな。元々、六つもギアを同時に起動した上に、六龍含めて俺達に何度もやられ再生を繰り返した。極め付けはさっきの攻撃を凌いだ力、あの消費だ。いくら超人的な力を持つお前でも……いや、そんな並外れた力があるせいで、今まで気づかなかったんだろうな。今回の闘いで初めて同程度の俺達とやりあったんだろう……そのせいで自分の限界近くまで消耗してもわからないって訳だ。今のお前なら、俺一人でも簡単に勝てるぞ」


「な、何を馬鹿な……私の力が切れただと……ええい、この腕を離せ!」


 アガルテが掴んだ士郎の腕を解こうと、再生中の腕を伸ばす。しかし、再生は遅々として進まず、ようやく出来た指の無い掌で士郎の装甲をペチペチと叩くのが精一杯だ。


「離してやるさ……そしてこれでお別れだ、爺!」


「ながっ!?」


 士郎がアガルテの体を、上空高く投げ上げる。まるでロケットのように、アガルテの身体がグングンと高度を上げた。


「ブランクッ!」


「ああ、虹枝首領アガルテ、今俺達が楽にしてやる! エクセス・チャージッ!」


 再び青と黒の光に包まれたブランクと士郎が、アガルテ目掛け急上昇する。二つの光は絡み合い、一つの渦となって、今度こそ確実にアガルテを貫いた。

 同時に着地すると、士郎がブランクに頷く。


「……終わったな」


「ああ……」


 だが、当のブランクは、士郎に頷き返す事もせず、辺りをキョロキョロと見回していた。


「ん? どうかしたのか、ブランク?」


「いや……奴の核、結晶が見当たらなくてね……それにこの結界空間、主人が消滅したって言うのに、未だに崩れる気配も無い」


「……確かに妙だな」


『む! 新、あそこだ!』


 ブランクの中、八葉がブランクの意識を上空へと向けた。そこには黒い結晶にへばりつくようにまとわりつく拳大の肉が、蝙蝠のような翼を生やし必死に飛んでいた。

 肉は、ブランク達の視線に気付いたのか、唇を生やし邪悪に笑う。


「クハハハ、ブランクに士郎、とりあえず見事と褒めてやろう。しかし、トドメをさしきれないとは詰めが甘かったな……私は一先ず帰らせてもらおう。お前達は、そのまま結界内に残っているがいい。何、お前達が乾きと飢えで息絶えた後、しっかりと回収してやる」


「やろうっ、爺か! まだ生きていやがったか!」


『マズイぞ、新! 今ここで奴を逃せば、奴の言う通り、こちらに取り残されるぞ!』


「なっ、クソッ!」


 慌てて跳躍するブランク。しかし、その手が届くより先に、アガルテだった肉片の前で空間がグニャリと歪み、暗い穴が現れた。アガルテは素早くその中へ身を投じる。


「私に逆らった馬鹿者どもめ、さらばだ」


「く、くそっ!!」


 ブランクの目の前で穴が閉じる。その場所を殴ったが、拳はただ空を切っただけだった。


「こんな……後一歩だったのに……クッ!」


 着地したブランクが拳で地面を打つ。その肩を士郎が叩いた。


「お、おい……ブランク。アレって……」


 戸惑う士郎の声に釣られてブランクが顔をあげる。ちょうどアガルテが消えた辺り、その空中にヒビが入っていた。


「な、なんだ!?」


 二人の前でヒビは大きくなる。遂にはガラスのように粉々に割れ、一つの人影が降ってきた。

 

「なっ!?」


「お、お前は……?」


 ブランクと士郎が、着地し立ち上がった人物の姿に驚きの声を上げる。

 白い全身装甲に赤い光を放つスリットアイ。もがくアガルテを手に持ったそれは、八葉とコネクトする前のブランクそのものだったのだ。

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