↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
111/123

第110話 よくそんなの思い付いたな

 教授からの誘い。

 少々どころではなく怖い……いや。

 そこで、ふと思い出した。


「いや、俺、たぶんダンジョン教に狙われますよ?」


「なにかやらかしたのは聞いているが……そこまでのことをしたのかい?」


 教授が首を傾げる。


「向こうのカミサマの顔に泥を塗るくらいのことは?」


「ふむ」


 教授は少し考え込み、それからすぐに結論を出した。


「ならば……凪原君。君も来なさい」


「私ですか?」


「戦える人間がいたほうがいいだろうからね」


 まあ、それはそうだ。

 俺一人で教授についていくのは、さすがに不安が大きい。


「それと——浅葱君。君も来るといい」


「えっ」


 暦が、自分を指差した。


「わ、私ですか? 戦えませんよ!?」


 その言葉に、凪原さんがぴくりと反応した——ような気がした。

 

 いや、気のせいかもしれない。


「いや、戦力として期待しているわけではないよ」


 教授はあっさりと言う。


「君の能力のほうが重要だ」


「能力……ですか?」


「うむ。君なら、探索者番号のようなものでも一目で記憶できるだろう?」


「あ……」


 そうだった。

 暦には、あの瞬間記憶能力がある。

 確かに、研究室で書類を見るだけなら、彼女の力はかなり有効かもしれない。


 だが——。


「いや、だったら契約書の控えだけ持ってきてもらえばよくないですか?」


「念のため、というやつさ」


 教授が人差し指を立てる。


「それに、行く前に一つ、試してもらいたいことがある」


「試してもらいたいこと?」


「コアちゃんに、写真を作ってもらっていいかな?」


「写真?」


「……あ、わかりました!」


 教授が何を言いたいのか、暦には伝わったらしい。

 即座にコアちゃんのほうへ向かう。

 しばらくして、一枚の写真が出来上がった。


「ほら、できました」


「え?」


 受け取って、目を見開く。

 そこには、白根の姿がはっきりと写っていた。


「…………」


 あれ?


「こんな写真、ありましたっけ?」


「ありませんよ」


 暦が首を横に振る。


「これ、私の記憶です」


「記憶?」


「はい。私が覚えている白根さんの姿を、写真という形にしてもらったんです」


「なるほど……」


 そんな使い方があったのか。

 カメラアイとは、よく言ったものである。

 

 暦の記憶力と、コアちゃんの具現化能力。

 この二つが組み合わされば、見たものをそのまま写真として現像できるわけだ。


 しかも、これなら暦の具現化能力の弱点——見た目しか完璧に作れない、という問題も回避できる。


 必要なのは、あくまで写真だ。

 内部構造や機能なんて必要ない。

 見たものそのものを、見た目だけ再現すればいい。


 そりゃ強い。


「いや、便利すぎないか?」


「便利だが、彼女にしか許されないものだからね。普通の人間ではまず成立しない」


 教授が写真を眺めながら言う。


「でも、これなら同行させたら……面白いものが見つけられそうだね」


 凪原さんは、教授の狙いに気づいたようだ。


「面白いもの、ですか?」


「浅葱君には、これから私の研究室へ行き、ここへ戻ってくるまでの間、なるべく多くの人間を見てもらう」


「人間を?」


「そう。そして戻ってきたら——」


 教授が笑う。


「道中で見かけた人間を、片っ端から写真にしてもらう」


「…………」


 なんか、とんでもないことを言い出したぞ。


「いや教授、何言ってるんですか」


「もちろん、全員を疑うわけではないよ」


 教授が暦を見る。


「浅葱君。君は単眼の異形だ。街中を歩けば、どうしても目を引くだろう?」


「まあ……そうですね」


「凪原君も有翼種だ。私も多少は顔が知られている」


「多少?」


「そこは今どうでもいい」


「はい」


「つまり、普通なら視線を向ける理由はいくらでもある」


 そこで——教授が、俺を指差した。


「にもかかわらず、君たちを無視して——駆君に目を向けた人間を探す」


「…………」


「あ」


 暦が、意図を理解したように声を上げる。


「わかりました」


「うむ」


「つまり、ダンジョン教が本当に駆さんを探しているのか、確かめるということですね?」


「その通り」


 教授が満足そうに頷く。


「もし彼らが駆君の顔を知っていて、探しているのなら。これだけ目立つ人間が並んでいる中で、あえて駆君へ視線を向ける者がいるかもしれない」


「なるほど……」


「もちろん、見ただけでダンジョン教の人間だと決めつけるつもりはないよ」


 教授が付け加える。


「ただ、候補を絞る材料にはなるだろう?」


 なるほど。

 現場で暦が誰を怪しいと判断する必要はない。


 ただ見て、覚えて。

 帰ってから、それを写真として取り出せばいい。


 なんというか——急にスパイ映画みたいになってきたな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。