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担任の愛が重い。〜過保護な担任と最強お祖母ちゃんに、今日も溺愛されています〜  作者: 久茉莉himari


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【5】担任が、夕陽の中で跪きました。〜やさしさの空回りで、完璧美少女は決意する〜

そうして午後の授業中、莉緒は目眩がして、保健室のベッドの中にいた。


いつも服用している薬が効いてきて、目眩が収まり、ウトウトしながら考える。


それは、紬から聞いた話だ。


紬によると、昨夜、自分の家の庭でお祖母ちゃんがなぎなたを速水先生に向かって振るい、門まで追い立てて、速水先生は閉め出されたという。


だが、その事実よりも気になるのは――


(速水先生……お祖母ちゃんのなぎなたを避けるのに、ピョンピョン跳ねてたって紬が言ってた……!

やっぱり、病気なんだ……!

陸上部の顧問だから、誰にも言えないのかな?

可哀想だなあ……)


莉緒は分かっていない。


菊乃は、なぎなたの最高段位の『範士』であり、それがどれほどの強さなのかを。


そして、菊乃は、あのなぎなたを「曾祖母の形見の品」で、自分は『嗜んでいる程度』としか莉緒に言っていないし、莉緒の前ではフワッと優雅に回したことしか無い。


だから、速水先生くらいの動体視力と運動神経の持ち主でなければ、ピョンと飛んで避けられるものでは無いのだ。


そして、莉緒は決めた。


(明日の放課後、陸上部の練習を見に行ってみよう!)と。




そうして、莉緒が目覚めてカーテンを開けると、保健室は夕陽に染まっていた。


保健の先生がやさしく尋ねる。


「綾小路さん、具合はいかが?

歩けそうなら、お宅に連絡しましょうか?」


莉緒が外した腕時計を見てみると、午後3時半を過ぎたところだった。


莉緒がにこりと微笑んで返事をする。


「もう大丈夫です。

身支度を整えたら、普通に帰ります」


「そう?

慌てないでね」


そして、再びカーテンを閉めて、莉緒が保健室の備品の洋服から制服に着替える。


そして、カーテンを開けると――

何故か速水先生がいた。


保健の先生が笑いながら言う。


「今さっき、速水先生に綾小路さんは大丈夫ですって連絡を入れたら、飛んで来られて」


速水先生は、緊張しているように見えた。


両手を脇に下げ、固く拳を結んでいる。


そして、速水先生は夕陽を浴びて、全身がオレンジ色に染まっていた。


真っ白な保健室の何もかもが――


塵すらキラキラと輝いて。


莉緒が一歩踏み出す。


すると、速水先生が素早く動いた。


速水先生が莉緒に向かって跪く。


そして、右手を莉緒に差し出し、言った。


「あやあやあや綾小路……りりり莉緒さぁあ〜ん!!

危ないですよ!! 掴まって!!」


その差し出された手も、オレンジ色に染まっていて。


莉緒は自分の手を見て、自分もオレンジ色になっている――

と思ったが。


跪いている速水先生の足の怪我の方が心配だった。


だから、速水先生の手をしっかりと握ると、微笑んで言った。


「ありがとうございます、速水先生。

私は大丈夫です。

立って下さい」


速水先生が、ゆっくりと立ち上がる。


そして、小さく笑うと言った。


「ありがとう……綾小路さん……」


そうして保健の先生は――


(私は何を見せられてるの???)


と、首を捻っていた。




それから莉緒は、速水先生と並んで教室に戻った。


速水先生は余り話さなかった。


莉緒は(やっぱり、足が痛いんだ……)と心配して、自分からも話しかけなかった。


もう、誰もいない教室。


帰り支度をする莉緒を、ドアの前で見守っている速水先生。


莉緒は帰り支度を済ませると、ペコリと速水先生に頭を下げ、顔を上げて真っ直ぐに速水先生を見て、言った。


「今日はご心配をおかけして、すみません。

保健室まで迎えに来て下さって、ありがとうございました。

ごきげんよう」


速水先生は、一枚の紙を近くの机に置くと、突然怒涛の如く話し出した。


「あのっ……! あああ綾小路さんに見せたかった本だけど……!!

あれを全部読まなくてもいいかなって!

あやっ……綾小路さん!

ドン・ペテロの伝記を読んで感想文を書く気なんだよね!?

だから、ジェフリー・チョーサーのカンタベリー物語の、ドン・ペテロの部分だけコピーしておいた!

じゃあ、また明日!

気をつけてーーーッ!!」


そして、走り去る速水先生。


莉緒はその紙を持つと、丁寧に鞄に仕舞った。




その夜、莉緒は宿題をしながら、その紙を何度も見ていた。


(……意味が分からない……。

私、ドン・ペテロの伝記、読む気なんて無かったし……感想文を書くって……何で?)


そこに、紬からスマホにメッセージが来た。


『元気〜!? 明日、学校に行けそう!?』


そのメッセージの下にはお猿さんのスタンプが貼られていて、莉緒は、紬が相当速水先生の怪我に興味があるんだな、と思った。


そして、『もう元気だよ! 明日、学校にも行くよ!』とメッセージを返して――

思い出した。


一年生の終業式の日。


莉緒は帰り際、校庭で紬に漫画の"布教"をされていたのだ。


紬は大の漫画好きで、アニメも好き。


紬は歴史好きの莉緒に熱弁を奮っていた。


「ドン・ペテロの生涯がさ〜!

マジでドラマチック!

しかも笑いあり!

そして……ネタバレは出来んけど……ラスト感動するのよ!

春休みに読んでみて〜!!」と。


だから、莉緒は笑顔で答えた。


莉緒は小説が大好きだが、漫画も好きだから。


「じゃあその本、貸して。

ドン・ペテロの感想書くから!」


(確か――

あの時は先生たちも、校庭に沢山いた……。

速水先生、あの話で誤解した……?)


莉緒は速水先生がくれたコピー用紙を見つめ、固く決心する。


(速水先生……。

凄くやさしいんだ……!!

噂通り、生徒思いなんだ……!!

やっぱり怪我を突き止める為に、明日は陸上部の部活を見に行こう!)と。


それが、第二ゴングの鐘を鳴らすことになるとも知らずに。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

この連載は火曜・金曜の20時の更新です。

次回も読んで下さると嬉しいです☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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