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担任の愛が重い。〜過保護な担任と最強お祖母ちゃんに、今日も溺愛されています〜  作者: 久茉莉himari


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【15】忍びバードウォッチング、まさかの高評価。〜私たちの変装が感動を呼んでます〜

それから、莉緒が図書室に行ってみると――


どう見ても紬だが、黒髪の肩ぐらいのカツラを被り、パーティ用の丸眼鏡と着け鼻セットを顔に付けた紬が、望遠カメラを覗いていた。


紬の約半径3メートルに、人はいない。


「紬」と莉緒が静かに声をかけると、渡される紙袋。


中を開けてみると、それは紬のしているものと同じ、丸眼鏡と着け鼻セットだった。


紬が望遠カメラを見ながら、低い声で言う。


「莉緒……! 安心して!

髭のところは切り取っておいたから!」


莉緒は紙袋の中身と紬を交互に見ながら、紬に訊いた。


「これ付けないと、速水先生を見ちゃ駄目なの?」


紬が望遠鏡を見ながら、低く答える。


「莉緒……! 忘れたの!?

はやみんは、いつ野生に戻るか……分かんないんだよ?

また、退化してメガホンで話しかけてくるかも知れない……!

我々は忍ばないと!」


「……はーい……」と莉緒が諦め気味に答えて、丸眼鏡と着け鼻セットを着けると――

図書室に広がる、ざわめき。


だが、速水先生は陸上部のグラウンドには、まだ来ていなかった。


莉緒は、さっき裏庭で飲んだアールグレイのミルクティーを思い出す。


先生は莉緒が飲み終わるのを待って、マグカップと水筒を持つと、「綾小路さん、気を付けて帰って下さい」と言い、くるっと背を向けて走り去った。


莉緒の頭に、散りかけていた八重桜と、速水先生のやさしい微笑みが浮かぶ。


(先生は、私に初めて“アールグレイのミルクティー”を教えてくれた人なんだなあ……)


そして、(速水先生の花粉症が漢方薬で治ると良いな!)と莉緒が思っていると、速水先生が物凄いスピードで走ってグラウンドに現れた。


先生はテキパキと部員を指導しながら、楽しそうにストレッチをして、ハードルを並べ出した。


莉緒の胸がドキドキと鳴る。


(ハードルだ!

速水先生、ハードル走するのかも……!!)


しかし、そこにコーチがやって来て、速水先生はハードルを片付け始める。


そして、ハードルを完全に片付けると、生徒達のタイムを取り出す。


紬がカメラを覗きながら、ブツブツと言う。


「はやみん……どうやらコーチに怒られたみたい……!

謝ってた!

勝手にハードル飛ぼうとしたのかも……。

今日のメニューに無いのかもね!」


莉緒も「うん!」と深く頷く。


莉緒の小さな顔を、ずるっと丸眼鏡と着け鼻セットが滑り――

図書室に広がる、どよめき。


(そうだよ……!

速水先生は陸上部の先生として、やらなきゃいけないことがたくさんある!

ハードル走の動画は気長に待とう!)


そう、莉緒が思った時だった。


教頭先生の静かな声がした。


「藤宮さん、綾小路さん、何してるの?」




「失礼します」と言って、速水先生が教頭室から出て来る。


菱田先生はそれを見て、さっと俯く。


(どうして俺は今日、残業なんてしたんだ……!!)


そう、菱田先生が内心後悔しまくりながら仕事に熱中している振りをしていると、速水先生はストンと自分の席に座った。


燃え尽きたボクサーの様に。


そして、聞こえてくる、感動に満ちた声。


「……生徒って本当に尊いですね……!」


(……お! 速水先生が元に戻った……!?)


嬉しさの余り、菱田先生が速水先生に向かって、にこやかに語り掛ける。


「そうですね!

色々多感な時期で、私たち教師も大変な時もありますけど、生徒には感動させられますよね!」


すると――

速水先生は顔を上げたかと思うと、素早く菱田先生に向かい、ガシッと菱田先生の両肩を掴んだ。


心の中で悲鳴を上げる菱田先生。


(痛い痛い痛いーーー!!

そんなに細いのに、どんだけ握力あるんですか……速水先生!!)


そんな菱田先生の状態に気づくこと無く、速水先生が瞳をウルウルさせながら、菱田先生の顔を覗き込むと言った。


「先生もご存知の通り、うちのクラスの藤宮さんが、教頭先生の望遠カメラを借りてバードウォッチングをしているんですけど……!

なんと! 綾小路さんもしてるんですよね!」


(ご存知の通りって……昨日のアールグレイのミルクティーの強制テイスティングの放課後回で、初めて知りましたよ……!! 偶然に!!)


そんな菱田先生の心の叫び声が速水先生に届くことは無く――

速水先生はずいっと顔を菱田先生に近づけて、続ける。


「そうしたら……藤宮さんと綾小路さんの“本気”が凄いんです!

鳥に気づかれないようにって、変装までしてバードウォッチングしてるんですよ!

藤宮さんが気がついたらしいんです!

目を隠した方が、鳥に警戒されないかなって!」


(近い近い近い!!

もう少し離れて下さい……!!

速水先生……ッ!!)


だが、菱田先生の心の叫びも虚しく、またずいっと顔を近づけて来る速水先生。


「それで、周りに笑われてもいい、真剣にバードウォッチングをしたい、その一心で、馬鹿みたいな眼鏡と着け鼻のセットをして……!

綾小路さんもですよ!?

しかも、その画像を撮った心無い生徒がいて……!

回り回って教頭先生のところまで行ったんですけど……教頭先生なんて、感動の余り涙ぐんでました……!!

『二人の本気が伝わってきた! もっと高性能のカメラが家にあるから明日持って来てあげよう!』って!

僕も、同感です!」


(それって面倒くさいオタクとオタクが出会った感動では……!?

しかも、速水先生……『馬鹿みたいな』って言っちゃってる……!!

そりゃあ“心無い生徒”じゃなくても、普通に驚いて写メくらい撮りますよ……!!)


またも、心の中で悲鳴を上げる菱田先生。


だが、菱田先生は必死に言葉を紡いだ。


己の心と肩を守る為に――


「そっ……そうですね!!

それに、もうすぐゴールデンウィークですし!

思う存分、バードウォッチング出来ると良いですね!!」


その瞬間――

速水先生は目を見開くと、菱田先生の肩から手を外し、「失礼しました」と言うと、自分の机に向かった。


(この話題を終わらせないと、俺の心と肩が持たない……!!)


そう思って、菱田先生が何とか口から出したこの何気ない言葉が、特大ブーメランとなって菱田先生自身に返ってくることを、菱田先生はこの時――

全然分かっていなかった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます!

この連載は、只今、ゴールデンウィーク特別企画中で毎日連載していましたが、次回明後日の金曜から通常通り、火曜・金曜の20時更新に戻ります。(^^)


次回も読んで下さると嬉しいです☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290


自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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