表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
担任の愛が重い。〜過保護な担任と最強お祖母ちゃんに、今日も溺愛されています〜  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/16

【14】先生と私だけが知っている、裏庭の春。〜そのミルクティーはたぶん、恋より甘い〜

莉緒が、教室で待つこと15分。


莉緒が小説を読んでいると、「莉緒……!! 大変だよ!!」という声と共に教室に入って来る紬。


莉緒が顔を上げると、紬は大きな高性能カメラが入っているバッグを肩から下げ、金色の髪の毛が見えている紙袋を持っていた。


莉緒はキョトンとしてしまった。


(……大変なのは、紬じゃないかな???)


だが、紬は机にカメラバッグと紙袋を置くと、ペットボトルのミネラルウォーターをごくごくと飲み、ハーッと息を吐いて言った。


「はやみん……教頭先生とヒッシーと三人で、なんか実験始めたらしい……!

部活より優先してるんだよ!?」


そして、ずいっとスマホの画面を見せる紬。


そこには、手前に速水先生がドアを閉めようとしている瞬間と、教頭先生と菱田先生が応接セットに座っている場面が写っていた。


しかも――

教頭先生と菱田先生の前には、小さな紙コップが6個ズラッと並んでいる。


莉緒は、ピンと来た。


「もしかして……このコップの中身は、速水先生の怪我か花粉症に効くお薬じゃないかな!?

例えば、教頭先生が勧めた漢方薬とか……!」


紬が再び画面に視線を落とす。


「じゃあ、何でヒッシーもいるの?」


莉緒が瞳をキラキラと輝かせて答える。


「菱田先生も花粉症なんだよ!」


紬が机に突っ伏す。


「あーーー!!

なるほど! だから、はやみん真剣だったんだ……!!」


莉緒が確信に満ちた顔で頷く。


「きっと、教頭先生も花粉症じゃないのかな?

だから、重度の花粉症に効く漢方薬を勧めてた!

でも、アレルギーって個人差があるでしょう?

それで、6種類試してたんじゃない!?」


紬が机から顔を上げると、ウンウンと頷く。


「なーるなる!

あと、漢方薬って匂うもんね!

だから、教頭室でやってたのかー!」


すると、莉緒が紙袋に目をやった。


「これ、何?」


紬がニッと笑う。


「莉緒の変装道具〜♪」


そうして、紬が楽しそうに金髪縦ロールのカツラを取り出す。


「莉緒、髪の毛長いからさ!

これしか合うカツラが無かったんだよね!」


エヘンと胸を張る紬に、莉緒が不思議そうに言った。


「……紬……私、カツラなんて被れないよ?

頭痛がしちゃうもん」


紬がサーッと青ざめた。




結局、今日は速水先生の部活の観察は中止になった。


紬は校門まで来ると、胸の前で握りこぶしを作って言った。


「莉緒の負担にならない変装道具を仕入れてくるからね!」


そう宣言すると、風の様に校門から去って行く紬。


莉緒は校門からくるりと方向転換すると、学校に戻った。


陸上部のグラウンドを、邪魔にならないように、そっと木陰から隠れて見る。


桜はもう完全に緑の葉になっていた。


速水先生はストレッチをしたり、グラウンドを周回したりと、陸上部部員たちと目まぐるしく運動している。


そうして、部員たちとハードルを並べ出した。


莉緒の胸がドキドキと鳴る。


(速水先生……ハードル走するのかな?)


すると――

ハードルを並べ終えた速水先生が、莉緒に向かって一直線に走って来た。


莉緒が目を丸くしていると、速水先生はやさしく言った。


「今日は、藤宮さんとバードウォッチングをするんじゃないんですか?」


「いいえ」


莉緒はそう答えると、鞄から、ハンカチが入ったギフト用の小さな袋を取り出した。


「速水先生、ハンカチ、ありがとうございました」


速水先生が袋に手を伸ばす。


莉緒が、恥ずかしそうに告げる。


「生まれて初めて、手洗いしたし、アイロンも初めて掛けたので……曲がっていたらすみません」


莉緒の真っ白な頬が薔薇色に染まる。


木陰にいても、はっきり分かる程に――


速水先生は直角にお辞儀をして、袋を受け取った。


そして、直角の姿勢のまま、言った。


「綾小路さん。

明日の放課後、裏庭のベンチに来てくれませんか?」


莉緒がにっこり微笑む。


「はい!

では、ごきげんよう」


速水先生が顔を上げ、莉緒の美しい微笑みに向かってやさしく言った。


「ごきげんよう、綾小路さん」


そうして、先生はグラウンドに向かって駆けて行く。


莉緒が校門に向かう。


そして、速水先生の顔は――

火山のマグマ色になっていた。




翌朝。


莉緒は弾んだ気分で登校した。


(放課後……もしかしたら、ハードル走の動画を見せて貰えるのかも知れない!

速水先生は、紬がバードウォッチングをしてると思ってるから、きっと紬に動画撮影を頼めなくて、自分でするのかも!)


そして、教室に入ると、紙袋を覗いてニヤニヤしている紬がいた。


「おはよう! 紬。

ご機嫌だね!」


莉緒がそう言って、紬の隣の席に座ると、紬が顔を上げてニヤリと笑った。


「昨日の帰り……見つけちゃったんだよね!!

莉緒の変装道具!

もう、完璧!

だから、私のぶんも買っちゃった〜♪」


莉緒がにこりと微笑む。


「わざわざ買ってくれたの?

私のぶんの料金払うよ!」


紬が人差し指を左右に振る。


「良いって!

100円ショップで見つけたヤツだし!

これからも、使えるから!」


莉緒がふふっと笑う。


「じゃあお礼に、紬が大好きなお祖母ちゃんの水羊羹作って貰うね!」


「やったー!!」


紬がそう言った時、速水先生が教室に入って来た。




速水先生は至って普通だった。


だが、昼休み、紬は言った。


「今日のはやみん……何かおかしい!」と。


莉緒が首を傾げる。


「どこが?」


紬の瞳がギラリと光る。


「今日の授業の時……チョークを強く握りすぎて二回くらい折りそうになってたし!

黒板の文字も、はやみんらしくなかった……!

はやみんって字が綺麗じゃん?

でも、力んで、平仮名が角張ってたんだよね……!」


「……そうかなあ?」


莉緒が益々首を傾げると、紬はキッパリ言った。


「私はさ、退化して進化して人間になったはやみんの過程を見てるから……!」


莉緒は紬の観察力の凄さに改めて驚くと共に――

(速水先生……動画の編集、上手く行かなかったのかなあ……?)と少し心配になった。




放課後になり、莉緒は紬に観察場所を教えて貰うと――そこは以前、速水先生を観察した図書室だったが――

「ちょっと用事があるから、後から行くね!」と紬に言って、渡り廊下から裏庭に向かった。


裏庭はとても静かで、学校の中とは思えない。


すると――

八重桜の木を見つけた。


背伸びをして、そっと、花に手を伸ばす。


誰にも知られずに咲く、満開の八重桜は、もう散り初めている。


莉緒がその下で八重桜を見上げていると――

ドスッという音がした。


莉緒が振り返ると、速水先生が立っていた。


速水先生が慌てて、落としたらしい、小さな水筒を拾う。


そして、消毒用のウエットティッシュで満遍なく水筒を拭くと、言った。


「新しいアールグレイのミルクティーです。

飲んで貰えませんか?」


莉緒がにこりと微笑む。


「喜んで頂きます!」


「じゃ……じゃあ、ベンチへどうぞ……」


しどろもどろになっている速水先生が可笑しくて、莉緒は小さく笑い、ベンチにひらりと座る。


速水先生は紙袋から、マグカップを二つ出すと、アールグレイのミルクティーを注いだ。


莉緒は嬉しかった。


速水先生は、最初から一緒に飲んでくれるつもりだったのだと。


そして、速水先生は立ったまま、莉緒はベンチに座り、アールグレイのミルクティーを飲む。


莉緒は一口飲んで「あ!」と言った。


「先生! アールグレイのミルクティー……!

前のと茶葉が変わりましたか?

今回も、とても美味しいです!」


速水先生がやさしく微笑む。


「いいえ。

茶葉とミルクの分量も変えたんです」


莉緒が嬉しそうにまた一口飲む。


先生もアールグレイのミルクティーを一口飲むと、小さく言った。


「……八重桜が、あそこにあるなんて知りませんでした……」


莉緒が速水先生に向かって、にっこり笑う。


「私もです。

きっと、この学校で知ってるのは、速水先生と私ぐらいですね!」


速水先生は一瞬目を見開くと、またやさしく微笑んだ。


莉緒と速水先生は、何も語らず、ゆっくりとアールグレイのミルクティーを飲む。


散りゆく八重桜を見ながら。


その美しい光景の裏で――


速水先生が菊乃の抹茶オレの完璧な味に衝撃を受け、莉緒の味覚に合うように、アールグレイの茶葉とミルクの量を、教頭先生と菱田先生を巻き込んで、地獄の実験をした末に完成したアールグレイのミルクティーであることを、莉緒は知らない。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます!

この連載は、通常は火曜・金曜の20時の更新ですが、

只今、ゴールデンウィーク特別企画中です(^^)


詳しくは活動報告を読んで下さると、分かりやすいです。


次回も読んで下さると嬉しいです☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290


自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ