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担任の愛が重い。〜過保護な担任と最強お祖母ちゃんに、今日も溺愛されています〜  作者: 久茉莉himari


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18/20

【18】はやみん進化論、ついに野球編へ突入です。〜完璧美少女は応援を決意し、数学教師は逃げられない〜

そして、綾小路家で必勝祈願が着々と進む一方――


桜ノ葉学院の会議室でも、もう一つの草野球対策が動き始めていた。


速水先生と菱田先生。


そして、体育の森谷先生が揃っている。


もちろん、セッティングしたのは菱田先生だ。


森谷先生が重々しく口を開く。


「……成る程。

速水先生はゴールデンウイークの草野球で、ピッチャーと四番打者をやりたいんですね?


それならそうと最初に言ってくださいよ〜!」


「申し訳ありません!」


速水先生が深々と頭を下げる。


すると、森谷先生がニカッと笑った。


「まあ、お遊びのお祭り騒ぎなら、良いんじゃないですか?

ゴールデンウイークと言っても、教師は全員休めるわけじゃないし!」


その刹那――


速水先生が、すっくと立ち上がった。


「お遊びでもお祭り騒ぎでもありません!

僕は本気です!」


(立った!!)


菱田先生がそう思うと同時に、速水先生の声に被さるように、素早く口を開く。


「そ、そうですよね〜!

やはり、息抜きって大切ですから!

その後の仕事のパフォーマンスに影響しますし!」


ウンウンと頷く森谷先生。


その隙に、菱田先生が速水先生の腕を掴み、何とか座らせる。


(頼むから黙ってて下さい……!!)と祈りつつ。


森谷先生は気にする様子もなく、言った。


「じゃあ今日から始めましょうか!

まずはピッチングですね!


放課後、グラウンドに集合ということで!

バッティングは明日からバッティングセンターで!


じゃあ今後の練習のために、私達三人でメッセージグループを作っておきましょう!」


菱田先生が僅かに声を震わせながら言う。


「ぼ、僕もですか……!?

お二人で良いのでは?」


森谷先生が再びニカッと笑う。


「いえいえ!

速水先生から聞きましたよ!

菱田先生、小中と、野球部で活躍なさってたんですよね?

是非、ご一緒に!」


菱田先生が一気に絶望的な顔になる。


(速水先生……!!

森谷先生を引きずり込みたいからって、

興奮して無意識に話を盛りましたね……!?


俺は部活必須だったから、中学の時は野球部にいただけです!

何なら三年間補欠でしたよ……!!)


しかし、そんな菱田先生に全く気づくことなく、速水先生も爽やかな笑顔で菱田先生に向かって言った。


「菱田先生!

よろしくお願いします!」


ここまで来て断れる人間がいるだろうか――


そうして、メッセージグループ『チーム・桜ノ葉』が完成し、こうして――


速水先生が選手、森谷先生が指導役、そして菱田先生がなぜか巻き込まれ役の、三人の草野球対策が始まった。




そして、その日の放課後。


そんなことなど何も知らない莉緒は、紬と一緒に校門に向かって歩いていた。


今日も、いつもと変わらない放課後。


莉緒が紬と話しながら歩いていると――


突然。


隣を歩いていた紬が、ピタリと足を止めた。


「……うわっ」


莉緒も立ち止まり、紬を見る。


「紬? どうしたの?」


返事がない。


紬は、ある一点を凝視していた。


その瞳が――


徐々に、爛々と輝き始める。


「……莉緒」


「なに?」


「やっぱり……」


紬が呟く。


そして次の瞬間、叫ぶ。


「やっぱり私の読みは当たった!!

はやみんがまた進化した……!!」


「え?」


莉緒が黒曜石のような黒い瞳を瞬かせる。


だが、紬はもう止まらない。


「違う……!

ただの進化じゃない……!」


「違うの?」


小首を傾げる莉緒に、紬が震える指を上げる。


そして、前方を指さして、言った。


「枝分かれした!!」


「……枝分かれ?」


益々、不思議そうな表情になる莉緒。


「莉緒、見て!!」


莉緒が、紬の指さす方向へゆっくりと視線を向ける。


そこは――


グラウンド。


野球部員たちが練習をしている。


その中に。


見慣れた長身の男性が一人。


マウンドに立ち、大きく振りかぶる。


そして――


投げた。


莉緒が瞳を見開く。


紬が確信に満ちた声で言った。


「陸上から――野球に枝分かれした……!

新たなるはやみんの進化だよ!!」


そう、速水先生が野球部員に混ざって、ピッチングの練習をしていたのだった。




紬はその後、物凄い早口で言った。


「私はスマホで観察記録して帰るね!夜に報告する!」


そして、野球部のグラウンドに向かって走って行く。


莉緒は帰宅し、菊乃の手料理を美味しく食べて、お風呂に入り、宿題も終わらせると、スマホで動画を見ていた。


それは、速水先生が棒高跳びをした動画。


(先生……野球を始めるのかな?

その前に先生のハードル走を見たかったなあ……)


そう思うと、胸がチクリと痛い。


無意識にBGMの『カッコよくてスマン☆』を口ずさむ。


「カッコよくてスマン☆

魅せちゃってる俺、スマン☆

君の瞳一人占め、スマン☆……」


でも、と莉緒は思い直す。


(速水先生は運動神経が良いから、他の部活動でも先生を放っておかないんだよ……!

ハードル走が見たいのは、私だけの希望だもん……。

先生がどんな部活をしても、生徒として応援しなきゃ……!)


その時――


スマホに紬からのメッセージが次々と現れた。


『はやみん、モリヤンにめっちゃしごかれてた!!』


モリヤンとは森谷先生のあだ名だ。


『何で野球部顧問が目の前にいるのに、モリヤンに指導受けるの!?』


『なんか、グラウンドの片隅で補習受けてるみたいで笑うんだけど!』


『つか、はやみんはやっぱ運動神経いいなー!!

コツを掴むの早いよ!!

野生に返ったのか……?』


『ていうかさあ……何でヒッシーまでいるんだろ???お前は数学だろ!

モリヤンの横にずっと立ってたんだよ!?』


『あー!無念!ここで下校時間!

おやすみ〜!また明日ね!』


そして、送られて来た動画は――


夕焼けの中、速水先生がジャージ姿で、投球練習をする姿。


そのフォームは、野球を良く知らない莉緒にも、鮮やかに見えた。


莉緒は小さく微笑むと、『カッコよくてスマン☆』の続きを口にする。


「ネッ☆素敵過ぎてスマン☆

ネッ☆尊くてスマン☆

ヨッ☆君だけを見てる、僕の視線、熱くてスマン☆」


そして、思った。


(先生、野球も美しいフォームですね……!

応援しています!)と。




その日、一番酷い目に遭ったのは、間違いなく菱田先生だ。


菱田先生は自宅に帰り、最後の気力を振り絞ってシャワーを浴び、ベッドに倒れ込んだ。


グラウンドで見守るのは、まだ仕方ないと思える。


しかし、今日はピッチングの練習だけだと思っていた菱田先生は、本当の恐怖を分かっていなかったのだ――


練習後の職員室。


森谷先生が速水先生のデスクにやって来て、嬉しそうに言った。


「流石、速水先生!

運動神経良いですね〜!

ピッチング、素晴らしかったですよ!」


速水先生が爽やかな笑顔で応えて、頭を下げる。


「ありがとうございます!」


森谷先生は「いやいや、頭を上げてくださいよ〜!」とウキウキしながら続けた。


「それで、これからバッティングセンターに行きませんか?

お時間あれば!」


速水先生もニッコニコで答える。


「はい!行きましょう!

もう少し身体を動かしたいなーって思っていたんです!」


「私もです!」


そう森谷先生が言って、二人が笑う。


菱田先生は真っ青になって二人を見つめてしまった。


その一瞬が命取りになるとも知らずに。


(嘘だろう……!?

まだ運動するの……!?

今日はピッチングだけって言ってたじゃないですか……!!

俺はグラウンドに立ってただけでも疲れてるのに!!


この体力オバケ達め……!!


まあ、バッティングセンターでもどこでも、好きなところに行って下さいよ……)


そして、菱田先生が鞄を持って二人に「失礼します」と言いかけた時、森谷先生が言った。


「菱田先生!

まず腹ごしらえしませんか?

それからバッティングセンター!」


(俺もメンバーに入ってるーーー!!)


菱田先生の心が悲鳴を上げる。


速水先生はエア素振りをしながら、爽やかな笑顔で言った。


「良いですね!

森谷先生のお好きなお店で!」


森谷先生がウキウキしながら答える。


「美味しい中華屋があるんですよ!

じゃあ……事務仕事が少し残ってるので、30分後にまた来ます!」


「はい!」


速水先生はまた爽やかに答えると、自分の机に着いた。


そして、突っ立ったままの菱田先生を見上げて言った。


「菱田先生!

バッティングセンターでは、最初に先生から打って見せて下さい!」


そして、運動神経抜群の二人の前で、数学教師の菱田先生が最初にバットを振るうことになったのだ――


菱田先生はボテボテの当たり。


そして、初めてバッティングセンターに来たという速水先生は、一発目からホームラン。


菱田先生は心底思った。


(俺、いらなくない!?)


だが、そんな悲鳴は誰にも届かず、明日からも練習は続くのだった――

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

この連載は火曜・金曜の20時の更新です。

次回も読んで下さると嬉しいです☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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