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担任の愛が重い。〜過保護な担任と最強お祖母ちゃんに、今日も溺愛されています〜  作者: 久茉莉himari


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9/16

【9】担任、ついに普通に名前を呼べました。〜物理を使って進化して、歌っ踊って逃げた件〜

翌日、莉緒は元気良く登校した。


菊乃が自家用車で登校したら? と言ってくれたが、桜ノ葉学院は基本的に自家用車での送り迎えは禁止なので断った。


(車で登校なんてしたら、速水先生に心配されちゃう!)


そう心の中で意気込む莉緒に、菊乃がホホホと嬉しそうに笑う。


「莉緒ちゃんが、元気になってくれて本当に良かったわ❤️」


そうして、菊乃は普段通り、莉緒を門の外まで見送った。




教室に入ると、既に登校していた紬に、莉緒が隣の席に座ると、にこりと微笑む。


「紬! 昨日は動画をありがとう!

何回も観ちゃった!」


すると、紬が莉緒の口を手で塞ぎ、小さな声で言った。


「莉緒――

あの動画は誰にも見せちゃ駄目だよ!?

あの動画は二人の秘密だからね……!」


紬は可憐な顔の中にある、クリっとした茶色がかった瞳を鋭くさせて言う。


莉緒がウンウンと頷くと、紬は莉緒の口元から手を離し、ハーッと深いため息を吐いた。


まるで、くたびれた管理職のように。


「……紬……どうしたの?」


莉緒が心配そうに訊いた時――

速水先生が「皆さん、おはようございます!」と颯爽と教室に入って来た。




そして、速水先生が出欠簿に手を掛ける。


莉緒以外のクラスメイトの目は、先生に釘付けだ。


もちろん、紬も。


すると、先生は言った。


「綾小路莉緒さん」


初めて莉緒の名前を普通に呼べた速水先生。


教室に広がるざわめき。


それは、速水先生が莉緒を普通に呼べたからでは無い。


莉緒が「はい」と答え、静かに手を挙げる。


そうして、莉緒が先生を見ると――

速水先生は透明な下敷きを、莉緒が座る方角に立てて持っていた。




速水先生が一旦職員室に戻り、授業の準備をしていると、隣りの菱田先生が言った。


「速水先生、昨日は部活で棒高跳びに熱中されていたとか?

お身体の具合は大丈夫ですか?」


速水先生が爽やかな笑顔で答える。


「全然!

最近、身体が鈍っていたので、良い運動になりました!」


そして、速水先生はすっと菱田先生に近づくと、低い声で言った。


「し・か・も!

僕は最初は無意識だったんですけど……メガホン越しだと、普通に喋られることに気がついて!

これで、完璧です!」


そうして、誇らしげに透明な下敷きを見せる速水先生。


菱田先生は、「そうですか! 良かったですね! お先に!」と言うと、そそくさと職員室を出て行く。


菱田先生は速水先生の説明が謎過ぎて、眉間に皺を寄せながら廊下を歩いていた。


(メガホン越しだと普通に喋られるって何!?

速水先生……今までメガホンなんか無くても、普通に喋っていたじゃないですか……!!

それに、透明な下敷きで、完璧って何!?

意味が全く分からない……!!

国語の先生ですよね……!? 速水先生!!)と。




そうして、昼休み。


紬がお弁当を食べながら、グビッとポットの冷茶を飲む。


莉緒が心配そうに口を開く。


「……紬……朝からなんだか変だけど……。

何かあったの?」


紬がポツリと答える。


「はやみん……昨日、動画を撮った時、もう普通のお猿さんじゃなくて、野生のお猿さんでさあ……。

それに……今朝、莉緒の名前ちゃんと呼べたじゃん?」


莉緒が美しい笑みを浮かべて答える。


「うん!

嬉しかった!」


すると、紬が瞳を見開いて、莉緒を見た。


「でもね……透明な下敷き使って呼んでたんだよ!?

次の鮎川さんには下敷き使って無かった……!!

もう……はやみんが分からん!」


莉緒はうーんと考えると、パッと笑顔になる。


「……もしかして!

速水先生って重度の花粉症なんじゃないかな!?

私の席は窓側だったから、下敷きで風を避けたとか!」


紬が心の中で叫ぶ。


(窓際の生徒は莉緒だけじゃないし!!

窓も開いて無いし!

下敷きを使ったのは莉緒だけなの!)


しかし、黒曜石のような丸く大きな瞳をキラキラ輝かせ、紬の返事を待っている莉緒に――

紬は、昨日からの疲れも相まって脱力し、「……かもね」と答えるのが精一杯だった。




今日は国語の授業は無かった。


そして、速水先生は帰りのホームルームでも、「綾小路莉緒さん」と呼ぶ時に、透明な下敷きを使った。


紬はもう何も言わなかった。


紬は感心してたのだ。


(はやみん……昨日、メガホンで莉緒に話しかけてる時、普通に喋ってた!!

物理越しだと、莉緒と普通に喋れるって気づいたんだ……!!

昨日、野生のお猿さんに戻ったから、一周回って道具を使うことを覚えたのか……。

今日は莉緒を見てもピョンピョン飛んで無いし、はやみん進化してる!!)と。


そして、紬は今日はテニスのレッスンがあったので、ホームルームが終わると直ぐに「莉緒、また明日ね〜!」と笑顔で帰って行った。


莉緒は何となく、帰りがたかった。


速水先生に動画のお礼を言いたいな、と思って。


でも、速水先生は莉緒と挨拶してもピョンピョン飛ばなくなったが、さっと消えてしまう。


(もしかして……先生は、私が紬に先生の写真を欲しいと言ったから、紬に動画にしようと言われて、無理したのかなあ……迷惑だったのかなあ……)


クラスメイトも「ごきげんよう、さようなら」と言って教室を出て行く。


莉緒は一人になると、イヤホンをして先生の動画を見た。


(速水先生……無理させちゃってごめんなさい……)


昨日、あんなに楽しかった動画を見ても、心は晴れない。


それでも繰り返し動画を観ていると――

「あやっ……綾小路さんっ……!! どうかしましたか!?」と頭上から降ってくる声。


莉緒は速水先生だと分かっていたので、俯いたまま、言った。


「先生……昨日の動画、ありがとうございました。

無理させてしまったみたいで、ごめんなさい」


すると、速水先生は静かに答えた。


「無理なんてしてませんよ。

僕の棒高跳びなんかで、あやあやあや綾小路さんが元気になってくれて嬉しいです」


莉緒が顔を上げると、先生はにっこり笑って言った。


「今度は……そうだなあ……ハードルを飛びますか!?」


莉緒もふふっと笑うと訊いた。


「先生は完成した動画を観ましたか?」


すると、速水先生は急にショボンとして答える。


「藤宮さんからのメッセージ……待ってたんですけど、僕には来ませんでした」


「じゃあ、これ」


莉緒が白いイヤホンを一つ、手の平に乗せて先生に向ける。


先生は一瞬ビクッとしたが、「……恐れ入ります……!」と言ってイヤホンを耳に装着した。


莉緒も残りのイヤホンを耳に着けると、速水先生の動画を再生する。


先生は食い入るように動画を観ていた。


そして、「もう一度お願いします!」と言って三回観ると、嬉しそうに笑った。


「良かったです! 僕のフォームは乱れていませんね!

あああ綾小路さんに、ちゃんとした棒高跳びを観て貰えて良かった〜!」


莉緒はクスッと笑うと、動画のBGMの『カッコよくてスマン☆』を口ずさむ。


「カッコよくてスマン☆

魅せちゃってる俺、スマン☆

君の瞳一人占め、スマン☆」


先生も歌い出す。


バク転しながら、一回転しながら、水平に飛びながら――


「ネッ☆素敵過ぎてスマン☆

ネッ☆尊くてスマン☆

ヨッ☆君だけを見てる、僕の視線、熱くてスマン☆」


そして、ビシッと莉緒を指差し決めポーズを取ると……

速水先生は突然、火山のマグマ色の顔色になり――

「さようならーーー!! お気を付けてーーー!!」と叫びながら、教室から出て行った。


莉緒は嬉しかった。


(先生、喜んでた!

迷惑じゃなかったんだ!)


莉緒もスマホを仕舞うと、弾んだ気持ちで教室を出た。


そして、偶然通り掛かった菱田先生は――

速水先生が歌って飛び跳ねているところから見てしまい……


(速水先生のご都合が合えば……今夜、食事でもしながら先生の悩みを聞こう!)


と決意していた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます!

この連載は、通常は火曜・金曜の20時の更新ですが、

只今、ゴールデンウィーク特別企画中です(^^)

詳しくは活動報告を読んで下さると、分かりやすいです。

次回も読んで下さると嬉しいです☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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