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戦国時代に冒険ギルド設立します  作者: 不思議な人
第一章 近畿中部 乱戦編
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第三話 実質初仕事

炎楽が進行を始めて2日。


すでに戦場はカオスと化していた。


「右から来るぞ!」


他方から飛んでくる危険を知らせる声と共に、敵の攻撃が命を狙う。


「森田さん!」


「わかってらぁ! ドラァ!!」


無数の敵を、森田は両手に握りしめた2本の太刀で次々と返り討ちにする。


しかし――


「キリがないわね」


「はぁ、はぁ……僕はもうヘトヘトですけど……」


「ならなんでここまで来ちゃったの?正直、お荷物状態よ。あなた」


愛菜の辛辣な正論に、顔向けができない。

しかし、ここまで来たのにはちゃんとした理由があってのことだ。


「本陣からの伝言しに来たんだよ。俺がこんなとこ自分からって、ぬぉ!!」


もちろん、伝言を伝えに来た自分も敵の攻撃の例外ではない。

四方八方から槍と矢が命を狙ってくる。


つい1分前まで避けるのは得意だし、大丈夫だと思っていた自分がいた。


小中学校のドッジボール大会では、ボールをキャッチすることのできない自分は、動体視力でひたすらボールを避けて生き残っていた。最終的には自分しか残らなかった経験もある。


しかし、その自信もこの戦場では湧いてこない。


なにせ最近は、少しのランニング程度の運動しかしていない。息は絶え絶えだ。

ましてや天宮は、鎧を着ていても攻撃を喰らえば即1発KO。

そんな中で天宮は、この世界での実質初仕事に明け暮れていた。


「くそぉ! なんでこんな目にぃ!!」


「くっ! そんなのはどうでもいいから早く伝言を教えなさい!!」


「どうでもあって欲しくないんだけど! 伝言は、一時撤退しろって話だ!」


「ん!? なんでだ! 今アイツらを抑えれてる! ここで俺らが引くとマズいんじゃねぇのか!?」


2本の太刀で敵をいなしながら話してくる森田。


正直、ドン引きである。


「左から増援の兆しありって言ってました!」


その言葉により一層、森田の目が鋭くなる。

辺りを見渡し、最終的に天宮へ目を合わせた。


「天宮!」


「ハイ!」


「ここはこのまま維持する! 亀倉らに左側を対処させるよう伝言しに行ってくれ!」


「は、はい!!」


また走るのか…

やっぱ早くお家に帰りたい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


これは1日前のことだ


「想像以上に接敵が早いな。情報漏れか?」


「その感じ、しそうですね。もしくは単に守り続けてたか」


「だとしたら、相当なやる気だな」


炎楽は1日目の夜には、もう接敵していた。


「開戦は明日の朝だな。地形は平野と川。うーん、川かぁ」


流れはそこまで早くないものの、川は戦場の攻め側にとっては天敵である。


なぜなら、この時代の服は何枚も着込む上に鎧をつけるので、服が水を吸い上げて重くなり、体力を奪う。さらに、水で鎧が錆びて脆くなってしまう可能性もあるからだ。


それでも先に進むには、川を越えるしかない。


それが攻める側にとって、とても分が悪い所以だ。


「(こういう時、あの人ならどうするだろうか……)」


日々、森田はそう心で考え続けていた。


森田にとっての「あの人」

それは前回の転移事件の時の恩人であり、師でもあった。


多分あの人がいなければ、「不殺」など考えることすらできていなかっただろう。


「なぁ。相手って現代人か?」


「そこまでは……」


「そうか。まぁいいや。試したいことがあるから、俺の合図があるまで勝手に戦闘するなよ?」


「了解です。作戦は?」


「右から尾村さんらを回す。正面は俺らとお前らで、現代人計20人で対処だ。ちなみに増援は?」


「こちらはないかと。浅井家の本隊は姫路からぐるっと回るようですので。ただ、相手の方が少し不明ですね」


「わかった。んじゃ、そこら辺は臨機応変に」


「かしこまりました」


次の日の朝。


戦闘が始まる前の戦場。


互いに目を合わせ、少しの風が吹き、旗が揺れる。


気がぶつかり合うような緊張感の中、1人だけ体を大きくし、ありったけの息を吸って、大きな声で相手に話しかける人がいた。


森田さんだ。


「ごほん。おいオメェら! 俺らから一つ提案だ! こんにゃろう!」


急な提案に味方さえも動揺する。

誰も聞かされていない提案だったからだ。


「こういうのは少しぐらい聞かせてほしいものだ」と、亀倉さんが後ろで呟いていた。


亀倉さんですら聞かされていないことに、少しホッとした。


「勝負内容を変えようじゃないか! 安全な! 叩いて被ってじゃんけんぽんに!」


さっきの動揺がさらに強くなった。

相手は困惑していて、すごくなんとも言えないような顔つきだ。

しかし、不殺で事を進めるには良い内容でもある。

人殺しが常に起こる時代で、「叩いて被ってじゃんけんぽん」などという気の抜けた勝負内容は、とても森田さんらしかった。


――が、毎回相手が現代人とは限らない。


叩いて被ってじゃんけんぽんを知らない、この世界の武士からすれば、なんのことか訳もわからないだろう。


相手の顔を見る限り、多分この勝負方法を知らない。

だから――


「なんのことだかわからないが! 断る!! やれぇ!!」


数秒後。


無数の矢が飛んできた。


「ごめん、交渉決裂! 俺らも進めぇ!!」


「「うぉぉぉ!!」」


こうして、攻防戦が始まったのだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「亀倉さん!!」


戦場を走り抜けてきた天宮が、息を切らしながら叫ぶ。


「天宮さん! どうしました?」


天宮は必死に息を整えながら、森田から受けた指示を伝えた。


それに亀倉は同意したのか、一度首を縦に振る。


そしてさらに、


「天宮さん。僕からも本陣に伝言、森田さんの作戦の事を伝えてください。それと、次の指令が出るまで天宮さんは本陣待機を!」


「了解です。では!」


亀倉からの伝言を聞き、そこまで早くない足で天宮は本陣まで全力ダッシュをする。

死にたくないという一心で、矢を、槍を避けて1人伝言ゲームを続ける。


それが、この戦場で課せられた自分の役目だからだ。

が、とても嬉しくない役目でもあった。


最初から今の今まで、自信はない。


まず、このカオスな戦場で情報を整理し、味方に伝えることが必要である。

さらには体力面や味方の位置の把握、できるだけ早いスピードで伝えるなどなど、この伝言ゲームに必要なことが多い。

本当は馬に乗りたいところだが、まともに練習できておらず、すぐに振り落とされてしまうので徒歩で戦場をガンダッシュする。

戦いもできない自分にはうってつけで、唯一の仕事ではあるのだが、やはり嬉しくない役である。


戦場の合間を走り続け、はや10分。


まるで実家のような安心感のある本陣に帰ってきた。

もうここから出たくない。


「龍野さん! た、ただいまもどりまひた」


「なんて言ってるかわからないですよ……」


「す、すみみゃせん」


あまりに走ったせいで、口がうまく回らない。


仕方ないと思いつつ、恥ずかしさと情けなさもあった。


「にしても、よくあんなところ馬もなしに無傷で。森田さんはなんて?」


「はぁ、はぁ……それが、このまま退けないと、亀倉さんらを敵の増援に回して、自分はこのまま前進すると」


「そうですか。まぁ7割予想してましたけど、そうですよねぇ……了解です。天宮さんは休んで」


「そうさせてもらいます……」


まだ治らない乱れた呼吸のまま椅子に座り、大きなため息をつく。


戦場でため息なんてついて良いものではないのだろうが、許してほしい。


現代では、運動なんて滅多にしなかった時と比べると多少は体力がついているのだろうが、それではまるで足りない。

まだトレーニングしないといけないのかと、さらに大きなため息をついてしまった。


それと同時に、眠気が天宮を襲う。


「少しなら……」


そのまま天宮は、深い眠りへと誘われるのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


天宮が眠りについた頃、戦場では不可解なことが起きていた。


「敵が退いて行ってやがる?」


何事か。


あらゆる思考が巡る。

増援との部隊の再編成や、最も可能性の大きい罠の可能性。

だとすると、このまま勢いで前進はしにくい。


「全部隊につぐ! こいつぁ罠かもしれない! あまり前に出すぎるなぁ!」


できる限り大きな声で指令を言い渡す。


この時代にはマイクはもちろん、イヤホンや通信機なんて物は存在しない。

全て自分の声で頑張らなければならないのだ。

そんな中、この不便な時代の被害者が1人、森田の元へ駆け寄ってくる。


「森田さん! 織田家から知らせです!」


「んあぁ?」


「岸和田を陥落させたそうです!」


「はぁ!? 早すぎやしないか!?」


あまりに早い。


こちらの進軍は2日しか経っていないのだ。


それなのに、もう敵の本土を落としたというのか。


「まだあります。こちらも緊急に撤退した方がよろしいかと」


「なんでだ?」


「敵総大将、三好長慶含む、三好家残党が大軍を成してこちらに向かっているとの知らせも入ってきてます」


「なるほどな。そのための前の全力防衛だったってわけか」


今回のことで、前回の大阪攻めの時の奇妙な出来事にも頷けた。

三好はこのことを見越していたのだ。


となると、今からやる事は1つ


「その知らせ、了解したよ。だが、撤退はしない。今日は目の前の砦を取るぞ」


「な、ですが……」


「その大軍が来るのはまだ少し先。せっかく川を越えたのに、また逆戻りも嫌だろ? それと、こんな最前線の砦で陣を組み直すとは思いにくい。砦まで行くぞ」


「かしこまりました」


「総員! 今日の目標は砦だ! 死ぬんじゃねぇぞ!」


「ぬぉぉぉ!!」


漢気あふれる掛け声に頼もしくなる森田。


握りしめた2本の太刀を眺め、深く深呼吸する。

そして――

「(敵の本土は潰せたらしいが、敵の大将は生きている。てことはこっからが本番ってわけだ!)」

心の中で呟き、気合いを入れ直した。


2日後。


砦は容易に落とせた。


というか、ほぼもぬけの殻に等しかった。


1つ最悪だったのは、置き土産として治療し遅れ、死んでしまった兵がずらりと並んでいたことだった。

幸いにも、そこまで腐敗はしておらず、感染症がなかったのがまだ持ち直せた点だ。


しかし、本番はまだまだこれから。


情報によると、三好は石山で籠城しているらしく、とても厄介である。

石山御坊は、史実では織田に焼かれたそうなので、是非とも織田に任せたいところだ。


「そんなに都合良く行くとは思えないんだけどもなぁ……」


そんな独り言を吐いていると、門番が1人こちらへ向かって来た。


「森田さん、織田家の筆頭一門が石山御坊攻略戦の作戦を練りたいと訪問して来たのですが、どうしましょう」


「んぁ? あぁ……当主と幹部2人だけ中に入ってもらえ」


「かしこまりました」


案の定、まだまだゆっくりできなさそうだと、大きなため息をつく森田であった。

次回は9/12(土曜)

ファイトだ森田

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